戸建て住宅で光10ギガ回線に加入する、愛知県愛西市在住の会社員男性・Aさんの自宅ネットワークを取材した。
契約している10G回線は、ケーブルテレビ事業者・クローバーテレビ(西尾張CATV株式会社)が提供する「ひかりインターネット ひかりハイパー」(月額5,940円税込、上下10Gbps・ベストエフォート)だ。
Aさん宅のネットワーク構成でユニークなのは、10G回線が引き込まれている2階の部屋から、アクセスポイントを介して1階のAさんの部屋までネットワークが張られている点だ。戸建て住宅では、壁を工事してまでLAN接続で1階までネットワークを張りたくない、あるいは数メートルものLANケーブルを張り巡らせたくないという人も多い。そんな人たちには、Aさんの環境はひとつのヒントになるかもしれない。
10ギガ選定の理由は「混雑対策」

Aさん宅の10ギガ導入は約2年前。もともとは同軸ケーブルによるインターネット接続を利用していたが、設備の老朽化を機にクローバーテレビから光サービスへの切り替え案内があり、その際に「1ギガコース」と「10ギガコース」から選択できたという。Aさんが選択の決め手として挙げたのは、混雑時の速度低下への備えだ。
「マックスが1ギガで混雑して速度低下するのと、マックスが10ギガで速度低下するのを考えたときに、最大10ギガの方が速度低下してもある程度維持できるかなと考えました」(Aさん)
ベストエフォート型サービスでは、時間帯や利用者数によって実効速度が変動する。1Gbpsの契約プランで大幅な速度低下が発生すれば、日常利用に支障が出るレベルまで落ち込む可能性があるが、10Gbpsからの低下であれば「低下後も1Gbps級を維持できる」という発想である。「速度が余っている状態を作っておく」ことを目的にした10ギガ契約という考え方は、単に「速いから」「新しいから」といった動機とは一線を画す、実利ベースの選定軸と言えるかもしれない。
なお、実際のヘビーユースはPCゲームのダウンロード時。ゲームプレイ自体は太い回線を必要としないが、ダウンロード時は約170MB/s(≒1,400Mbps)を常時安定して叩き出すという。
ネットワーク構成の全体像
Aさん宅のネットワーク構成は以下の通り。

前述のように10G回線は2階に引き込まれているため、ONUと親機のブロードバンドルータは2階にある。ちなみに、ケーブルテレビ局から提供されているONUは古河電気工業の「FITELwave AG30」。ブロードバンドルータはNECの「Aterm WX7200D8BE」となっている。「Aterm WX7200D8BE」はWi-Fi7対応の製品だ。ただ、この「Aterm WX7200D8BE」、WiFi7対応だが、6GHz帯には対応していない。5GHzと2.4GHzのデュアルバンドにしぼった仕様となっている。
ところが、Aさんの自室は1階にあり、そこにゲーム用PC、Mac、ゲーム機など複数が集約されている。2階から1階まで有線LANケーブルを引きたくなかったAさんは、高速回線をWi-Fiで接続することにした。つまり、1FにWi-Fiの中継機の役割を果たすバッファロー製「WXR-5700AX7S」を置いて、そこからさらに10Gのスイッチングハブを介して各PCに接続するようにしたのである。(詳細は図を参照)
なぜ親機をNEC製にしたのか?マルチベンダー構成の理由

ここで気になるのが、親機NEC・子機バッファローという異メーカー混在だ。当初はBuffaloで揃えることも検討したが、条件を満たす機種の価格がネックになったという。
「Wi-Fiの5GHz帯・アンテナ4本・WAN側10Gbps対応、という条件でバッファローの製品を探したら、一番高いモデルになってしまって手を出せなかった。同じ条件で探したらNEC製にありましたので、そちらを選びました」
高速性で選べば6GHz、到達距離で選べば2.4GHz。その中間解として5GHz帯・アンテナ4本という要件を導き出したうえで、その要件を満たす製品を横断的に比較した結果としてNECが選ばれた形だ。
ちなみに親機のLAN側インターフェイスは2.5GBASE-T/1000BASE-T/100BASE-TX(Auto MDI/MDI-X対応)。10Gbpsポートを搭載する上位モデルもラインナップにあったが、Aさんは「自分の使い方にはオーバースペック」と判断してあえて1つ下のモデルを選択している。10Gbps回線を引きつつ、宅内配線は使用機器に合わせて最適化するという冷静な判断だ。
なお、「親機と子機のメーカーが違うと接続が難しいのでは?」と質問したところ、Aさんは「マニュアル通りにやっていけば意外とすんなりつながりました」と、Wi-Fi規格に準拠していれば、異メーカーでも問題なく接続できると明かしてくれた。
元・親機を"子機"にリユース 買い替えではなく役割変更

バッファロー「WXR-5700AX7S」は、もともとAさんが親機として使用していたルーター。10ギガ環境への刷新にあたって新たな親機(NEC)を導入したが、旧親機はそのまま処分せず、中継機モード(Wi-Fi子機モード)に切り替えて子機として再活用している。
中継機を通じた通信では、親機との無線区間(バックホール)と端末との無線区間(フロントホール)が同じ電波リソースを奪い合い、スループットが半減してしまう。そのため、Aさんは中継機に無線端末を一切収容せず、バックホール専用に振り切ることでこの競合を回避している。
スマホやタブレットは親機と直接Wi-Fi接続し、PC・Mac・NAS・ゲーム機は子機→ハブ経由の有線接続。用途別に無線と有線を明確に分離する設計思想が、この構成全体を貫いている。
最大の苦労は「子機の設置場所」700Mbpsから1.4Gbpsへの改善

Aさんが「一番苦労した」と語るのが、無線LAN子機の設置位置決めだ。
当初の計画では、PCやMacを設置している自室のデスク付近に子機を置く予定だった。有線ケーブルを短くできて配線がすっきりする、というのが動機だ。しかしこの構成では、親機との距離が離れすぎて実効速度が700~800Mbpsまで低下してしまった。
「これだと10ギガを引いている意味がないと感じたので、子機を親機に近い位置に移動しました」
移動先は、2階の親機とちょうど床と天井を挟んですぐ近くの位置。階段付近を利用してWi-Fi電波の直線距離を最短化した。その結果、子機経由の速度は最大約4.8Gbps、実用域で1.4Gbpsまで改善している。
一方、子機の移動によりPC・Mac・NAS・ゲーム機からは距離が離れてしまうため、そこはCat6A・約5~6mの有線LANケーブルで10Gbpsハブに接続する形で対応。「Wi-Fi区間は最短で、有線区間は余裕を持って引く」という配線となっている。
なお、Aさんによれば「2階から1階の各部屋まで直接有線を引ければ理想だが、壁に穴を開けたり階段裏を通したりする工事が必要で、現実的でなかった」とのことだ。
NASを"ハブ直結"にする発想
もう一つ、Aさん宅の構成で目を引くのがNASのハブ直結である。一般的にはNASを無線LANルーター配下に接続するイメージが強いが、Aさんは10GbpsハブにNASを直結し、PC・Macとの通信をハブ配下だけで完結させている。
「PC・Macから NASと通信するときに、Wi-Fiを経由すると Wi-Fiがボトルネックになる。だからハブに直接つないでいます」
用途はデジタルカメラで撮影した写真データの保存、および PC・Macのバックアップ。大容量転送が発生する組み合わせを同一の10Gbpsネットワークセグメントに閉じ込めることで、Wi-Fi区間の帯域を圧迫せず、かつ最大速度を引き出せる。
スマホからNASにアクセスする際はWi-Fi経由となるが、これは閲覧目的のみで書き込みは行わないため、実用上問題ないという。
今後はWi-Fi 7子機化と、自室への直接引き込み構想
現在の構成に大きな不満はないものの、Aさんはさらなる改善策を検討中だ。
まずは子機のWi-Fi 7化。親機がすでにWi-Fi 7対応である一方、子機のBUFFALO WXR-5700AX7SはWi-Fi 6のため、いずれWi-Fi 7対応機に置き換えたい意向。親機のスペックを最大限引き出せば、子機経由の実用速度をさらに底上げできる可能性がある。
さらに、現状では親機を2階から動かせないため、自室のネットワーク環境のために別回線を契約し、別ONUを設置してエアコンの吹き出し口から光ケーブルを自室に引くという構想もあるという。ただし「1軒で2回線契約は贅沢で、なかなか手が出しづらい」とのことで実現には至っていない。
10ギガ回線が家庭に普及し始めた現在、単に契約しただけではその真価は発揮されない。Aさんの事例は、回線・親機・子機・ハブ・ケーブル選定と物理配置の総合設計が10G運用の成否を分けることを示している。












