【Embedded Technology Vol.5】Windows市場は数百億台のビジネスに——シングルデバイスからマルチスクリーンアクセスへ | RBB TODAY
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【Embedded Technology Vol.5】Windows市場は数百億台のビジネスに——シングルデバイスからマルチスクリーンアクセスへ

エンタープライズ その他
米マイクロソフト Windows Embedded マーケティンググループ担当 シニアディレクター イリア・バクシュタイン氏
  • 米マイクロソフト Windows Embedded マーケティンググループ担当 シニアディレクター イリア・バクシュタイン氏
  • マイクロソフト OEM統括本部 OEMエンべデッド本部 シニア マーケティング マネージャ 松岡正人氏
  • 組込み機器の市場はWindowsPCの市場より2桁規模が大きい
  • スマートフォンからだけでなく、あらゆる家電機器や産業端末からクラウド情報やサービスにアクセスするというトレンド
  • 産業機器、FA、IAもビジネスロジックと連携したり、リッチUIによる高度な操作が可能になる
  • Windows Embeddedのエンタープライズ向けコンポーネントや機能
  • インダストリアルオートメーションのデモ:操作画面
  • 操作画面のデザイン変更も簡単。またSilverlight技術により動画や3D表示も可能
 19日、パシフィコ横浜で開催されている組込み機器向けのイベント「Embedded Technology 2009」において、マイクロソフトはWindows Embedded CE6.0 R3に関する取組みや今後のロードマップなどを発表するプライベートカンファレンスを開催した。登壇したのは米マイクロソフト Windows Embedded マーケティンググループ担当 シニアディレクター イリア・バクシュタイン氏と、マイクロソフト OEM統括本部 OEMエンべデッド本部 シニア マーケティング マネージャ 松岡正人氏だ。

 Windows Embedded CE6.0 R3(CE6.0 R3)は、すでに9月に発表され、現在は製品版の出荷も始まっている。今回の発表は、その戦略やロードマップにくわえCE6.0 R3やWindows 7ベースのWindows Embedded Standard 2011の実装例の紹介やデモを交えたものだ。戦略やロードマップに大きな変更やアップデートはないものの、発表後に開発や実装のステータスが進み、9月の発表当初でこんなことが可能になるという話の具体例が見えるものとなった。

 冒頭バクシュタイン氏は、PCが情報ツールの中心にいる現状に対して、今後の組込み機器の可能性として、接続性(コネクティビリティ)と操作性(昨今はエクスペリエンスと表現される多様な表現力をもったインターフェイス)が鍵となるとの認識を示した。スピーチでは「コネクトエクスペリエンス」という表現を用いていたが、PDAやスマートフォンはもちろん、テレビやフォトフレーム、サイネージ端末、キオスク端末、FAなどの制御機器もネットワークにつながり、リッチなインターフェイスを実装することで、市場が広がるということだ。

 ある調査では、3年後には世界中のテレビの80%がなんらかの形でインターネットに接続されるという予想があるという。車載の情報端末やミュージックプレーヤーなどもモバイル接続が進むと見ている。同時に画面も解像度や表現力が上がってくる。端末の大小や用途にかかわらずカラー、動画、3Dなども普通に再生可能でなければならない。ニューヨークタイムズの記事から「人々は、ひとつのデバイスでさまざまな情報にアクセスするのではなく、これからは、身近なあらゆるデバイスから同じように情報にアクセスできるようになることを望んでいる。」として、ユーザーのニーズの変化を指摘した。PDAやスマートフォンだけがネットワークに接続されればよいという時代は終わりつつあるということだろう。

 そして、それを実現するには、あらゆるデバイスに、デバイスそのものの機能にくわえ、ネットワーク機能と高度なユーザーエクスペリエンス機能を実装する必要があり、統一されたプラットフォーム上で開発できることが重要となる。つまり、CE6.0 R3やこれからリリースされるWindows 7ベースの組込みOS(Windows Embedded Standard、Enterprise、Server、コードネーム「Motegi」)ならば、リアルタイム性、ネットワーク機能、SilverlightやFlashなどのユーザーエクスペリエンス、セキュリティなどを、Visual Studioなどの統一的な環境で効率よく開発できるということだ。

 具体的にはどのようなことが可能になるのだろうか。バクシュタイン氏は、まずエンタープライズの事例として、銀行ATMの端末やレジの画面の解像度や表現力を上げれば、そこに広告コンテンツを表示させ新たな収益を生むことができるだろうと述べた。さらに、店頭のレジ端末からユーザーの操作も可能にすれば、チケット予約や店頭にない商品の取り扱いも可能になるとした。これらは、一部の専用端末、キオスク端末として実現されているが、既存の端末にも拡大しようということだ。また、Windows 7と同等なサーバー機能を搭載したEmbeddedモデルでは、VPNを利用しないでもセキュアなダイレクトアクセスをサポートできるとし、企業のサーバに直結できるスマートフォンや端末の可能性を示唆した。これらの端末がさらにインテリジェント化すると、そこから収集されるデータをWindowsサーバーやPCによるBI、BPM、SFA、CRMといったビジネスシステムとの結合が楽になる。これも同一プラットフォームを利用することのメリットだ。

 ここで、エンタープライズ系のデモとして、ドイツのシーメンスと共同開発した製品のQCラインのシステムをビデオとスライドで紹介した。これは、製品の最終的なQCを行うインダストリアルオートメーションシステムにCE6.0を利用した事例だ。ラインから出てくる製品(デモではマウスだった)をカメラで撮影し、画像解析によって不良品をチェックするというシステムだ。操作パネルが液晶ディスプレイになっており、グラフィカルな表示のほか、ボタン配置なども簡単に変更できるようになっている。また、検査データはバックエンドのサーバに蓄積され、不良品の統計情報や個別の原因なども画面で簡単に確認できる。

 続いてコンシューマ系の事例紹介に移ったが、これは松岡氏が担当した。会場に設置されたデモ環境は、家庭向けの情報端末を想定したものだ。デジタルテレビを操作するリモコンのようなものだが、家族のアカウントが設定され、単にテレビを操作するだけでなく、番組情報から、関連するネット上の情報にアクセスしたりできる。もちろん、端末上の画面でテレビの画面を見たり、ネット上のコンテンツをテレビで見ることもできる。また設定するアカウントごとに、環境設定(画面デザインなど)も可能だ。このような機能は、これまでのテレビリモコンやデジタルテレビには意外と実装しにくいものだったが、Windows Embeddedでは、PCアプリで当たり前の機能も簡単に実現できるとした。

 バクシュタイン氏によれば、コンシューマ機器でこのような機能を実現するためには、「Windowsコネクションマネージャ」という技術が重要になるという。あらゆるWindows対応の家電製品を接続し、情報を交換し、デバイスや環境が変わってもユーザー情報に基づいた設定やデータに一元的にアクセスできるようになる。また、共通プラットフォームにより、ブラウジングの操作性(パン、ズーム、各種ジェスチャー)や表現力(Silverlight、Flash)もPCからリモコンまでシームレスな環境が実現できれば、Windowsの市場は、PCの世界市場である数億台というものから、テレビやデジカメなど数百億台という2桁違う市場でのビジネスになるだろうと述べた。
《中尾真二》
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