韓国サッカー代表のキャプテンであり、イングランド・プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーに所属するソン・フンミンが、私生活に関わるスキャンダルに巻き込まれ、“模範的アスリート”として築いてきたクリーンなイメージに大きな打撃を受けている。
これまで誠実で爽やかな印象から国民的支持を受け、アイスクリーム、シェーバー、通信会社、ラーメン、マッサージチェア、ハンバーガーなど、ジャンルを問わず多数の広告モデルを務めてきたソン・フンミン。だが、かつての恋愛トラブルでブランド価値にまで影響が及ぶ可能性が出てきてしまった。
これまで熱愛報道がなかったわけではない。2014年にGirls Dayのミナの交際説が提起されたこともあれば、2015年にはAFTERSCHOOL出身のユ・ソヨンとの熱愛説あった。2022年には女優キム・ゴウンと噂になったこともある。
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ただ、今回は熱愛説や破局報道などではなく、元交際相手と名乗る女性から脅迫されていたというのだからかなりショッキングだ。
事件が明るみに出たのは5月7日、ソン・フンミン側が元交際相手を恐喝容疑で警察に告訴したことがきっかけだった。
ソウル江南(カンナム)警察は5月14日夜、20代の女性A氏と40代の男性B氏を逮捕し、翌5月15日にソウル中央地裁に拘束令状を請求。5月17日には裁判所が「証拠隠滅および逃亡の恐れがある」として、両名に対する拘束を決定した。
A氏は昨年6月、胎児の超音波写真をソン・フンミンに送りつけ、「妊娠を暴露する」と脅して約3億ウォン（約3,400万円）を受け取った疑いが持たれている。その後、妊娠を公表しないとする趣旨の覚書を作成していたとされる。
さらに、A氏と交際していたとされるB氏が今年3月にソン・フンミン側に7,000万ウォンを要求したが未遂に終わったという。
A氏は5月17日、拘束中のまま裁判所に出廷。トレーニングウェア姿で取材規制ラインに姿を現し、報道陣から「恐喝を認めるか」「まだ妊娠を主張しているか」「ソン・フンミンに伝えたいことはあるか」といった質問には無言を貫いた。
警察は押収したA氏らの携帯電話などを基に、超音波写真の真偽を含めた事実関係を詳しく調査していくそうだが、今回の事件は徹底した自己管理とスキャンダルのない生き方で“欠点のない選手”と評されてきたソン・フンミンのイメージを大きく揺るがすものとなった。
しかも、このニュースは韓国国内にとどまらず、イギリスのガーディアン紙やアメリカのCNNなど、主要海外メディアも大きく報道。日本のヤフーでもトピックスとして大きく取り上げられていた。国際的にクリーンなイメージで知られていたソン・フンミンだけに、ファンやメディアの反応も戸惑いを隠せない感じだろうか。
さらにタイミングの悪さも事態の深刻さを増している。ソン・フンミンは足の負傷による1カ月の戦線離脱を経てようやく復帰したばかりであり、トッテナムが2008年以来となるタイトル獲得を目指すヨーロッパリーグ決勝を目前に控えている。
加害者の調査は進行中だが、事件の詳細が世間に広まった今、ソン・フンミンは選手としてのキャリアとは関係のない部分で、世間の注目を浴びることになってしまったわけだ。
しかも、韓国では裁判所に出廷したふたりの扱い方に関しても賛否が出ている。A氏は帽子もかぶらず、マスクだけで顔を隠し、手錠に縛られた姿が露出された。A氏は黒い板で顔を隠そうとしたが、同行していた警察官に制止され、それを取り上げられた。
こうした状況に一部では、まだ有罪が確定していない「被疑者」の身分である以上、人権保護の観点から顔の露出や過度な演出は控えるべきだったという声が上がっているのだ。
「凶悪犯罪者でさえ帽子やマスクを支給されて顔を隠しているのに、拘束の可否すら決まっていない女性被疑者をまるで生中継のように露出させるのはやりすぎだ」との批判もある。「人権保護は容疑の有無にかかわらず保障されるべきであり、刑が確定するまでは人権保護が優先される」という刑事手続きの原則や法的常識が無視されたという指摘が出ている状況だ。
一方で、「数億ウォンを脅し取った重大な犯罪の被疑者に人権を持ち出す必要はない」とする反論も根強く、「すべての犯罪者の身元を公開すべきだ」とする強硬論も存在する。
いずれにしても品行方正で見た目もスマートなことから、韓国の国民的ヒーローとして人気と信頼を集めてきたソン・フンミン。被害者であるが、そのイメージにダメージを負ってしまったのだから、まさに「泣き面に蜂」だろう。
文=慎 武宏
