【IPv6 Summit 2006(Vol.1)】NTT西日本、KDDI、アッカ、朝日放送が次世代サービスでのIPv6活用法を紹介 | RBB TODAY
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【IPv6 Summit 2006(Vol.1)】NTT西日本、KDDI、アッカ、朝日放送が次世代サービスでのIPv6活用法を紹介

ブロードバンド その他
「IPv6 Summit 2006」の模様。秋葉原コンベンションホールで開催された
  • 「IPv6 Summit 2006」の模様。秋葉原コンベンションホールで開催された
  • 右から司会進行を務めたIRIユビテックの伊藤公祐氏(ユビキタス事業部シニアコンサルタント)、参加パネリストのNTT西日本の小林清澄氏(技術部 技術部門長)、KDDIの吉満雅文氏(技術統轄本部プラットフォーム開発本部本部長)、アッカ・ネットワークスの小松直人氏(WiMAX推進室 シニアエキスパート)、朝日放送の赤藤倫久氏(技術局 開発部 )
  • WiMAXについて紹介するアッカ・ネットワークスの小松直人氏
 21日、秋葉原コンベンションホールにおいて、「IPv6 Summit 2006」が開催された。ここでは、午後に行われたセッションの中から、「IPv6によるキャリアサービスの今後」について報告する。

 現在、通信事業者のネットワークは、80年代、90年代のデジタル化や携帯電話の本格普及に次ぐ、一大変革期にさしかかっている。今後進展するであろう、NGN、WiMAX/無線ブロードバンドIP再送信などの次世代サービスで、どのようにIPv6が活用されるのか、4人のパネリストを招いて、活用方法の紹介と討論が行われた

 まず、オペレーションネットワークにおいて早期の段階でIPv6に対応したNTT西日本の小林清澄氏が、同社の「フレッツ光プレミアム」について説明した。

 2002年ごろから同社ではフレッツ光プレミアムのサービスをIPv6ネットワークで順次に構築。IPv6ネットワークを導入するにあたり、「光ブロードバンドで西日本3000万人のユーザーをカバーするために、どのようなネットワーク設計をすればよいかという観点から考えた。IPv6によるエンド・ツー・エンド通信環境を実現するために、ネットワーク上で常時接続できるデザインにした点がポイント」(小林氏)

 当時BフレッツはIPv4で提供されていたが、フレッツ光プレミアムの需要にともない、ネットワークを増設する場合にはすべてIPv6対応でネットワークを構築していった。一方、TV電話などのサービスについても、可能な限りIPv6上で動作・移植できるようにしていったという。フレッツ光プレミアムのユーザーに対しては、IPv6アドレスを固定的に割り当て、ユーザー宅内までL3レベルでネットワーキングさせるために、宅内にCTU(IPv6サービス用の加入者網終端装置)を設置した。

 サービスの標準機能としては、ISP接続、TV電話、セキュリティの強化(パターンファイルのアップデート)を提供し、これらについてIPv6ネットワーク上で動作できるようにした。さらに、ストレージサービス、マルチキャストを実現するサービスなどをオプションとして用意。このサービスは2005年3月から開始し、現時点で100万強がフレッツ光プレミアムのユーザーとし加入しているという。

 IPv6のメリットは、キャリアの観点からはオペレーション面でのメリットが大きい。「特に固定アドレスで運用できるだけのアドレス空間を潤沢に持てること、さらにIPv6のアドレス体系が階層化を考慮されたものであるため、ホームネットワークの階層化アドレス管理が容易性であること、また基本的にグローバルしかないので、ユーザーのプライベートアドレスのバッティングを考慮する必要がないこと」(小林氏)などのメリットを挙げた。

 一方、これらのメリットに対して、まだいくつかの課題も残っているという。たとえば、デュアルサイト接続問題への抜本的な対応や、端末レベルでのIPv6アドレスのハンドリング(マルチプレフィックス、セキュリティ、アドレス特定手法)などについては、まだ議論の余地があるとした。また、保守ネットワークのツールの実装がIPv6化されていないため、この部分については、現時点でもIPv4のままだという。そのため、今後は均一なIPv6ネットワークでのオペレーションを目指し、コスト削減を図るという。

 続いて、KDDIの吉満雅文氏(技術統轄本部プラットフォーム開発本部本部長)が、同社が推進するNGN(Next Generation Network )に関する展開について解説。

 NGNによって実現できるサービスとして、携帯電話と固定電話の連携、携帯電話とPCの音楽連携、携帯電話と放送による行動連携(EZナビウォーク、聴かせて検索、EZチャンネルの利用)などを例に挙げ、「これら固定・携帯・放送サービスの融合させるために、サービスとアクセス手段を統合ネットワークにプラグインできるようにする方向で進んでいる」(吉満氏)と述べた。

 同社が今年発表した「ウルトラ3G」は、まさにそれを具現化したものだ。固定網とモバイル網を統合し、コスト競争力のあるインフラの構築やシームレスな連携を行うために、FMBC(Fixed Moile Broadband Convergence)サービスの提供を目指している。特にモバイル網のブロードバンド化では、アップロードとQoSについて強化していく方針だ。2006年中に導入が予定されているEV-DO Rev.Aでは、上りのピーク速度を154kbpsから1.8Mbpsまで引き上げる予定。これにより双方向のリアルタイム通信を実現する構えだ。

 吉満氏は、「Web2.0がもたらすユーザ行動の変化として、現在、個人参加型のサービスが求められている。その実現のためにはアップロードの能力が重要となる。ここでIPv6のテクノロジーが貢献できる。IPv6対応の環境であることが、アプリケーション創出を促進するためのキーポイントになる」と説明した。

 モバイルブロードバンドを推進しているアッカ・ネットワークスの小松直人氏は、同社が参入を予定しているWiMAXについて紹介した。WiMAXは、半径数キロメートルのMAN(Metropolitan Area Network)において、最大75Mbpsの無線ブロードバンドを実現できる技術だ。同社では現在、モバイルWiMAXを中心に実証実験を進めているところだが、今回のセッションではWiMAXネットワーク全体の構成を中心に解説した。

 WiMAXのネットワーク参照モデルは、足回りのアクセス回線を提供するプロバイダー「NAP」(Network Access Provider)と、サービスを提供するプロバイダー「NSP」(Network Service Provider)に大別できる。NAPのファンクションとしては、「ASN」(Access Service Network)があり、ここに基地局や、基地局を束ねるASNゲートウェイが実装される。それぞれをつなぐインターフェイスはWiMAXフォーラムで規定されている。一方、NSPのファンクションとしては「CSN」(Connection Service Network)があり、この部分に認証系の3A(Authentication、 Authorization、Accounting)、DHCP、PF(ポリシー管理)などの機能が実装される。

 さらに小松氏は、WiMAXのモビリティの一例として、ハンドオーバーに関する技術についても説明した。モバイルWiMAXのハンドオーバーでは、基地局をまたいでいくハンドオーバー(ASN Anchored Handover)とゲートウェイまでをまたいでいくハンドオーバー(CSN Anchored Handover)がある。前者では、同一のASNゲートウェイに接続されている基地局間のハンドオーバーとなるため、ハンドオーバー時の再登録は不要だが、後者ではゲートウェイ間をまたぐため、再登録が必要になる。

 ここで端末から基地局、基地局からゲートウェイ、ゲートウェイからHA(Home Agent)までは、3つの異なるL2トンネルが張られることになる。小松氏は、この部分が非常に複雑であると指摘し、「WiMAXの現時点での実装は、トンネルで数珠つなぎにされており、各ポイントでステートを持たなければならない。またターミネーションをするポイントも多くなるので、負荷分散もしにくい」とし、「コントロールプレーンが複雑になるのは仕方がないが、せめてデータプレーンだけでももう少しシンプルにあって欲しい。このような問題を解決するために、IPv6に期待している」と述べた。

 最後に、サービスプロバイダーとして、朝日放送の赤藤倫久氏が、コンテンツを配信する立場から、事例を交えながらIPv6のメリットと問題点について説明した。

 2003年ごろから、同社では夏の高校野球のインターネット中継をIPv6にも対応させた。映像コンテンツのIP伝送に関しては、「放送局内では基本的にベースバンドで伝送されているが、長距離伝送や予算の関係からプラスアルファの伝送路として、新たなIPネットワークが整備されつつある。特にIPマルチキャストを利用して、広範囲な映像分配システムがつくれるのではないかと期待している」という。

 赤藤氏は、具体的に岡山情報ハイウェイでのDVマルチキャスト実験や、愛知万博中継に向けた非圧縮HDTV over IP伝送実験などについて紹介した。非圧縮で実験しているのは、データの遅延がなく、品質も良いからだという。2006年には、プロ野球交流戦や日本女子ゴルフ選手権などのコンテンツもIPにのせている。

 今後のIP放送の課題については、「テレビは公共性の高いメディアなので、IPになっても現行の地上波テレビと同等の信頼性や品質を確保しなければならない。また、コンテンツビジネスとしての著作権の取り扱いなどを解決していく必要がある」と述べた。
《井上猛雄》
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