「引退してから12年が過ぎたので、ほぼ一般人の体だ」と本人は言う。
だが、それを見た人々の反応はまったく違った。
「どこが一般人なのか」「一般人のハードルが高すぎる」「そのレベルで一般人なら自分は何なのか」といった、ユーモラスな反応が続いた。
キム・ヨナが久しぶりに見せた“動く身体”は、引退から12年を経た今なお、あまりにもキム・ヨナだった。
美しき背筋、女王の貫録
今回話題を集めたのは、キム・ヨナがサン=サーンスの『死の舞踏』をバレエ振付で再解釈したキャンペーン映像だ。「イルカ誘拐団」のシン・ウソク監督が演出を務めており、フルバージョンも公開された。
かつて自身の象徴的なショートプログラムとして知られた『死の舞踏』を、今度は氷上ではなくバレエという形式でよみがえらせた。
しかもプロジェクトにはグーグルの生成AI「Gemini」も使われ、振付構成や動線設計、舞台デザイン、衣装の再解釈まで、技術と芸術の融合がうたわれた。いかにも現代的で、華やかな企画だ。
だが、実際に映像を見た多くの人が驚いたのは、AIよりもキム・ヨナ本人だった。

引退から12年。本人は「20年近くフィギュアをやってきたが、引退してから12年もたっているので、ほぼ一般人の体だと思えばいい」と率直に語った。さらに、フィギュアとバレエは厳然と異なるジャンルであり、期待されるほど再現できるか不安だとも話している。かなり控えめな自己評価だ。
しかし映像の中のキム・ヨナは、“ほぼ一般人”どころではなかった。
無駄のない動線、決然とした目線、安定したバランス感覚、しっかり保たれた背中のライン、そして余計な誇張のない表現力。現役時代のジャンプやスピンは当然ない。だが、それでも画面を支配する空気の質が、やはりキム・ヨナだった。
バレリーナに変身したというより、キム・ヨナという表現者が、たまたま今回バレエという形式を借りただけのように見えたのだ。
そこが、この企画の本当のおもしろさだろう。普通なら、元フィギュア女王の“新たな挑戦”として消費されるところだ。だが今回見えたのは、挑戦そのもの以上に、競技を離れても消えない身体の記憶だった。
フィギュア選手として鍛え上げられた身体は、引退したからといって簡単に白紙には戻らない。少なくとも、今回の映像はそう感じさせなかった。氷の上を離れても、姿勢、目線、重心の置き方、動きの終わり方の一つひとつに、かつての“女王”の名残が宿る。

だから観客は、バレエを見ながらも「やはりキム・ヨナだ」と感じてしまうのだ。
実際、キム・ヨナは引退後もずっと韓国を代表するスターであり続けてきた。広告やイベント、各種の公的な場で、その名前は常に特別な重みを持ってきた。だが、それはどちらかといえば“キム・ヨナという象徴”としての存在感だった。
今回の企画が特別に映るのは、そうした象徴性だけではなく、久々に“身体で語るキム・ヨナ”が前面に出てきたからだ。人々が驚いたのは、美しかったからだけではない。彼女は今も、身体そのもので見る者を納得させられる。その事実に驚かされたのだ。
実際に動画には「背筋がすごい」「まだこんなに動けるのか」「本当に引退から12年なのか」といった反応が寄せられていた。AI技術が使われているからこそ、なおさら人が持つ身体の美しさが際立つ。その意味でも、今回の映像は興味深い。
競技を離れて12年が過ぎてもなお、身体そのものが“キム・ヨナ”というブランドであり続けている。キム・ヨナはキム・ヨナなのだ。
◇キム・ヨナ プロフィール
1990年9月5日生まれ。韓国・京畿道出身。身長164cm。元フィギュアスケート選手。2010年バンクーバー五輪金メダル、2014年ソチ五輪銀メダル、2009年と2013年の世界選手権優勝など、輝かしい成績を残し、韓国では“フィギュア女王”と呼ばれる。2014年2月に引退。引退後も高い人気を誇り、数多い人気女優を押さえてCM女王として君臨している。フィギュアスケート選手の強化・育成活動を続けており、ボランティア活動や寄付活動にも積極的だ。2022年10月、「Forestella」のメンバーであるコ・ウリムと結婚した。
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