たびたび議論の的となる、韓国芸能人の空港における“過剰警護”問題。
最近も、ガールズグループHearts2Heartsの警備が物議を醸した。
仁川国際空港に現れたメンバーを警備員たちが取り囲み、互いに手をつないで円陣を組むように移動する様子がSNSで拡散された。この巨大な“人間バリケード”が一般客の動線を完全に塞いでいたことから、「公共の空間を私物化している」との批判が相次いだ。
しかし、こうした騒動は彼女たちに限った特異な例ではない。韓国芸能界では、空港警備のあり方を問うトラブルが、これまで幾度となく繰り返されてきた歴史がある。
法的責任が認められた「異例の判決」

近年の事例で、業界に最も大きな衝撃を与えたのが俳優ビョン・ウソクのケースだ。
2024年7月、香港へ向かう仁川国際空港のラウンジで、ビョン・ウソクの警備員が一般客に向けて強力なフラッシュライトを照射し、撮影を妨害したことが発覚した。さらに、警備員が空港ゲートを一時封鎖し、一般客に航空券やパスポートの提示を強いたことまで明らかになり、その「越権行為」に非難が集中。
この問題は最終的に司法の場へと持ち込まれた。2025年10月、仁川地裁は警備業務の範囲を著しく逸脱したと断じ、警備員と警備会社に対しそれぞれ罰金100万ウォン(約10万円)の判決を言い渡した。芸能人の警備をめぐり法的責任が認められたこの判決は、過剰警護に歯止めをかける象徴的な事例として記憶されている。
脳震盪に骨折も

法的議論が加速する一方で、現場では肉体的な衝突による実害も後を絶たない。
ビョン・ウソク事件の直前となる同年6月には、金浦国際空港でボーイズグループCRAVITYの警備員による暴行疑惑が浮上。被害を訴えたのは10代の女性ファンだった。
彼女は頭部を殴打されたとして、病院で脳震盪との診断を受けたことをSNSで告発。事件はテレビニュースでも大々的に報じられ、所属事務所のSTARSHIPエンターテインメントが公式謝罪し、該当の警備会社との契約を即座に打ち切る事態へと発展した。
さらに遡れば、より深刻な人身事故も起きている。2023年にNCT DREAMが仁川国際空港を利用した際、警備員に強く突き飛ばされた女性ファンが転倒し、肋骨を骨折する全治5週間の重傷を負った。この件では、警備員が業務上過失致傷の疑いで立件され、検察に送致されるという刑事事件にまで発展している。
なぜ、これほどまでに空港での過剰警備は繰り返されるのか。

もちろん、現場の警備側にも抗いがたい事情がある。その背景にあるのは、一部の過激なファン、いわゆる“サセン”の存在だ。アイドルを至近距離で捉えようと全力で疾走し、時には身体に触れようと迫る行動は、一歩間違えればドミノ倒しのような大惨事を招きかねない。
韓国の主要空港では、芸能人の出入国情報が瞬時に拡散され、時には数百人規模の群衆が押し寄せる。公共空間における混乱を未然に防ぎ、パニックを回避することは、警備員にとって避けては通れない最優先任務でもあるのだ。
結局のところ、韓国の空港警備は「芸能人の安全確保」と「一般利用者の公共性」という、相反する要素の間で常に綱渡りのようなバランスを強いられている。
過剰警備が批判の矢面に立つ一方で、ファンの逸脱した行動もまた、悲劇的な事故の引き金となり得る。この根深い問題は、単なる管理体制の不備だけでなく、スターを追いかける側のマナーをも含んだ、歪な構造の中に横たわっている。



