「ゴールデングローブ賞」も主演女優賞獲得なるか?『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』 | RBB TODAY
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「ゴールデングローブ賞」も主演女優賞獲得なるか?『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』

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ディズニープラスのスターで配信中『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』© 2022 Disney and related entities
  • ディズニープラスのスターで配信中『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』© 2022 Disney and related entities
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 映画『ソーシャル・ネットワーク』や『スティーブ・ジョブス』といったスタートアップ企業CEOの伝記ものや、映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』やドラマ『令嬢アンナの真実』といった世界を股にかけた実在詐欺師の物語は、本当にこんなことが繰り広げられていたのかと驚いてしまうほど、ドラマティックかつスリリングで面白い。

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 さて、その2つの要素がかけ合わさったドラマ『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』(ディズニープラスのスターで配信中)はというと、期待を上回る作品だった。(以下、ネタバレあり)

「第2のジョブス」ともてはやされていた詐欺師



ディズニープラスのスターで配信中『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』© 2022 Disney and related entities


 本作は、ABCで配信された同名ポッドキャストをもとに制作された、伝記犯罪ドラマのミニシリーズ。医療ベンチャー企業「セラノス」の元CEOエリザベス・ホームズの、億万長者になることを渇望していたティーンエイジャー時代から、“とある秘密”が明るみになるまでの半生が描かれている。

 2003年、ホームズは大学2年生の時にスタンフォードを中退し、少量の血液で数百種以上の血液検査を迅速かつ安価にできる血液分析装置「エジソン」で起業。大物投資家たちを巻き込み巨大化していった「セラノス」、そしてシリコンバレーでのし上がった若い女性の姿は注目を集めていき、同社は2014年6月時点で時価総額1兆円に到達したと言われ、ホームズは「自力でビリオネアになった最年少の女性」に。時代の寵児として、数々の経済誌の表紙も飾っていた。

 彼女は大学進学前の中国留学では語学学習に熱心に取り組み、大学滞在中も化学工学科で勉学にのめり込むなど、とにかく勤勉な学生だったが、その欠点は、過剰な野心だった。自身を憧れのスティーブ・ジョブスに重ね合わせ、とにかく早く成功を掴もうとしたことで、人生の歯車が狂い出していく。注射が苦手だったこともあり前述の技術を考案するのだが、その元々の目的は、人々が病気を早期発見できるようにすることだった。ドラマでは、彼女がその奉仕精神を徐々に失い、私欲にひた走るモンスターと化していく様を順に追っている。

手段と目的が入れ替わり暴走していく野心家



ディズニープラスのスターで配信中『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』© 2022 Disney and related entities


 ホームズは起業後、一度だけ「エジソン」の起動に成功するも、その後は失敗が続く。当然、経営が危うくなってしまい、プレゼンデモンストレーションでデータを捏造して発表。資金調達には成功するが、ホームズとその周囲の人々は、その時より秘密に振り回される人生へと陥っていく。しかし、引き続き研究を重ねるも全く前進せず、投資家たちの追求を誤魔化し続けるホームズは、最終的にCEO退任を迫られてしまう。ここで素直に従えば、“世紀の詐欺師”という不名誉な称号は得られなかっただろう。ただ、この時点でホームズの目的は変化していた。中国留学時代に知り合い、交際へと発展していたサニー・バルワニをCOOとして迎え入れることで、そのまま自身の地位を護り抜くことを選んだのである。これが第3話までのストーリーだ。

 “地位を最大化させる”目的に目覚めてしまったホームズは、黒いタートルネックに黒いパンツの象徴的なスタイル、不自然な低い声を使った話し方へと変化。使命に燃える研究者が集うアットホームな企業も、音楽を聴いてご機嫌に踊る愛らしいホームズの姿も、すっかり過去のものに。ホームズは、相変わらず「エジソン」が全く機能しないまま、さらなる投資家たちを巧みに引き込んでいき、バルワニと共に秘密を守ることに全力をかけていく。第4話目以降は、そんなホームズと、彼女の嘘を暴こうとする善良な人々の攻防が繰り広げられていく。

ディズニープラスのスターで配信中『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』© 2022 Disney and related entities


 最終話、遂に秘密が公になり、「セラノス」の未来は絶たれる。それにも関わらず、ホームズはこれまで以上にない喜びに満ちた表情で法務社員の元に現れる。それは、「恋人ができたから」という、周囲が拍子抜けしてしまう理由だった。その後、一人になった際に雄叫びを上げるのだが、これは“自身が転落したこと”への怒りを露わにしただけだろう。身近な人々を苦しめ、「セラノス」を信じて被害に遭った人たちがいるのにも関わらず、彼らに対する罪悪感が一切ない様子が描写されており、心底ゾッとしてしまった。ホームズは去る11月18日、禁錮11年の有罪判決を受けている。上訴すると報じられているが、改めて自身と向き合い、しっかりと罪を償ってほしいところだ。

ホームズに裏切られた人たち



ディズニープラスのスターで配信中『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』© 2022 Disney and related entities


 全10話と短いドラマだが、登場人物は意外と多く、それほど彼女に傷つけられた人が多かったということが伺える。「セラノス」初期メンバーの中心人物で、プライベートな時間を削って開発に勤しむも、ホームズの非人道的なやり方に苦言を呈したことでお払い箱にされてしまったエドモンド・クー。同じく初期メンバーの主任科学者で特許取得の開発者=キーマンだったが、ホームズに対する裁判への証言協力義務と、「セラノス」と締結していた秘密保持契約で身動きが取れなくなり、最終的に自殺に至ったイアン・ギボンズ。「セラノス」の従業員となった孫タイラー・シュルツの内部告発に耳を傾けず、家族との関係が崩壊してしまった大物政治家ジョージ・シュルツ。タイラーと共に内部告発を行なってクビとなり、生活が脅かされてしまったエリカ・チェンなどー。彼らが真実に触れようとした時、ホームズは一転、人の尊厳や死を踏みにじってまで保身に走るようになり、それゆえ「セラノス」は、徹底した秘密主義の不気味な会社体制ができあがってしまったことが分かる。

 もちろん、ホームズの言動は許されるものではないことは大前提だが、このドラマが優れていたのは、フラットな視点にもあると思う。ホームズに肩入れするわけでなく、また彼女の嘘を暴こうとする人たちが完全なる善人ではないともまとめている。「特許申請に長けている“同業者”なのに何も相談がなかったから」という理由で、「エジソン」を利用する上で必要な特許を先回りして取得し、ホームズの快進撃を阻む隣人のリチャード。学生時代のホームズに「起業は早すぎる」と苦言を呈するもアドバイスを受け入れられず、いざホームズを怪しむ人物が現れたら、嬉々として証拠集めに勤しむようになるスタンフォード大学医学部教授のフィリス・ガードナー。彼らは正義の盾をして、“嫉妬”や“妬み”といった個人的な感情を持って動いていたように思えてならなかった。

 また、ホームズの主観的な視点でまとめず、2000年代の前向きなメッセージ性のヒット曲のBGMやiPhone販売といったシリコンバレー史の明るい情報も盛り込んでいたので、こういった伝記ものにある“追い詰められていく苦しさ”の追体験をせずに済むのも良かった。少し構えて視聴ボタンを押したが、ビンジウォッチしてもあまり精神的負担に陥ることはないので安心してほしい。

主演アマンダ・セイフリッドの演技力が光る作品



ディズニープラスのスターで配信中『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』© 2022 Disney and related entities


 しかし、何といっても特筆すべきは、主演のアマンダ・サイフリッドだ。野心的ながら純朴さを持ち合わせていた少女が、偽りの成功を守るためにいかなる手も厭わない悪人へと堕ちていくホームズの姿を見事に演じ切っている。特に彼女の特徴である美しく大きな“目”を活かした演技が印象的で、何か“秘密”があるか尋ねられた時の表情は忘れ難い。30歳の誕生日パーティーで自身の顔写真をプリントしたお面やクッキーを配り、部下に自身を称賛するオリジナル楽曲を繰り返し演奏させる時の自己陶酔しきった“目”も、末恐ろしかった。

 同作は、現地時間1月10日(火)に開催される「ゴールデングローブ賞」にて、「テレビ部門 作品賞(リミテッドシリーズ アンソロジーシリーズ・テレビムービー部門)」「テレビ部門 主演女優賞(リミテッドシリーズ アンソロジーシリーズ・テレビムービー部門)アマンダ・セイフライド」の2部門にノミネートされている。「テレビ部門 主演女優賞」には、奇しくも、同じく実在の詐欺師を題材にした『令嬢アンナの真実』で主演を務めたジュリア・ガーナーもノミネート。「エミー賞」ではセイフライドに軍配が上がったが、今回の賞レースも勝ち抜くのか、注目したいところだ。

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■筆者プロフィール
山根由佳
執筆・編集・校正・写真家のマネージャーなど何足もの草鞋を履くさすらいのフリーライター。洋画・海外ドラマ・韓国ドラマの熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。


《山根由佳》
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