【テクニカルレポート】クラウド課題を解決する、“インフラ共有化”の技術的メリット共有ストレージの“安全な分離”と“データ移行”~後編 | RBB TODAY
※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

【テクニカルレポート】クラウド課題を解決する、“インフラ共有化”の技術的メリット共有ストレージの“安全な分離”と“データ移行”~後編

エンタープライズ ソフトウェア・サービス
Paul Feresten氏
  • Paul Feresten氏
  • Roger Weeks氏
■MultiStoreの利用にあたって

 MultiStoreを使用するにあたっては、考慮事項がいくつかあります。メモリ容量2GB以上のNetAppストレージ・システム(現行モデルのほとんどがこれに該当)では、MultiStoreはストレージ・システムごとに最大65個のvFilerユニットをサポートできます。MultiStoreがサポートするプロトコルは、NFS、CIFS、iSCSI、HTTP、NDMP、FTP、FTPS、SFTPです。FCPはroot vFilerユニット(vFiler0)でしかサポートされない点に注意してください。vFilerユニット単位で、各プロトコルを有効または無効にすることができます。

 vFilerユニット自体によるメモリ・オーバーヘッドが非常に少ないため、MultiStoreのあるシステムは、MultiStoreのないシステムと同程度の集約負荷を処理することができます。ただし、MultiStore搭載のシステムは、MultiStoreを搭載していないシステムよりも多くの負荷を維持できるわけではないので注意してください。

 NetApp FlexShareソフトウェアを使用すると、マルチテナント環境内で一部のボリューム(およびボリュームに対応付けられたワークロード)を、他のボリュームよりも優先的に処理することができます(FlexShareについてはTech OnTapの過去の記事で詳しく解説しています)。リソースをめぐって競合が発生した場合、優先順位の高いボリュームのトランザクションが、より迅速に処理されます。ストレージ・システムのリソースに競合がない場合は、FlexShareの優先順位にかかわらず、どのワークロードでもリソースを利用できます。

 管理面では、テナントにさまざまなレベルのコントロール(管理機能がまったくない形態から、監視のみの形態、さらにはvFilerユニットで作成される制限内であらゆる管理機能を提供する形態まで)を認めるよう、テナント環境を設定することができます。管理手法には、コマンドラインを使用することもできますし、NetApp Operations Managerとそのアドオン製品(Provisioning ManagerおよびProtection Manager)を使用することもできます。

■MultiStoreの用途

 MultiStoreには一般的な用途が4つあります。これらの用途は相互に排他的なものではなく、MultiStoreホスティング環境やファイル・サービス環境の一部分として、データの移行やDRといった用途を利用することもできます。

 ホスティング:MultiStoreでは複数の管理ドメインを簡単に作成できるので、共有ストレージ・サービスやホスティング・サービスのマルチテナント基盤として理想的です。インフラ・サービスまたはアプリケーション・ホスティング・サービスのどちらを提供する場合でも、クラウド・プロバイダは、1つのストレージ・システムのリソースをパーティショニングして、顧客企業向けに多数の独立したMultiStore vFilerユニットを作成できます。NetApp FlexShareでは最大5つの優先度レベルを使用できるので、ホスティング環境で最大5階層のサービス・レベルを提供できます。

 これと同じように、企業のIT部門は、社内のさまざまな部門のニーズに対応するMultiStore vFilerユニットを作成することができます(最後に説明する用途「ファイル・サービスの統合」は、実際にはこの用途を限定的に応用したものです)。

 データの移行:前述したNetApp Data Motion機能を使用すると、MultiStoreによって1つのストレージ・システムから別のストレージ・システムに無停止でデータを移行することができます。移行先のストレージ・システムを大幅に再設定する必要もありません。MultiStoreを使用しない場合、NetApp SnapMirrorテクノロジを使用してストレージ・システム間でデータをコピーすることもできますが、その場合には、ある程度の停止時間が必要になり、アクセス制御リスト(ACL)、ローカル・ユーザ・グループの定義、ユーザ・マッピング情報などを編集してからでないと、データにアクセスできません。一方、コピーするデータがMultiStoreで保存されていれば、すべてのユーザ、グループ、ACL情報がvFilerユニットにカプセル化されます。移行と同時に、カプセル化された情報を使って移行先ストレージ・システムにvFilerユニットが再構成されるため、再設定なしで移行先ストレージ・システムからデータを提供することができます。

 ディザスタ・リカバリ(DR):MultiStoreの用途として、おそらく最も知られていないのが自動化されたDRです。MultiStoreを使用すると、vFilerユニット・インスタンスごとにIPドメインを移行する、シンプルなサイト間DRを実現できます。SnapMirrorを使用して所定のスケジュールに基づくvFilerユニットのレプリケーションを実行し、各vFilerユニットのプライマリ・バージョンに同期したバックアップ・バージョンを作成します。障害が発生した場合、管理者はコマンド1つでバックアップvFilerユニットへの切り替えをトリガーできるため、カットオーバーが非常に速く、クライアントへの影響はほとんどありません。問題の原因を解決した時点で、DRサイトのvFilerユニットを、送信元と再同期することができます。

 ファイル・サービスの統合:最後に説明するMultiStoreの非常に好評な用途は、ファイル・サーバの統合です。部門ごとに専用のファイル・サーバを使用している企業は少なくありません。多数の小容量ファイル・サーバを1つの大容量ファイル・サーバに統合すれば、利用率が改善され、管理にともなうオーバーヘッドが削減されますが、運用管理上のコントロールを他部署にまかせたがらない部門が多いという問題があります。MultiStoreを使用すれば、vFilerユニットを利用して小容量ファイル・サーバを統合し、統合のメリットを達成すると同時に、部門ごとに管理コントロール機能を残すことが可能になります。

■Tier 3:成功事例

 中小企業向けマネージド・サービスの大手プロバイダであるTier 3では、同社の成長著しいクラウド・インフラをサポートするためにMultiStoreを選択しました。同社ではMultiStoreを使用して、新規顧客向けのvFilerユニットを1時間未満でプロビジョニングすることができます。このvFilerユニットは、DR、スケーラビリティ、迅速なバックアップ/リストアなど、専用SANのあらゆる機能を提供します。MultiStoreを使用した共有ストレージは、専用ストレージと比べて、顧客側では80%、Tier 3側では50%のコスト削減を達成しています。Tier 3については、最近の導入事例で詳しく紹介されています。

■まとめ

 MultiStoreは、ストレージ環境におけるセキュア・マルチテナントを実現するための代表的なソリューションです。MultiStoreの堅牢性はラボ・テストでも証明されているほか、お客様の環境への導入でも数年に及ぶ実績があります。MultiStoreはNetAppストレージ・プラットフォーム全製品で使用することができ、高度なセキュリティを提供するだけでなく、無停止のデータ移行機能を統合した唯一のソリューションです。
《RBB TODAY》
【注目の記事】[PR]

関連ニュース

特集

page top