ファミリーマートでは、大谷翔平選手のアンバサダー起用以降、おむすびカテゴリーが急速に伸長しており、3月のキャンペーン開始1週間で累計300万個を突破、3週間で累計922万個に達したという。こうした追い風の中、老舗おにぎり専門店「おにぎり ぼんご」監修の新商品が新たに登場した。このおにぎり、これまでのコンビニおにぎりとは明らかに違う“ふんわり感”が印象的だった。
老舗専門店「ぼんご」が監修、新シリーズが登場

今回のコラボレーションに参加した東京・大塚の「おにぎり ぼんご」は、創業60年以上続く老舗のおにぎり専門店だ。寿司屋のようにカウンター越しで注文を受け、その場で1つ1つやさしく丁寧に握るスタイルが特徴で、“握らず包む”ことで生まれるふっくらとしたおにぎりが支持されてきた。55種類を超える豊富な具材ラインナップも魅力のひとつだ。
女将の右近由美子氏は、ファミリーマートが実施した新商品の発表会で「ふっくらとした食感が美味しいおにぎりだと思っている。ぼんごでは極力握らないことを意識している」と語り、その哲学が今回の新商品にも色濃く生きている。
専門店の哲学を機械化した「ふわうま製法」

新商品では、こうした握らない発想を工場レベルで再現する新成型技術「ふわうま製法」を採用している。お米とお米のあいだに空気を抱き込むことで、同じ重量でも大きく見え、口に入れたときにほどけるような食感を実現できるのが特徴だ。ファミリーマートはこれまで約20億円を投じて新型成型機を導入し、手巻おむすびから順次展開してきたが、今回その技術を「ごちむすび」と「直巻おむすび」にも広げた。
ぼんご流を反映した贅沢仕立ての「ごちむすび」


「ぼんご監修 ごちむすび いくらと秋鮭」(320円)は、ぼんごで人気No.1の「すじこ+さけ」をアレンジした品だ。アラスカ産マスイクラの醤油漬けと北海道産秋鮭のほぐし身を組み合わせ、魚卵系として過去最大級の具材比率に仕上げた。右近氏は「温かいご飯にいくらを包むと皮が破れてしまい難しかったが、この機会に挑戦したかった」と開発背景を明かした。実際に食べてみると、ふわっとほどけるご飯の中にいくらのプチっと弾ける食感が加わり、秋鮭のほぐし身と一緒に広がる旨みの一体感が印象的だ。魚卵の塩味が強すぎず、全体が優しくまとまっている。


「ぼんご監修 ごちむすび 牛そぼろと卵黄ソース」(税込275円)は、国産黒毛和牛をスライスとミンチのダブルで使用し、ぼんごの人気組み合わせ「卵黄+肉そぼろ」をアップデートしたもの。濃厚な卵黄ソースが肉の旨みを引き立て、ご飯との一体感が高まる。右近氏は「期間限定で出した黒毛和牛そぼろがとても好評だったので提案した」と語る。こちらは、黒毛和牛ならではの甘みと旨みに卵黄ソースのまろやかさが重なり、噛むほどに味が広がっていく。ふんわりしたご飯との相性が良く、全体のバランスがとても良い。
直巻おむすびも“ふわうま化”

中価格帯を担う直巻おむすびも、ふわうま製法の導入によって軽やかな食感へと刷新された。「直巻 高菜と明太子」(189円)は、炒めた高菜の香ばしさと明太子のプチっとした食感を組み合わせた商品。最初のひと口でごま油のきいた高菜の風味が立ち上がり、ふわっとほどけるご飯が明太子の存在感を引き立てる。濃い味の具材ながら、食感が軽い分あと口は重くなりにくい。
「直巻 サーモンマヨネーズ」(198円)は、ダイス状のサーモンとペースト状の鮭トロを組み合わせ、上からマヨネーズをトッピングした構成。異なる食感のサーモンがふわっとしたご飯の中でほどけ、マヨネーズの酸味が後味をまとめてくれる。最後まで飽きずに食べ進められるよう工夫された一品だ。
価格帯別で役割を分け、幅広い客層へ
ファミリーマートでは、おむすびカテゴリーを価格帯ごとに役割分担させることで、幅広いニーズに応える戦略を取っている。ファミリーマート 木内智朗氏は、「中価格帯には定番商品を、低価格帯にはのりなしや混ぜ込みなど手軽さを求める層に向けた商品を展開している。様々な客層に提供していきたい。」と説明した。今回のぼんご監修ごちむすびは、その中でも具材の満足感を重視した高価格帯を担う存在であり、専門店コラボレーションによってちょっといいおむすびを選びたいというニーズに応えるポジションづくりが進んでいる。木内氏は「コンビニ界の新次元に突入したおにぎりに期待してください」と意気込む。
大谷選手のアンバサダー起用によるいわゆる“大谷売れ”の後押しはもちろん、高価格帯の専門店コラボレーションや価格帯別のラインナップ戦略など、さまざまな施策が重なっていく中で、その中心にあるのは新成型機による「ふわうま製法」だろう。専門店が手作業で行ってきた“空気を入れる”という繊細な技を、マシンによって安定して再現できる時代に入り、おにぎりの新次元は、マシンの新次元でもあるようだ。









