【「エンジニア生活」・技術人 Vol.23】“最良のネットワークインフラ”を提案する——東芝ITサービス・簑輪匡史氏 | RBB TODAY
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【「エンジニア生活」・技術人 Vol.23】“最良のネットワークインフラ”を提案する——東芝ITサービス・簑輪匡史氏

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東芝ITサービス営業技術部の簑輪匡史氏
  • 東芝ITサービス営業技術部の簑輪匡史氏
  •  全国105拠点のサービスネットワークを持ち、IT資産の運用や保守などを行なう東芝ITサービス。簑輪匡史氏は、そこでネットワークなどの提案を行なっている。簑輪氏にそのミッションを聞いた。
  •  全国105拠点のサービスネットワークを持ち、IT資産の運用や保守などを行なう東芝ITサービス。簑輪匡史氏は、そこでネットワークなどの提案を行なっている。簑輪氏にそのミッションを聞いた。
 「技術者としては最新の技術を使った最高のシステムを扱ってみたいという気持ちはあります。しかし、私自身のミッションは、単純に最高のものを提案するのではなく、顧客にとって最良のシステムを提案することだと思っています」。東芝ITサービス営業技術部の簑輪匡史(みのわ・まさふみ)氏は、仕事のやりがいについてそう語る。
 
 東芝ITサービスは、もともと東芝のコンピュータの保守業務を担当する会社としてスタートした企業だ。導入後の使用をサポートする意味で、企業に駐在して運用するような業務も担当。保守と運用が設立以来の業務の大きな柱であり、そのために全国105拠点のサービスネットワークが24時間365日の体制で営業している。現在では、保守業務に付帯する事業も展開。セキュリティ対策や保守・運用につなげるための設備工事のようなファシリティサポート、より有効な保守・運用ができるような設計、開発を含めたプラットフォームのインテグレーションといった業務も行なっている。
 
 簑輪氏は95年の入社以来、ずっとネットワークに携わってきた、いわばスペシャリストだ。サービスセンターでの保守・サポートなどを経験した後、より上流で技術サポートを行なう仕事に配属。現在はプラットフォームのインテグレーションを行なう「ITプラットフォームサポート」と呼ばれる仕事を担当する。顧客の要望や要件をまとめて、ネットワークの概要設計を行なったり、提案書を書いたりといった業務を行なっている。
 
 だが、システムの提案といっても、一般的なSIerなどとは少々切り口が異なる。「私たちは基本的にアフターサービスの会社ですので、提案に際してもその後のシステムのライフサイクルといった視点がキーになってきます。導入前の段階から、末永く使ってもらえるようなシステムやネットワークのインテグレーションをしているんです」。つまり、導入前の提案の段階からシステムの可用性・運用性・保守性を意識しているということだ。では、その中で簑輪氏がミッションとして掲げる「最高ではなく最良」の提案とはどういったものなのだろうか?

■理想と現実の着地点を模索する
 数十人規模から数千、数万人規模の大企業のネットワーク構築まで幅広い案件の担当をする簑輪氏だが、そんな中で感じる最近のネットワークへの要望は多くがセキュリティに関するものだという。「一昔前は10〜100Mbpsくらいだった帯域をギガ(Gbps)のレベルまで広げるといった要望や目標が多かった。ですが、現在ではすでに帯域は十分広くなっており、社内ネットワークとしてはこれ以上必要ないという顧客がほとんどです。そんな中で現在ネットワークのリプレイスを行なう顧客の要望を聞いていくと、行き着くのはセキュリティの問題。不正なPCアクセスの排除や、セキュリティポリシーと合致しない端末の治療といった、検疫ネットワークの導入が多いですね」。

 不正PCのアクセスといっても、もちろん多くの企業は基本的なセキュリティ対策はすでに行なっていることも多い。しかし、部外者はともかくとして、社内の人間が個人のPCを持ち込んで勝手に社内ネットワークにつなぐなどの“内部犯”に対する対策を含めたセキュアなネットワークを構築しているところはまだまだ多くないという。簑輪氏は、こうしたケースに対してUTMの利用やMACアドレスを使った統制、PKIによるハードウェアレベルでの認証など、ケースに合わせた形でさまざまな提案を行なっている。
 
 だが、高セキュリティだからといってやみくもに現時点での最高のシステムを提案するのでは意味がないと氏は述べる。「現在、多くのユーザーは非常に高度なセキュリティを求めています。ですが、理想の形をそのまま構築すると、あまりにコストがかかりすぎて現実的ではなくなってしまう場合が多いのです」。
 
 ここで簑輪氏がいうコストには、導入の際のイニシャルコストも含まれるが、より重要なのは導入後の運用コストだ。「検疫ネットワークは、導入したらそれでもう安心というものではありません。たとえば、Windows Updateのデータを常に最新に保ったり、さまざまなパッチを定義していったりと、ユーザーが中心になってきちんとハンドリングしていく必要があるんです」。
 
 同社の本質的な業務は、あくまで保守・運用だ。「導入後のことは各企業にお任せ」といったスタイルにはならない。そうなると、ただ最新の技術や最高のシステムを提案すればいいというわけではなくなる。運用時も含めて、費用対効果に見合うネットワークを提案する必要があるのだ。そのためには、ただの理想の話ではなく、各ユーザーが抱えている本当の問題点をつかんで、現実的な着地点を模索する必要がある。「顧客の真の要望をつかむのは、今でも大変ですね」と簑輪氏は語る。

■技術的な成熟も「最良の提案」のポイント
 また、ネットワークは企業の根幹に関わるインフラだけに、そう短い期間でリプレイスされるものでもない。多くの企業が4〜5年のスパンで運用している。官公庁のようなユーザーの場合、10年スパンで使えるものを要求されるケースもあるという。そのため、導入する製品選定も長期スパンを見越したものでなくてはならない。
 
 「現時点でベストな製品が、1年先、5年先もベストであるとは限りません。関連するソフトやOSの状況も変わっていきますし、製品のサポートがいつまで続くかもハッキリとはわかりません。だから、もちろん最新のものがいい場合もありますが、リプレイスを前提として入れ替えの楽な製品が最良の選択になることもありますし、汎用性の高いものがいいということもあります。製品選びはいつも悩みますね」。

 安定性も運用にあたっての重要なポイントだ。その意味でも、最新の技術や製品にはボトルネックがある場合がある。「最新のものはメーカーも機能を実装したばかりです。私たちが自信を持って提案できるだけの検証が終わっていないということもある。そういった視点から見ると、技術の成熟度も重要なポイントです」。

 こうしたポイントを踏まえて、初めて「最良」の提案ができるのだ。

■ネットワークだけでなく、全体を見渡した提案をしたい
 しかし、最新のものが最良とは限らないからといって、新しい技術に無関心でいられるわけではない。「最新の技術や動向を知った上でなければ、やはりいい提案はできません」。
 
 そんな簑輪氏が現在個人的に注目しているというのは無線ネットワークだ。「WiMAXなどが、顧客の拠点間通信にどう入り込んでいくのか気になっています。通信スピードも上がりますし、広範囲なサポートもできるようになる。今後はこれまでキャリアが配信してきた有線から、拠点間を結ぶ無線が広がっていくのではないでしょうか」。
 
 また、WiMAXに限らず、IEEE802.11nなどのような小規模の無線LANも技術的に成熟し始めている。しかし、有線に比べてセキュリティ面で無線に不安を抱くユーザーも多いという。「速度も上がってきているので、私自身も無線を提案することが多くなってきています。セキュリティに関しても、有線にできるようなことは基本的に無線でもできるようになっており、技術的にはすでに整っています。そこをどう説明して、いかに納得してもらい、導入してもらうかが個人としての課題です」。
 
 簑輪氏の今後の目標は、ネットワークから一歩踏み出してシステム全体を見渡せるようになることだと述べる。「ネットワークだけで見るのではなく、そこにつながっているデバイスやその動きなど、全体を見渡せるようになりたいですね。ネットワーク以外の分野についても知識を付けて、すべてを把握した上で設計していければと思っています」。簑輪氏の「最良の提案」探しは、こうした日々の積み重ねから生まれているのだ。
《小林聖》
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