BTSがグラミー賞へのエントリー見送りを表明し、“事実上のボイコット”として波紋が広がっている。
これを受け、グラミー賞側が公式に見解を示した。
先立ってBTSは7月29日、メンバーそれぞれのSNSを通じて、来年2月に開催される第69回グラミー賞に作品をエントリーしないと発表した。
彼らは「音楽が地域や言語で区分されるより、音楽そのものとして聴かれ、愛されることを願う」と説明した。
これは、グラミー賞が新設した「ベスト・アジアン・ポップ・ミュージック・パフォーマンス(Best Asian Pop Music Performance)」部門への事実上の抗議と受け止められている。
その宣言を受け、7月30日、グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーのハーヴェイ・メイソン・ジュニアCEOが声明を発表した。
グラミー賞CEO「分断ではなく拡張」

ハーヴェイ・メイソン・ジュニアCEOはまず、「BTSが今年のグラミー賞の選考プロセスに参加しないことを選んだと聞き、残念に思っている」としながらも、「音楽クリエイターとして、私は彼らの決定を理解し、尊重する」と述べた。
そのうえで、アジアン・ポップ部門の新設意図について、こう説明している。
「アジアン・ポップ部門は、アジアから生まれているポップ表現の深み、多様性、そして並外れた成長を称えるために作られた」
さらに彼は、この新部門の精神について「こうした重要なアーティストたちに特化したスポットライトを当てることにある」と強調した。
特に重要なのは、次の一文だ。
「部門が増えるということは、より多くのアーティストの作品が認められるということだ。それは分断するためではなく、私たち1万5000人のグラミー投票者によって認められる対象を広げるためのものだ」
つまりグラミー賞側の説明では、アジアン・ポップ部門はアジア音楽を主流から切り離すための枠ではない。むしろ、これまで十分に光が当たってこなかったアーティストを、より多くの投票者の視界に入れるための拡張だという立場だ。
もう一つ、グラミー賞側が強く否定したのは、「アジア枠に入れられることで、本賞から遠ざけられるのではないか」という疑念だ。
ハーヴェイ・メイソン・ジュニアCEOは、「非常にはっきりさせておきたい」と前置きしたうえで、こう述べている。

「アジアン・ポップ、あるいはジャズやカントリーのようなジャンル部門に楽曲を提出することは、そのアーティストが『年間最優秀レコード』『年間最優秀アルバム』『年間最優秀楽曲』を含む主要部門に提出し、審査対象となることを排除するものではない」
さらに、「それらの部門は、ジャンルに関係なく、資格を満たすすべての録音作品に開かれている」とも説明した。
そして「ジャンル部門で認められることと、主要部門で認められることは、相互に排他的なものではない。アーティストは、その両方を当然追求することができる」と明記した。
これは、韓国で出ていた批判への明確な反論だろう。アジアン・ポップ部門ができたとしても、BTSやK-POPアーティストが「年間最優秀レコード」や「年間最優秀アルバム」といった主要部門から締め出されるわけではない、という説明だ。
それでも残る“アジア枠”への違和感
ただし、この声明によってすべての違和感が解消されたとは言い切れない。
なぜなら、グラミー賞側が説明したのは、あくまで「制度上は主要部門にもエントリーできる」という点だからだ。一方でBTSが投げかけたメッセージは、もう少し根本的なところにある。
そもそもBTSは「主要部門に出せない」と訴えたわけではない。彼らが掲げたのは、「音楽が地域や言語で区分されるより、音楽そのものとして聴かれ、愛されることを願う」という言葉だった。
つまり問題は、エントリーできるかどうかだけではない。アジア発の音楽を、あらためて「アジア」という地域名でくくること自体への違和感だ。
グラミー賞側は「分断ではなく拡張」と説明する。しかしBTS側の声明から見えるのは、その“拡張”が同時に“線引き”にも見えてしまうという現実だ。

K-POP、J-POP、C-POP(中国)は、言語も市場も制作システムも異なる。それらを「アジアン・ポップ」として一つの部門にまとめることは、評価の場を増やす一方で、主流部門とは別の枠に置く行為にも映る。
今回の声明は、グラミー賞側にとって、広がる疑念を抑えるための説明でもあった。アジアン・ポップ部門は“排除”ではなく、より多くのアーティストを認めるためのものだという説明だ。
だが、その説明は同時に、BTSが投げかけた問いの大きさを浮き彫りにしたともいえる。
いま問われているのは、BTSがグラミー賞にエントリーするかどうかだけではない。グラミー賞がK-POPを、どの場所で、どのように評価するのかという問題ではないだろうか。
BTSは、グラミー賞に選ばれることを待つ側から、グラミー賞の枠組みそのものに問いを投げる側へと立場を変えた。だからこそ、グラミーCEOが自ら声明を出したことの意味は小さくない。
「分断ではなく拡張」というグラミー賞側の言葉は確かに明確だ。それでもなお、“アジア枠”という言葉が残す違和感は消えていない。
K-POPはグラミー賞の中心に近づいたのか、それとも中心の外側に新しい枠を設けられたのか。BTSが投げかけたその問いへの回答としては、まだ十分とは言い切れない。
グラミー賞CEOの公式立場全文は、以下の通り。
◇
BTSが今年のグラミー賞の選考プロセスに参加しないことを選んだと聞き、残念に思っています。しかし、音楽クリエイターとして、私は彼らの決定を理解し、尊重します。
ただ、この議論のなかで見失われているように思える点について、明確にしておきたいことがあります。
アジアン・ポップ部門は、アジアから生まれているポップ表現の深み、多様性、そして並外れた成長を称えるために作られました。この新部門の精神は、こうした重要なアーティストたちに特化したスポットライトを当てることにあります。
部門が増えるということは、より多くのアーティストの作品が認められるということです。それは分断するためではなく、私たち1万5000人のグラミー投票者によって認められる対象を広げるためのものです。
また、非常にはっきりさせておきたいことがあります。
アジアン・ポップ、あるいはジャズやカントリーのようなジャンル部門に楽曲を提出することは、そのアーティストが「年間最優秀レコード」「年間最優秀アルバム」「年間最優秀楽曲」を含む主要部門に提出し、審査対象となることを排除するものではありません。
それらの部門は、ジャンルに関係なく、資格を満たすすべての録音作品に開かれています。ジャンル部門で認められることと、主要部門で認められることは、相互に排他的なものではありません。アーティストは、その両方を当然追求することができます。
グラミーという組織は、音楽と、それを作るすべての人々に奉仕するために存在しています。私たちは、地域や言語にかかわらず、会員構成と賞の届く範囲を広げ続けていくなかで、世界の音楽コミュニティの声に耳を傾け続け、世界を動かす音楽を生み出すすべてのアーティストを称え、祝福するために取り組んでいくことを強調したいと思います。
ハーヴェイ・メイソン・ジュニア
グラミー賞CEO
■BTS、グラミー賞を事実上“ボイコット” 韓国メディアはどう見たか



