【インタビュー】先手を打ったサービスでNTT西日本に対抗——ケイ・オプティコム代表取締役社長 田邉忠夫氏 | RBB TODAY

【インタビュー】先手を打ったサービスでNTT西日本に対抗——ケイ・オプティコム代表取締役社長 田邉忠夫氏

 ケイ・オプティコムは関西電力系の総合情報通信事業者である。関西一円に広がる独自の光ファイバーネットワークを基盤に、NTT西日本と激しく競争している。

ブロードバンド その他
代表取締役社長 田邉忠夫氏
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  • これまでのサービス展開
  • 平成16年9月1日からのサービス・料金戦略
  • 代表取締役社長 田邉忠夫氏
  • 代表取締役社長 田邉忠夫氏
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  • 総合部門インフラストラクチャアワードの西日本最優秀賞、インフラストラクチャアワードの部門賞、サポート、コストパフォーマンス、信頼性、スピード部門でトップ。ベストサービスアワードの部門賞ではサポート部門で2位、メールサービス部門で3位となった
  • 総合部門インフラストラクチャアワードの西日本最優秀賞、インフラストラクチャアワードの部門賞、サポート、コストパフォーマンス、信頼性、スピード部門でトップ。ベストサービスアワードの部門賞ではサポート部門で2位、メールサービス部門で3位となった
 ケイ・オプティコムは関西電力系の総合通信事業者である。関西一円に広がる独自の光ファイバーネットワークを基盤に、NTT西日本と激しく競争している。その激しいサービス競争に磨かれた結果、同社のサービスブランドである「eo(イオ)」がRBB TODAYの読者に高く評価された。総合部門インフラストラクチャアワードの西日本最優秀賞のほかに、インフラストラクチャアワードの部門賞、サポート、コストパフォーマンス、信頼性、スピードのすべてでトップ。また、ベストサービスアワードの部門賞ではサポート部門で2位、メールサービス部門で3位となった。2007年のRBBブロードバンドアワードで、もっとも多く社名が登場した企業である。西日本のユーザーから熱い支持を受けた「eo」の歩み、現在、将来について、代表取締役社長 田邉忠夫氏に聞いた。

■ライバルはADSLだった

——NTT西日本と勢力が拮抗する中で、御社の優位性とは?

田邉氏:「NTT西日本は巨象。我々は蟻」。蟻と巨像の戦い。蟻が巨像のそばで"こそばゆい"存在になるには、常に先へ先へと手を打っていくことが大事なんです。

——具体的にはどんな手を打ったんでしょうか?

田邉氏:まず値段。平成14年4月にeo光ネットのFTTH、ホームタイプを始めました。当時は東京でも大阪でも定額のFTTHというと1万円を超えていました。それを思い切って6300円に設定。さらに平成16年の9月に4900円に値下げ。あの時はNTT東西も電力系各社も「なんでそんなに安くするのか」と言ってました。社内では「弱小な立場の我々が価格競争を始めてどうするんだ」という意見もありましたが、それでも4900円にしたのには理由がありました。「我々のFTTHは絶対に優れている」という確信です。

——実際にはどうでしたか?

田邉氏:平成16年4月からの新年度で申し込みが、思っていた以上に増えなかったですね。調査分析をした結果、何に負けているかというとADSLに負けていたんです。それならADSLと本気で勝負しようと……。当時ヤフーBBが隆盛で、これはNTTの電話線が必要でした。月額1800円の一般固定電話料金とADSLの利用料金が加わって総額で5500円(Yahoo!BB 12Mの場合)。それよりも優位性のある価格にしないとやっていけません。そこで、性能が良ければ5パーセント以内の価格差で優位性をアピールしようと考えたんです。電話機能を付けて5パーセント割引いてキリのいい数字が5200円でした。ただし電話サービスにはボイスアダプターが必要になります。これのレンタル料だけは頂きたい。そこで300円のボイスアダプター料金を設定。だから電話無しのネットだけの料金は5200円-300円=4900円。これが4900円という値付けの理由です。コストを考えると赤字。そこでコスト削減に着手しました。目標は40万戸加入時の採算ポイント。一所懸命にそこまで持って行こう、ということですね。

——戸建てとマンションタイプの比率はどのくらいですか?

田邉氏:東京のかたは必ずそれをお聞きになりますね(笑)。東京は集合住宅の比率が7割、戸建てが3割です。ところが関西では戸建てが6割なんです。最近は高層マンションが建つようになりましたが、それでも関西のマンションは戸数の少ないタイプが多い。東京のように大規模ではないんです。東京は地価が高いということも原因だと思いますが、関西では地価の高いところでも戸数の少ない高級マンションが多いんですね。ですからマンションの戸数自体が少ないです。平成13年からマンション向けの営業活動を行っていますが、デベロッパーが東京で包括契約しているケースも多いです。「そんな殺生な」と思いますけど、これは仕方ないです。ただ、コツコツと営業を続けてきた結果、徐々に採用して頂けるマンションも増えてきておりますので、並行導入の働きかけに力を入れようと思っています。もちろん弊社が入っているところに、他社が参入してくる場合もあります。

——他に先手を打った戦略はありますか?

田邉氏:『eo光電話』でOAB〜J番号(従来からの06−****、03−****などの電話番号)に対応しました。「いまお使いの電話番号がそのままeo光電話で使えますよ」と。これは戸建て向けでは私たちが日本初でした。次にeo光ネットの『1ギガコース』。NTTはONUまで最大1Gbpsで、そこから端末までは100Mbps。それを私たちは端末まで最大1Gbpsで繋がるようにしました。これは「100Mコース」の料金より3,800円ほど高いこともあって、まだお客様は少ないのが現状です。しかし、3月から当社のサービス提供エリアの全エリアでお使い頂けることが可能と発表したので、加入増を期待しています。また、平成15年11月から光ファイバーを使ったケーブルテレビサービスを始めました。光ファイバーならではの高画質・高音質で、アナログ・デジタルの地上放送はもちろん、BS・CSまで最大135チャンネルの様々な番組をお楽しみいただける、デジタル多チャンネル放送サービスです。おかげさまで今年の1月に、加入者数が10万件を突破しました。

田邉氏:ともかく1番手を走らなければ我々は対等、もしくは対峙する状態にはなれないだろうと考えました。eo光電話は50万近いユーザーが加入しています。eoの加入者同士の通話は無料。電話の基本料金は不要。これらは他のプロバイダーも追随していますが、当時は画期的なことでした。NTTは電話がメインの商売だから無料にはできないですね。テレビにも優位性があります。私たちのサービスでは各家にドロップケーブルという線が入ります。私たちは、初めから2芯を使ってやってきました。NTTは1芯でIPマルチキャストや、光波長多重通信ですので高く付くと思います。NTTは今後もIPマルチキャスト方式でやっていくと思われますが、私たちは、1本はデータ通信に使い、もう1本は映像に使っています。これはCATV方式だから、将来的にハイビジョンなど容量の大きなデータ放送が出てきてもすべてに対応できます。光ファイバーを家まで引いたら、CATVの光ハイブリッド方式よりも品質がいいのは当たり前で、高画質でチャンネル数が多く取れます。IPマルチキャストの場合は、ひとつの家で、例えば2階で誰かがハイビジョンを鑑賞して、1階のリビングで他の家族がテレビ番組を観ると、それだけで帯域が枯渇してしまいます。しかし私たちの場合はその問題はありません。テレビサービスという部分でも、CATVさんやNTTよりは優位性があると考えています。

■加入者が10万件を越えたeo光テレビ。今後の展開は……

——eo光テレビの戦略は?

田邉氏:これまでも随時、サービス提供エリアの拡大や新チャンネル追加などのサービスの充実を図ってきましたが、引き続きお客様の満足を第一に考えた施策を講じることで、着実に契約数を増やしていきたい。最近のデータでは10万5000強の契約になっています。

——加入者数の目標は?

田邉氏:現在FTTHの新規契約で電話とのバンドル率が8割。テレビはそれほど高くはありません。しかし、だんだんバンドル率が上がってきました。

——10万以上の契約を既に獲得しているとはすごいですね。

田邉氏:(とくに強化策を実施していなくても)お客様がクチコミその他で「これはいい」と気付いてくださった結果です。ネット、電話、テレビのトリプルプレイはライフラインと同じ。私たちは、「障害発生の抑制」を第一とし、万一障害が発生した場合には、「影響範囲の極小化」と「迅速な復旧」に向けて取り組むことが、お客様から信頼を賜る最大の責務であると考え、設備信頼度の向上やネットワークの監視、保守体制の強化等の対策を実施しています。更なる品質向上に引き続き取り組んでいきたい。

——今後は一体のサービスとして進めていくということですか?

田邉氏:そうしたいと思っています。ただし、テレビの多チャンネルサービス契約を含めると合計で8,350円かかります。これは年金でやりくりしていらっしゃるお年寄りには辛い金額かもしれません。そこでテレビだけ、もしくは電話だけのメニューなども用意しています。インターネットのバンドルではないのでサービスの単価は高くなりますが。

■「ウチはほんまもんのギガでいこう」

——1Gサービスの今後の展開や需要の見通しは?

田邉氏:1GサービスのためにE-PONをGE-PONに順次リプレースしてきました。現在は我々の管内全域でGE-PONの準備が完了し、1Gのサービスを使いたい方にはいつでも用意ができます。1Gサービスの値段は8,700円。100Mとの差別化を考慮して高く設定しました。契約数はまだ少数です。

——ユーザーは1Gを何に使っているのでしょうか?

田邉氏:最新のパソコンを接続すると実測値で600から700Mbpsほど出ています。実はここまでのスピードを活用するサービスが今のところ出てきていないのが現状です。速さそのものを楽しんでいる状態ではないでしょうか?

——現状の価格を下げる予定はないですか?

田邉氏:いまは8700円と高い値段に設定していますが、1Gサービス契約がもう少し増えてきたときに見直すかもしれません。ただ、今のところは現在の価格を維持していきたいと考えています。

——1ギガコースをメニューにした当時の戦略は?

田邉氏:NTTがONU間をギガで、端末まで100Mでというサービスを先に始め、ここだけが弊社が負けたところでした。それなら「ウチはほんまもんのギガでいこう」と。

——まだ少数、という1Gサービスの契約数についてどう思いますか?

田邉氏:増やしたいとは考えています。今までは一部地域だけのサービスでしたが、3月から100パーセント対応可能となりました。これがきっかけになると思います。

■7月に都市型データセンタ誕生。SaaSとデータ預かりを重視

——急増するデータ流通量に際して、データセンターのあり方も問われていますが

田邉氏:弊社は9ヵ所のデータセンターを持っています。お客様のコンテンツを預かる容量も必要ですが、確実に出てくるのは中小企業向けのSaaSサービスの急増で、大規模なデータセンターを持つ必要があります。そこで心斎橋データセンターの設置を決めました。ハウジングやコロケーションだけではなくて、ソリューション化したデータセンターとなっています。

——データセンターの立地はどういう視点から決めるのですか?

田邉氏:弊社には地価の安いところに置いたデータセンターもあります。心斎橋は都市型データセンターという位置づけで、耐震設備を備え、保守員の駆けつけなどの緊急性を重視しています。

■NGN、WiMAX、キラーコンテンツ不足……イノベーションを引き起こすために必要なものは?

——NGN網がいよいよ今年からと言われる一方で、キラーコンテンツがないという声もあります。逆に個の情報が確立されるので、もっとサービス、ビジネスが広がるという考え方もあります。

田邉氏:キラーコンテンツがないことは事実です。NGNはQoS(帯域保証)を前面に押し出そうとしています。電話を例に挙げると、今まで最大3.4キロヘルツだったものが、NGNを使うと7キロヘルツまでいけると。結果、高音が美しく聴ける、小鳥の声もきれいに聞こえる。しかし、現状の携帯電話の音質に慣れているのに、"小鳥の声"のクオリティが必要かというのは疑問です。コンテンツのほうでは、新しいネットワークができたら新しいサービスができていきます。しかし、コンテンツができてからインフラが増強されていくというのが本来の姿だと思います。

——貴社にとってNGNは脅威になりますか?

田邉氏:NGNそのものは脅威ではないです。NGNはオールIP網ですが、我々はすでにオールIPです。怖いのはNGNが様々なサービスを抱え込むようになった場合です。大手ISPやASPがすべてNGNに入ってこられて、その網内だけのサービスを始められる懸念はあります。ただし、それは総務省が許さないでしょう。

——御社としては対策を立てているのでしょうか。

田邉氏:動向は調査しています。ただ、NGNのメインの役目は現在の固定電話網をIP網に置き換えるだけで終わるという見方もあります。ISPがNGN網に限定せず自由なビジネスをやりたいという方針を掲げた場合、NGNの商売は大変です。

——「個」の情報が取れるようになると、課金から決済までビジネス機会が増える部分もあり、これも脅威かと思いますが

田邉氏:弊社の加入者はFTTHで66万を越えています。各家庭でお子様等含め3人の方がご利用して頂いているとしたら200万程のユーザーがいるということになります。そのすべての皆さんにIDを持ってもらい、活用するという方法は考えなくちゃいけないと思います。そうすればNGNが関西で始まったとしても、eo光ネットのお客さんが不自由なことはなくなります。

——話は変わりますが、最近のIT業界にはイノベーションが少ないと思います。特に日本企業に元気がないというのが実感ですが

田邉氏:平成12年の11月から社長をやってきて、振り返ると苦労の連続でした。イノベーションを充分体験してきたと思います。これ以上イノベーションがあると苦しいですよ(笑)。ただ、今後どうなるか?いまトリプルプレイで売れていても、2011年頃には飽和するというアナリストもいます。いつか来るときのために次に何をやるか?それを今の経営状態がいい時代に考えておく。それが私の課題だと思います。

■今年は第2の基盤整備に注力

——御社の今年の事業の目玉は?

田邉氏:去年の末で設備事故対応は完了しました。あとは需要をみて設備を増強していくことになります。今年は我々が平成13年の6月から構築している初代のMPLS網の更改時期。第2の基盤作りだと言えます。

——将来的な加入数の目標は?

田邉氏:今年度末、つまり今年の3月末で67万件を越える見込みです。毎年15万件程度増加していますが、まずは一つの目標として100万件を突破したい。もちろん、どんどん加入していただき、eo光の良さを多くの人に体感していただきたい。NTTに入るお客様とeoに入るお客様には明確な違いがあります。NTTに入るお客様は他社との比較をしない場合が多いと思われます。eoに入るお客様は、他社と徹底的に比較してから選ばれる方が多い。これから光を導入する方に対して、いかに比較検討していただくかが重要です。比較していただければ、当社のサービスの良さを絶対にわかって頂けるという自信があります。

——ありがとうございました
《RBB TODAY》

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