韓国・ソウルの蚕室(チャムシル)一帯で続く選挙をめぐる混乱が、K-POPや大型フェスの現場にまで影を落としている。
直近では、6月20、21日に日本の人気バンドKing Gnuの来韓公演が予定されている。
さらに7月には、東方神起・ユンホやバンドN.Flyingらの公演も予定されており、韓国の公演業界では“追加被害”への懸念が強まっている状況だ。
選挙をめぐる抗議が、なぜ音楽フェスや企業イベント、アイドルの公演にまで影響するのか。そう思う人も少なくないだろう。
だが実際に、6月20~21日に開催予定の「ソウルパークミュージックフェスティバル」は、急きょ会場変更を余儀なくされた。
BTSらを擁する芸能事務所HYBEもWeverse Con関連イベントで予定していた会場活用を取りやめ、大手ゲーム会社NEXONも『メイプルストーリー』のショーケース会場を変更した。
大型フェスが分散して運営へ
政治的な抗議の長期化が、エンタメの現場を物理的に止め始めている。

問題の中心にあるのは、蚕室のソウル・オリンピック公園のチケットリンクライブアリーナ(ハンドボール競技場)周辺で続く「開票所封鎖」状態だ。
東京ドーム約30個分に相当するオリンピック公園の中には、KSPO DOME、チケットリンクライブアリーナ、ウリ金融アートホール、88芝生広場、88湖水水辺ステージなど複数の公演・イベント施設がある。
そもそもの発端は、6月3日に行われた地方選挙で発生した投票用紙不足問題だった。ソウルの一部投票所で投票用紙が足りなくなり、有権者が長時間待機したり、投票できなかったりする事態が起きたことで、選挙管理への批判が高まった。
この問題をめぐり、不正選挙を主張する市民や保守系ユーチューバーらが、オリンピック公園一帯に集まり、抗議を続けている。特に、開票所として使われたチケットリンクライブアリーナの周辺では出入りの制限が長期化し、会場利用や機材搬入にも支障が出ている。
その影響は、すでにスポーツ界にも及んでいる。韓国フェンシング協会が同競技場に事務所を置いているため、フェンシング韓国代表のオ・サンウクらは個人装備を持ち出せないまま国際大会へ向かったと報じられた。
混乱はスポーツ界だけの問題ではない。エンタメ業界も直撃を受けている。
6月20~21日にソウル・オリンピック公園で開催される予定の「ソウルパークミュージックフェスティバル」は、当初、88芝生広場とチケットリンクライブアリーナを会場にして行われる予定だった。
しかし、オリンピック公園で続く抗議の影響により、チケットリンクライブアリーナを使用できなくなった。主催側は急きょ、88湖水水辺ステージとウリ金融アートホールに公演会場を分散して運営することを決めた。

主催会社BEPCタンジェントのキム・ウンソン代表は6月17日、公式アカウントを通じて「突然の変更のお知らせにより混乱と不便をおかけした点をお詫びする」と謝罪した。さらに「オリンピック公園ハンドボール競技場を使用できなくなるという予想外の状況が発生し、私たちも突然これを知らされた」と説明している。
一部アーティストの公演場所や出演順、タイムテーブルも調整された。主催側は、公演を縮小するためではなく、予想外の状況の中でもできる限り正常に開催するための不可避な選択だったとしている。
ただ、会場変更による影響は小さくない。チケットリンクライブアリーナよりも、ウリ金融アートホールや水辺ステージの収容規模は小さい。主催側は会場変更後、追加チケット販売を行っていないと説明しているが、観客の不満は続いている。
会場が分散されたことで、一部アーティストの公演時間が重なり、観覧動線やスケジュールにも支障が出たためだ。今年のソウルパークミュージックフェスティバルには、JANNABI、Silica Gel、MONSTA X、10CM、パク・サンダラらが出演する予定であり、ファンにとっては大きな混乱となっている。
“公演大乱”が起きる懸念も
影響は、他のエンタメイベントにも広がっている。
先立ってHYBEは6月6~7日に開催したWeverse Conで、ファンの休憩スペースとして計画していたライブアリーナの貸館を断念。NEXONも6月13日に予定していた『メイプルストーリー』のショーケース会場を、京畿道高陽市のKINTEXに変更している。
韓国大衆音楽公演産業協会は6月16日、今回の事態について「公演会場周辺への出入りや機材の搬入が阻まれており、公演準備全体が揺らいでいる」と訴えた。

そもそも公演は、当日だけのイベントではない。機材搬入、ステージ設営、音響・照明の調整、リハーサルなど、何日も前から準備が積み重ねられる。会場周辺への出入りや機材搬入が滞れば、公演準備は一気に崩れる。予定通りに開演できるかどうか以前に、ステージを組むこと自体が難しくなるのだ。
同協会は、こうした状況が続けば公演場の運営が事実上止まる“シャットダウン”につながりかねないとして、早期正常化を求めている。
しかも、不安は目前の公演にも及ぶ。
6月20、21日にはKing Gnuの来韓公演が、同じオリンピック公園内のKSPO DOMEで予定されている。抗議活動の中心となっているチケットリンクライブアリーナとは別施設だが、公園一帯で混乱が続く以上、動線や機材搬入、観客の安全管理に不安が残る。
7月以降は、さらに懸念が直接的だ。チケットリンクライブアリーナでは、歌手パク・ソジン、東方神起のユンホ、N.Flyingのコンサートが控えているからだ。こちらは抗議活動の影響を直接受けている施設での公演となるため、事態が長期化すれば追加被害は避けられないとの見方も出ている。
韓国メディアでは、7月に“公演大乱”が起きる可能性まで指摘されている。

現場の緊張感も高い。開票所封鎖をめぐる抗議が続くハンドボール競技場付近では、自傷騒動や暴行事件も報じられた。警察の非公式推計では、現場には約2000人の集会参加者が集まっていたという。
韓国政府は、強硬対応の方針を示した。キム・ミンソク国務総理は「不法行為に対しては一罰百戒の次元で断固として対応する。他人の権利を侵害することは、決して正当化できない」と強調した。
もちろん、投票用紙不足問題そのものは軽視できない。選挙で投票用紙が足りなくなり、有権者が投票に支障をきたしたのであれば、それは民主主義の手続きに関わる重大な問題だ。選挙管理への批判や問題提起には、当然耳を傾ける必要がある。
しかし、その抗議が長期化し、無関係の観客、主催者、アーティスト、企業イベントにまで実害を及ぼしているのであれば、話は別だ。
政治の混乱が、もはや政治の中だけに収まっていない。
蚕室の“封鎖デモ”は、K-POP、フェス、ゲームイベント、海外アーティストの来韓公演を巻き込み、韓国の文化インフラそのものを揺さぶっている。
■キムタクも中島健人もCUTIE STREETも韓国へ 韓国市場を取りに行く時代に



