ビッグデータで訪日客を見える化! | RBB TODAY

ビッグデータで訪日客を見える化!

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電通 ビジネス・クリエーション・センター 満居優さん
  • 電通 ビジネス・クリエーション・センター 満居優さん
  • 「いいデータ」は、訪日外国人の属性情報やビジター数の推移、エリア別訪問回数、周遊ヒートマップなど、さまざまな切り口で分析できる
  • INBOUND INFOGRAPHIC DATAの頭文字をとって、満居氏自ら「いいデータ」とネーミング。観光立国・日本のバックボーンとなる予感
  • シンプルで使いやすいサービスを心掛けたいと話す満居さん
 新たな試みや発想がいま、中小企業のビジネススタイルを変えようとしている。新コーナー「HJHJフロントライン」では注目を集めるテクノロジーや新製品開発など中小企業の明日を占う最新ニュースをピックアップし、当事者へのインタビューや識者の解説をもとにその可能性や広がりについてわかりやすく伝えていく。第一回目は訪日外国人向けマーケティングの中でも、近年注目を集めている、位置情報を元にした行動分析にフォーカスする。

■訪日外国人の集客には行動分析が不可欠

 年々増加の一途をたどるインバウンドを受けて、企業や自治体などでは外国人観光客へのプロモーションが急務となっている。とはいえ、いざ実行に移すとなると、そのハードルは高い。何語にすべきか、いつどこでPRを実行するか――。その根本的な原因となっているのが、曖昧なターゲット像だ。

 インバウンドとひと口にいっても、国籍や行動パターンもさまざま。パイの大きさでいうと、2015年に約500万人と全訪日外国人の1/4を占めた中国に注目が集まっている。しかし、そもそも対象となる商材、それを扱う場所に中国人の需要があるかわからないまま、プロモーションを仕掛けても意味がないだろう。

 インバウンドプロモーションにおいて、重要なのは、いつ、どの国籍の訪日観光客がどこを訪れ、どこに行ったという動態データだ。それらを活用することで、店頭や媒体、ウェブでの効率のよい集客が展開できる。では、そのデータとは具体的に何なのか? 訪日外国人の属性・位置情報分析サービス「いいデータ」を先日リリースした、電通 ビジネス・クリエーション・センター 満居優氏に話を伺った。

■ビックデータのオープン化が新たなビジネスを生む

――マーケティングの分野において、以前から求められてきたのが顧客属性というビックデータです。近年では世代の格差、グローバル化が顧客属性をさらに多様化させました。その中で顧客属性データが、以前よりも重要度を増しているように思います。

満居 そもそもビックデータというものは、ずっと昔から存在はしていたわけです。ただ、その言葉が近年顕在化してきた背景には、顧客情報は手軽にビジネスに活用できるという意識の変化があります。これは、一部の限られたマーケターやアナリストだけが情報を扱う時代は終わり、今では必要な情報に誰でもアクセスでき、誰でも引き出せるという時代に変わったことを意味します。現にそういったさまざまなサービスが提供されています。

――“オープン”とは、素人にも使えるビッグデータというようなことでしょうか?

満居 例えば、スマホなどについている音声認識機能を例にとってみましょう。“話す”という誰でもできる行為で、簡単にいろいろな情報にアクセスできますね。情報へのアプローチの仕方がどんどん簡素化され、ストレスフリーでシームレスなものになっています。まさに小学生やお年寄りなど年代や職業問わず、誰でも扱えるようなものが現代では求められていると感じます。“オープン”とはこういったことだと思います。


――なるほど、オープンとはインターフェースの簡便さも含まれるのですね。ほかにも、利用者の敷居を下げるということでは、どのようなニーズがあるのでしょうか?

満居 情報過多な現代において、リサーチなどで得られる情報も多様さを増しています。しかし、多くの情報量をもったデータはそれはそれで価値がありますが、単に多いだけとか、数字の羅列や煩雑なデータで構成されたものは、利用者の混乱を招くこともあります。情報にアクセスする人にとって、シンプルでわかりやすく理解できるデータであるということは重要な要素です。例えば、数的データを可視化してグラフにしたり、イラストで表わすだけでも、ユーザー視点に立ったインターフェースを提供できます。

■外国人向けのプロモーション期間・場所を効率化

――「いいデータ」のサービス開発の背景はなんですか?

満居 実は「いいデータ」開始の背景には、国の実証事業があり、その際にこの仕組みを開発しました。当初は訪日外国人の属性分析と位置情報に基づいたプッシュ配信を行ない、コンバージョン計測を行なっていたのですが、その中で、実は国別の行動データそのものの需要の方が高いということに気付いたのです。

 広告や情報コンテンツをプッシュ配信するにしても、多くの企業や自治体が前段階となるターゲティングの部分でつまずいています。自治体でいえば自分たちのエリアで訪日外国人を回遊させたいわけですが、どの国籍の観光客が地元を訪れているか、そもそも把握できていなかったわけです。つまり、訪日外国人の属性や行動を“分析”することが急務であり、この分析をメインに据えたサービス設計にする必要があると感じました。そうしてできたのが「いいデータ」です。

――「いいデータ」を使って、いつ、どこで施策を打てばよいかを検討することで、その効果を高めることもできそうですね。例えば、小売店などでも何らかのプロモーションが展開できそうです。

満居 そうですね。例えば、地域の商店街の商機などにもつながるのではないかと考えています。商店街のような光景は、外国人の方にはあまりなじみの無い景色なので、一部では食べ歩きやショッピングなどのニーズにつながっているようです。そこで、特定の期間だけ訪日観光客が増えるとわかれば、普段は忙しい彼らでもメリハリのあるプロモーションが展開できます。これに付随してチラシなどの販促物制作やプロモーション需要など新たな仕事が生まれますし、逆に訪日観光客がまばらな時期には本業に専念できるわけです。

――小売店は人の動きに敏感ですから、それを可視化することで、新たなビジネスのアイデアも浮かびそうですね。

満居 はい。ちなみに、「いいデータ」では難解な用語などは極力使わず、インターフェースも非常にシンプルな使い勝手を心がけています。ユーザーの門戸を広く取っているわけですが、その先にあるのがユーザーのモチベーションの向上です。マーケティングのプロから与えられるのではなく、自ら興味と意思を持ってデータに触るからこそ、自発的なデータ活用が生まれ、そうしてはじめて“データが生きる”と考えています。


■東京・鮫洲に中国人向けプロモーションの商機がある?

――「いいデータ」では利用者が自ら訪日外国人の属性情報を検索できます。具体的にはどのような情報が調べられるのでしょうか?

満居 仕組みとしては乗り換え案内アプリや手帳アプリなどの、訪日外国人がよく利用するアプリ(*)経由で、訪日外国人の国籍などの属性情報や位置情報を収集しています。分析できるのはこれらの情報で、例えば“渋谷には午前中に中国人が100人いた”という情報を、表やグラフを使って分析できるというわけです。

 そのほか、機能としては、訪日外国人の周遊ルートを地図上に表示できます。ヒートマップ形式で、横に移動回数も表示します。より多くの訪日外国人が利用している経路を赤、その次は黄色など色で瞬時に判別できるようにしています。

――訪日外国人の周遊ルートというのは、従来にはあまり提供されなかったデータですね。これを自治体や企業はどのように生かせば良いのでしょうか?

満居 以前、とある自治体で行なつた例がわかりやすいかもしれません。A市に行き来している国籍Bの方々の移動先/移動元を調べてみると、なんと鮫洲が上位にランクインしていました。鮫洲というと運転試験場がある場所です。これは、恐らく国籍Bの方々が国際免許の手続きをしているのではないか、と思われます。この情報はまさに発見であり、これを知っていれば、”餃洲”で”B人向け”といった、今までは考えもしなかったプロモーションが検討できるわけです。

 ほかにも、あまり有名ではないとある田舎町に、なぜか多くのタイ人が訪れていたケースがありました。調べてみると、どうやら以前そこにある古民家にタイの有名人が訪れたようで、そこで写真を撮ることがタイ人の観光の目的になっていたようです。これもまさに発見ですよね。企業はそういった情報をもとに効率よくプロモーションを行なったり、自治体はほかの自治体と連携をして、訪日外国人をエリア間で回遊させたりできるわけです。

――外国人観光客の足取りをつかむことが、新たなプロモーションの材料になるわけですね。なぜそんなにエリアをしぼることができるのですか?

満居 「いいデータ」の特徴のひとつが位置情報の精度です。おおむね500メートル四方の中に訪日外国人がいたかどうか、というのが一般的な測位なのですが、それでは正確に訪日外国人観光客の位置をとらえられません。「いいデータ」はその何倍もの精度で位置情報をとらえているので、より細かく判別できます。

――自治体であれば、外国人観光客の周遊ルートを細かく調べられそうですね。例えば、駅前のコンビニとドラッグストアで利用客の多寡がわかれば、メーカーのプロモーションにも活用できそうです。最後にいいデータの今後の展望を教えてください。

満居 将来的には詳細な地図のPOIデータをレイヤー状に重ね合わせる予定なので、訪日観光客がどの施設を訪れたのか、よりわかりやすくなるはずです。また、提携するアプリ事業社もどんどん増やしていきたいと思っています。例えば、つぶやきアプリやお財布アプリ、決済アプリなどと紐付けられれば、どんなユーザーがどういった嗜好性を持っていて、どんなものを購買しているかまで追えます。もちろん個人情報の問題もありますので、リーガルの課題をすべてクリアーにした上でですが、その中でどのような情報を提供していけるかを、今後もどんどん模索していきたいですね。

 だれでも簡単にデータに触れ、分析をし、そしてその先に発見がある。このソリューションが、データ分析自体の敷居を下げることに少しでも貢献できるようになるといいなと思っています。

【*注釈】
「訪日外国人がよく利用するアプリ」について:
「いいデータ」では、株式会社ナビタイムジャパンが提供する訪日外国人観光客向け乗換・観光案内アプリ「NAVITIME for Japan Travel」と、株式会社ジョルテが提供しているカレンダー&システム手帳アプリ「ジョルテ」からユーザーの位置情報と属性情報を取得している。

<Profile>
満居優(みついまさる)さん
株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 事業開発室所属。長崎県出身。電通入社後、新聞局にて地方新聞社と連携した企画・イベントの立案、地方におけるクライアントのマーケティング課題解決に従事。2015年より現局に異動し、新規事業やサービス開発案件に携わる。現在は、電通インバウンドマーケティングソリューション「いいデータ」の立ち上げを行い、サービス開発とクライアントセールスを行うほか、中小企業向け情報プラットフォーム「HANJO HANJO」の運営なども行う。

~HJHJフロントライン~ビッグデータで訪日客を見える化!

《HANJO HANJO編集部》

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