【「エンジニア生活」・技術人 Vol.13】社内初のSaaS事業を推進する——日本ユニシス・田尻純子氏 | RBB TODAY

【「エンジニア生活」・技術人 Vol.13】社内初のSaaS事業を推進する——日本ユニシス・田尻純子氏

 エンジニアといえば理系というイメージが強いが、SEなどにはもともと文系の出身者も多いという。日本ユニシスの田尻純子氏もその1人だ。現在教育支援システム「RENANDI(レナンディ)」のSaaS版を開発している氏に話を聞いた。

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日本ユニシスICTサービス本部サービス開発部主任の田尻純子氏
  • 日本ユニシスICTサービス本部サービス開発部主任の田尻純子氏
  •  エンジニアといえば理系というイメージが強いが、SEなどにはもともと文系の出身者も多いという。日本ユニシスの田尻純子氏もその1人だ。現在教育支援システム「RENANDI(レナンディ)」のSaaS版を開発している氏に話を聞いた。
  •  エンジニアといえば理系というイメージが強いが、SEなどにはもともと文系の出身者も多いという。日本ユニシスの田尻純子氏もその1人だ。現在教育支援システム「RENANDI(レナンディ)」のSaaS版を開発している氏に話を聞いた。
 エンジニアといえば理系。一般的にそんなイメージが強いが、実はSEなどの中には文系出身者も多いという。日本ユニシスのICTサービス本部サービス開発部で主任を務める田尻純子氏もその1人だ。氏は現在、教育支援システム「RENANDI(レナンディ)」の開発チームに参画。同システムのSaaS版などを手がけている。
 
 RENANDIはもともと大学と共同で研究開発したシステムだ。現在は、そのノウハウをいかして学習環境を統合的にサポートするシステムとして同社が製品化している。授業や集合研修での出欠管理、教材の配付、ネットを利用して授業、課題提出、ディスカッションを行うe-ラーニング、グループ演習のサポートといった機能を同システム1つで提供できる。学生側はブラウザ上で講義の受講や課題提出、自分の履修履歴の確認などを行える。教員側は教材の配信や受講者への告知の一括送信のほかに、紙成果物の管理も可能だ。大学など教育機関での利用はもちろん、研修や社員教育用として一般企業で導入されることも多いという。
 
「周りでも文系出身者や理系でも関係のない分野の出身の者が多いので、理系・文系というのを意識することはないですね」と語る田尻氏。氏がSEになり、RENANDIの開発に関わるようになったきっかけはなんなのだろうか。
 
■企画から開発、保守まで全て行う
 学生時代は法学部に在籍しており、とりわけPCに詳しいわけでもなかったという田尻氏。就職活動を始めた頃はそもそもSEというのがどういうものなのかもよくわかっていなかったという。「私が入社した2002年頃というのは、学生の間でもITへの関心が高まり始めていた時期です。それで話を聞いたり調べたりしていくと、技術を使いながら、人とのつながりやコミュニケーションの中でものを作っていく仕事だとわかってきて、興味を持ち始めました。周りの人や会社からも『今知識がなくても、入ってから頑張れば大丈夫』といわれて、それなら入って頑張ってみようかと思ったんです」。システムの開発などは、顧客の要望や声などを取り入れながら進むことも多い。そうした場合のコミュニケーションは、SEにとって非常に重要なスキルだ。

 当初配属された部署では、主に顧客から依頼を受けてシステムを開発する受託開発型の仕事が多かったという。開発の規模も大きく、2年ほどの期間をかけ、最大で100人以上の人が開発に関わるシステムを手がけていた。「大規模な仕事は大規模な仕事でやりがいがあったのですが、大きすぎてなかなか全体を見渡すことができないんです。それで、自分で全体を見ていくことのできる仕事がしたいと上司にも相談していたんです」。
 
 その希望が通ってか、単なる偶然か、田尻氏は1年ほど前にRENANDIの開発チームへと異動になった。それまでとは違って、10人程度のチーム。社内開発のソフトウェアであるため、新バージョンでどんな機能を盛り込むかという企画から、そこで決まった機能を実際に盛り込む設計・開発まで自身で行える部署だ。また、開発しただけで終わりではない。実際にソフトなどを導入、セッティングしに行くこともあるし、導入後の保守対応を行うこともある。また、新規顧客への提案に同行し、営業支援を行う場合もある。まさに、最初から最後まで全てを自分で見ることのできる仕事だ。
 
■社内初のSaaS化に関わる
 比較的小規模な開発チームのため、「新しいことをやっていこう」という空気も強いという。RENANDIのSaaS化もその成果の1つだ。昨年11月に発表されたRENANDI SaaS Editionは、同社としても初めてのSaaSソリューション。SaaS事業への本格参入の皮切りとなるサービスになった。「インターネット環境が整備され、各種技術が進化したことにより、SaaSが注目を浴び始めていました。RENANDIという製品ともマッチしていましたので、ぜひやってみようということになったんです」。
 
 SaaS版の開発の背景には、ユーザーからの声があった。もともとRENANDIはパッケージソフトだ。そのため、まずは導入するためのサーバが必要になる。また、導入後もメンテナンスを行うシステム管理担当者もいなくてはならない。大きな大学や大企業など、すでにシステム環境が整っており、継続的に教育システムを使っていく場合はいいが、教育システムを使いたいのはそうした人たちだけではない。地方の大学や中小企業になると、システム管理を行う人がいない場合もある。また、企業の新人研修のように、利用シーンによっては一定の期間だけ使いたいケースもある。そうした時に、新たにシステムを丸ごと導入するのはハードルが高くなってしまう。
 
 SaaS版なら使いたいときだけ手軽に利用でき、管理する手間もかからない。必要な機能だけいくつか使うといった使い方も可能だ。また、既存システムとの連携もできるようになっており、顧客が持っている既存のシステムと連動して動かすこともできる。「資産を持つのではなく、経費を使うのに近いですから、気軽に使ってもらえるんです」と田尻氏は指摘する。SaaS版はこれまで対応できなかったユーザーの声に応えるサービスというわけだ。実際、すでに企業向けの研修、職業訓練のようなシーンで利用されており、これまで声のかからなかった顧客からも反響があるという。

 少々意外だがSaaS版の開発にあたって、技術的なハードルはそれほど高くなかったという。田尻氏が考えるハードルはもっと別のところだ。「基本的には既存のモジュールを使っていく方向で進めています。技術的には実現できる。むしろ、みんなに使ってもらって、ビジネスとして確立していく方が大変です。そういう意味で、開発自体よりも今後の方が大変ですね」。
 
■厳しいお客さんはいいお客さん
 文系出身の田尻氏は、自分のことを“技術寄り”の人間ではないと評している。そんな氏が興味を抱いているのは、ビジネスとしてのエンジニアリングだ。業界的にも注目を集めるSaaS事業に関しても「私自身はどうしてもSaaSをやりたくて開発を行ったというわけではありません。RENANDIというソフトを発展させ、より良くするためにSaaSという形を使ったという感じです」と答える。氏にとってSaaSとは、技術としてというよりも、新たなビジネスモデルや製品改良の手段の登場としてのインパクトの方が大きかったようだ。「一定の期間だけだとか、少人数で使うといったように、顧客の視点から見て便利だというのが大きいですね」。
 
 「会社としても多分技術だけでいいとは考えていないと思います。もちろん技術や専門的な知識が豊富な人もたくさんいますし、私自身今後も技術の勉強はしていかなくてはいけないと思っています。ですが、製品作りは顧客の声を聞いたりというコミュニケーションの中で進んでいきます。顧客のニーズをくみ取り、技術をベースに顧客にとって本当に価値あるものを作る、という姿勢が大切です」。田尻氏はそう指摘する。
 
 そんな氏にとって一番うれしい顧客は“厳しいお客さん”だという。「厳しいお客さんはいいお客さんとよくいいますが、いろいろと意見を言ってくれる方は、それだけRENANDIを使ってくれている人なんです。難しい要求をしてくるのも、もっと使いたいという気持ちがあるためですから。そういう要望をすくい上げて『よくなったよ』とか『以前よりさらに使うようになった』といってもらえるのがうれしいですね」。
 
 そんな氏に将来の目標を尋ねると「技術もわかりつつ、ビジネス視点を持っているエンジニア」と答えた。エンジニアという職業は、ただの技術屋と思われることも多い。だが、製品作りは技術の研究発表ではない。ユーザーに必要な機能を最適な形で組み合わせ、形にしていく必要がある。「仕事は巡り合わせという面もありますから、そのときそのとき出会った人や技術にきちんと目を向けて、うまく製品に取り込んでいきたいです」。仕事を支える好奇心と熱意。それは文系でも理系でも変わらないことなのだ。
《小林聖》

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