【「エンジニア生活」・技術人 Vol.16】国を問わず使える技術とサービスを——DideoNET-JAPAN・金太辰氏 | RBB TODAY
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【「エンジニア生活」・技術人 Vol.16】国を問わず使える技術とサービスを——DideoNET-JAPAN・金太辰氏

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DideoNET-Japan(ディディオネットジャパン)の技術開発チーム主任・金太辰(キム・テジン)氏
  • DideoNET-Japan(ディディオネットジャパン)の技術開発チーム主任・金太辰(キム・テジン)氏
  •  SEやプログラマーといった仕事は、海外からやってきた技術者が活躍しているケースも多い。動画ストリーミングサービスを提供するDideoNET-JAPANの金太辰(キム・テジン)氏もそうしたエンジニアの1人だ。
  •  SEやプログラマーといった仕事は、海外からやってきた技術者が活躍しているケースも多い。動画ストリーミングサービスを提供するDideoNET-JAPANの金太辰(キム・テジン)氏もそうしたエンジニアの1人だ。
 SEやプログラマーといった仕事は、海外からやってきた技術者が活躍しているケースも多い。こうしたエンジニアは、もともと母国でそうした職に就いていて、日本にやってくる人も多いが、最初の就職先が日本の企業という場合もある。DideoNET-Japan(ディディオネットジャパン)で技術開発チーム主任を務める金太辰(キム・テジン)氏もそうしたエンジニアの1人だ。
 
 DideoNETは、韓国に本社を置く企業。韓国国内では、動画ストリーミングサービスの分野で70%以上のシェアを持つ業界大手だ。官公庁やe-ラーニング分野での採用も多く、韓国で誰でも知っているような動画配信サービスを調べてみると、同社のサービスを利用しているというケースも多いという。DideoNET-Japanは、その日本法人として、DideoNETとタカラインデックスeR ラボ(タカラトミー子会社)の出資で2006年に設立。H.264をベースにした高圧縮かつ高品質の独自コーデック「SMV2」などを使い、動画ストリーミングサービスをソリューション販売とASP型で提供している。
 
 最近ではウェブ上で配信される動画の高画質化に伴い、1,280×720ピクセルのハイビジョン動画の配信もライブ配信で行う。ハイビジョン動画の配信は扱うデータの量が膨大になるため、専用回線を用意して行うのが一般的だ。これに対し、同社の場合は一般回線を利用した配信技術が特徴であり、ローコストで使えるハイビジョン動画配信ソリューションを開発している。

 金氏はサーバなどの技術を学ぶ学校を卒業した後、すぐに来日。初めての就職先が日本だった。JAVAなどでのプログラミングを行なう仕事についた後、今年2月からDideoNET-JAPANに入社。「韓国では有名で、自分も知っていた企業だったので興味を抱いた」と転職のきっかけを語る。同社に入社して初めて金氏が手がけたのが、動画配信技術を応用したウェブ会議システム「SUGU MEET」だ。

■限られた帯域をどう使うか
 ネット上でのテレビ電話システムというと、一般的によく知られているのはSkypeなどの無料サービスだろう。ウェブカメラとネット環境さえあればすぐに使える手軽さが魅力だが、画質面や通信のタイムラグなど、商用ベースで利用するにはクオリティ不足は否めない。会議などを行う場合にも、解像度が低く、映像で見せたいものを鮮明に見せることは難しい。しかし、本格的なビデオ会議システムを導入するとなると、現在市場にあるのは専用回線を使用する大がかりなものが多い。導入に莫大なコストがかかってしまう。

 SUGU MEETは、こうした市場の中間を狙うサービスだ。SMV2による高圧縮・高画質化により、一般回線を利用して高品位ビデオ会議を、低コストで提供するのが特徴だ。だが、高画質動画はどうしてもデータ量が多くなる。開発にあたっての課題の1つは、一般回線という限られた帯域でいかに高画質の動画を配信するかという点だったという。「500Kbps程度まで圧縮した動画でも、たとえば4拠点を同時につなごうと思うと、2Mbpsもの帯域を使用することになります。それでは一般回線を使った配信は難しい。動画のビットレートをどう抑えて、安定した配信と画質を両立させるか、かなり試行錯誤しました」。
 
 また、実際にユーザーがビデオ会議に使用するPCのスペックにも配慮が必要だ。サーバ側、回線側が高画質動画の配信を行なっても、ユーザーの使用するPCのスペックがそれに対応できるだけ高いとは限らない。ユーザーのPC側で処理落ちしてしまうのであれば、サービスとしての利便性は下がってしまう。
 
 こうした問題に対処するため、動画のビットレートは300Kbpsと100Kbpsの2種類からの選択できる形を採用。PC2台による1対1の会議に加え、それを閲覧するPC1台という合計3拠点での会議・閲覧を行える形をとっている。「通常のPC同士の会議なら100Kbps、プロジェクターなどを使って、ちょっとした大画面で会議を行なうなら300Kbpsというすみ分けです。今後さらに4拠点を同時につなぐシステムを開発中です」。

■サービスまで持っていく必要がある日本のIT市場
 海外に本社を持つ企業の場合、製品開発は本社で行なわれ、日本などの海外法人ではちょっとしたローカライズと営業が業務の中心というケースも少なくない。だが、SUGU MEETは日本法人で開発されたソリューションだ。そこには日韓のソリューションに対する意識の違いがあるという。
 
 「SUGU MEETは、もともと“SEE LIVE”という本社で開発したストリーミングソリューションを応用したものです。これはライブ映像を配信するシステムで、具体的にどう使うというサービスにまでは落とし込んだものではありません。韓国の場合、こういったソリューションを企業に提案すると、企業の側でそれを活用して、自社サービスに応用する方法を考えていくことが多い。企業のITへの意識が高いんですね。ですが、日本の場合、ソリューションだけ見せても『それで、これはどう使うの?』と聞かれてしまうことが多い。だから、サービスとしてパッケージングして見せていく必要があるんです」。

 実際に、韓国ではビデオ会議などのほかに、テレビショッピングの配信などに応用している例などもあるという。だが、日本ではIT企業といわれるような企業以外では、なかなかこうしたソリューションを自社で商用サービスに独自カスタマイズするという発想がない。そのため、“SEE LIVE”そのものだけでなく、パッケージングしてサービスに落とし込んだものが必要になるというわけだ。

 しかし、こうした独自の開発が、逆に韓国の本社に持ち帰られることもある。SUGU MEETも、韓国での製品化に向けて、技術改良が進められているという。

■やりたい仕事ができれば国は問わない
 ITに対する意識の差は、もちろん国による違いだけではない。サービスを使用するユーザーごとに、「慣れている」「慣れていない」という差は激しい。金氏の目標は、そうした知識などの差を超えて使えるUI(ユーザーインターフェース)の開発だという。
 
 「SUGU MEETの場合でも、まず開発やカスタマイズを行なう私たち技術者、それを扱う代理店がいます。そして、実際に使用する顧客がいる。顧客の中でも、システムを管理するIT関係の担当者と、このサービスを使って会議を行なうだけのエンドユーザーがいて、それぞれ知識や技術のレベルが異なります。そのすべての人にとって使いやすいUIが必要なのです」。技術者や管理者などにとっては、カスタマイズや詳細な管理がきちんと行えるシステムである必要がある。だが、一方エンドユーザーは極端にいえばクリック1回ですぐに使えるのが便利なサービスだ。その両方を満たすUIの開発は、なかなか難しい。「もっと経験を積んだり、ユーザーの声を丁寧に聞いていく姿勢が必要だと思っています」と金氏は指摘する。
 
 それは、ある意味で、国を飛び越えて利用されるインターネットサービス全般が抱える課題だともいえるだろう。文化や言葉が違っても使えるインターフェースが、UIの1つの理想型であり、求められているものだ。金氏自身、「言葉の問題はあるけれど」としつつ、「機会があれば日本以外の国でも働いてみたい。やりたい仕事ができるなら、働く国は問いません」と語る。国が違っても、究極的に求められるものや、そこで使われる技術には、国境はない。インターネットは利用者はもちろん、技術者にとってもグローバルな市場だといえるかもしれない。
《小林聖》
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