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日立製作所、放送・通信融合時代に向けた研究成果を紹介

エンタープライズ その他
放送通信融合・連携システム概観
  • 放送通信融合・連携システム概観
  • 光アクセスシステムのトレンド
  • 北米でGPON商用サービス開始
  • GPONを活用した光アクセスシステム
  •  日立製作所中央研究所ネットワークシステム研究部の武田幸子氏は、東京・有楽町で開催された「日立 uVALUEコンベンション2007」で「放送・通信の融合に向けた研究」の講演を行った。
  • 会場のデモステージ
  • 実際に使われている機器
  • 大量の映像や画像を瞬時に検索する高速類似検索
 「将来のシステムではバックエンドからフロントエンドに対して高精細な100チャンネルを3000万世帯に配信するプロ—ドキャストが可能になり、またフロントエンドからバックエンドには100億アイテムのデータ収集が行えるブロードギャザーが可能になると考えている」

 日立製作所中央研究所ネットワークシステム研究部の武田幸子氏は、東京・有楽町で開催された「日立 uVALUEコンベンション2007」で「放送・通信の融合に向けた研究」の講演を行い、冒頭のように話した。バックエンドからフロントエンド(家庭、企業、都市、産業など)へのブロードキャストにはギガビットクラスの広帯域化とともに高付加価値サービスの提供、バックエンドでは高機能化が求められる。同社では、これらの要件について、光アクセスシステム、映像サービス・サーバ、高速類似画像検索技術などの取り組みが行われている。今回の講演ではこれらの詳細が発表された。

 現在北米ではGPONというシステムをを用いた商用サービスが開始されており、オレゴン州バンドン市では2006年にGPONを用いたトリプルプレイサービスの商用化が開始されている。現在ではコキーユ市でトライアルが開始されており、2007年7月末までにサービスが開始される予定だ。このPONシステムでは、局側の装置であるOLT、宅内側の装置であるONUを光ファイバーや光スポリッタを介して接続する構成をといっている。家庭ではネットTVやパソコン、IP電話の端末を使うことでトリプルプレイサービスが可能になっている。

 武田氏によると光アクセスシステムを利用してIP網よる映像配信を具現化しようとすると大きく大容量の帯域、テレビのチャンネル切り替え時間の短縮、放送要件の満足(地域限定配信、QoS、匿名性確保など)といった3つの要件を満足することが必要になってくるという。ユーザーの要求がますます高度化していくと、ユーザーが求める画質が高精細になっていく。その要求のなかで例えばH.264という技術を用いると、1chあたり必要とされる帯域数は10Mbpsになり、MPEG2で利用すると20Mbpsの帯域が必要。また、ケーブルやCATVのサービスに慣れ親しんだユーザーがIP網による映像配信サービスを受ることを考えると、最低100chのサービスが必要になってくるだろう。同社では、これによりアクセスの帯域としても1Gの帯域が必要になってくるのではないかと考えている。また、当然ユーザーは、今(のテレビ)の使い勝手を当然維持したいと考える。システムが変わったのでチャンネル切り替えが遅くなるということでは受け入れられない。ここでは、テレビの端末と映像放送サーバの通信時間の短縮、圧縮された映像が提供される際の圧縮データのデコード時間の短縮も課題になる。

 今回、日立製作所中央研究所では帯域の有効活用を図る施策を行った。光アクセスシステムでの情報コピー方法として光レベルで情報をコピーし宅内装置へ情報を送信した。また、ONUまでマルチキャスト、ONUでチャンネル選択を行い、チャンネル切り替え速度10msecを達成した。具体的には放送サーバからPONの宅内装置であるONUまでIPマルチキャストの技術を用いて、あるまとまったチャンネル数全部の情報を送信していく。ユーザーがチャンネルAをリモコンで選択した場合、ネットTVがIP放送チャンネル管理サーバにチャンネル情報に対応するマルチキャストアドレスの問い合わせを行う。ネットTVはチャンネルに対応するマルチキャストアドレスを入手すると、マルチキャストのグループに参加するという通信処理を行う。このJOINというメッセージをうけると、ONUのなかで受信しているマルチキャストデータのうち、ある特定のチャンネルAに対応するデータだけを宅内側に流すというフィルター処理を行う。この場合、続いてユーザがリモコンで次のチャンネルBを選んだ時には、ネットテレビからPONの宅内装置にチャンネルBへの参加要求、チャンネルAグループからの離脱要求が送信され、ONU側からネットTVに送信されるチャンネル情報がチャンネルAからBに切り替わる。

 高機能化への取り組みとしては類似画像検索技術も特徴的だ。色合い、形状など画像自体が持つ情報を数値化したデータ(画像特徴量)をデータベース化した。1枚の画像を構図分解し、ヒストグラムの構成やエッジパターンの強度分布を分析、近いと判断された画像を、類似性が高い純に検索結果として表示する。この画像特徴量は自動的に抽出されるので、検索用のメタ情報を付与作業が不要になるというメリットがある。また、画像特徴量を保存するデータベースの配置方法を工夫してメモリ消費を抑えた検索を可能にしたり、あるいは類似したデータをまとめてクラスタリング処理をすることにより、通常のパソコンを使いながら100万件規模の画像から類似した画像を1秒以内で抽出することを達成している。これを映像テレビの情報に活用すると、約1000時間分の映像のなかから好きな女優が写っているシーンを瞬時に見つけ出すということが可能になるという。

 武田氏は最後に、同社の中長期的な研究開発の発表を行った。将来を見た場合、インターネットのトラフィックは2015年には40%増、ルータの電力消費量は国内総発電量比率9.0%となってしまう。同社ではこれに対して早めに手を打たなければいけないということで、トランスポートの研究開発方針として容量化、省電力化の両立が重要になると考えて、さらに様々な高機能化を両立する研究開発を推進している。従来のコアネットワークは1と0の1ビット(2値)の信号を、光信号の強弱によって伝送する強度変調方式を採用している。この方式では近くなっているということで、日立では光の位相を8値3ビットに変調する多値技術を用いて、伝送容量を3倍にする実験を行った。これによって、従来の伝送距離100mの約10倍とな1040km(1周80kmの実験系に投入して13回まわした)の伝送に成功した。また、この実験ではファイバあたりの情報伝送量の増大に向け、波長多重技術を組み合わせた16波長多重で、総情報伝送量480ギガビット/秒の伝送を実現した。

 一方でトランスポート制御の必要性についても研究がなされている。今後の通信の形態がリアルタイム通信と非リアルタイム通信の混在んするシステムとなってくるとが考えれる。この場合にデータの損失や遅延がおきてしまう可能性があるが、これに対しては(1)サービスごとの帯域測定や異常の検知、(2)サービスの要求に見合ったリソースの確保、(3)多様化・複雑化するネットワーク装置の制御容易化といったアプローチが必要だ。同社ではフロー監視、QoS制御、装置制御(XMLベースの柔軟な装置設定)を検討項目としている。
《RBB TODAY》
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