焦る必要はなし?中小企業がやるべきマイナンバー対策とは | RBB TODAY
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焦る必要はなし?中小企業がやるべきマイナンバー対策とは

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レピダム代表取締役、OpenIDファウンデーション・ジャパン プロデューサー 林 達也氏
  • レピダム代表取締役、OpenIDファウンデーション・ジャパン プロデューサー 林 達也氏
 マイナンバーの深層・真相・新相について、さまざまな業界の識者やオピニオンリーダーにご意見をうかがう本企画。第5回目の今回と次回(最終回)は、本企画のファシリテーターを務めたレピダムの林達也氏【写真1】が登場。前回までのJIPDEC 坂下氏と、内閣府 向井氏の貴重なお話を踏まえつつ、マイナンバー制度の現時点での問題点と、今後の普及に向けて、重要な示唆をいただいた(このインタビューは12月上旬に行ったものです)。

■来年1年間をかけて、中小企業はじっくりとマイナンバー対策を!

――これまでの話をうかがったうえで、お感じのところ、所感について教えていただけますか?

林:そうですね。まず私自身がインタビューを通じて読者の方に一番お伝えしたかった点は、マイナンバー制度の導入にあたり、来年早々にやらなければいけないことはなにかという点です。2016年1月開始ということで慌てている方も多いかもしれませんが、マイナンバー対策に関していえば、そのほとんどは来年1年間かけて、じっくりと対策を練り、秋口までに準備ができていればよいということですね。ただ、2015年内にマイナンバーの担当者を決めることと、その担当者が最低限の書類の処理だけはおさらいしておく必要があります。

 いま巷でさまざまなマイナンバー対策サービスが登場していますが、何も焦らずに導入せずともよいわけです。各ベンダーには来年1年でユーザーから多くのフィードバックが寄せられるでしょう。その知見が溜まってからサービスを選ぶのがベストなチョイスになります。その間は必要最低限のことを守っていれるだけで、心配はいらないと思いますよ。

――たぶんロードマップにしても、いろいろと変わってくるかもしれません。現状では、すべてを確定的な状況として捉えないほうがよいということでしょうか。

林:まだ12月の段階でも厚労省側からのガイドラインが出ているような状況なので、これからも変更があるかもしれません。ですから前々年度にマイナンバー対応のITシステムなどを準備してきた企業も、本当に制度上で対応しているのかどうかも含めて、また見直しを迫られることになる可能性はあるかもしれませんね。

 クラウドサービスにしても、マイナンバーを預かった際の規定は契約やそのサービス内容によっては扱いに気を配る必要があります。その文脈で、マイナンバーを暗号化したとしても、あくまでマイナンバーはマイナンバーであり、その状況は変わるものではありません。

――まだ12月時点でも通知カードが届いていない地域もありますよね。

林:実際にマイナンバーの収集作業を始めたくても、現段階で大企業でさえ集めようがありませんし、来年1月の段階で集まっていれば早いほうだと思います。もちろん政策上はこれでよいわけではありませんが、現実問題としてはこれが実情でしょう。好ましいことではないかもしれませんが、ほとんどの企業が手をつけられていないなかで、集めていないことについて政府が締め付けてくるということはあまり考えられません。一方、そうはいっても悠長にしているほどの時間があるわけでもありません。来年1年間をかけて企業がしっかりと取り組むことが前提です。

 扇情的なセールストークをする方々もおられますが、中小企業が現時点で書類にマイナンバーを記載せずに提出しても、何か罰則があるわけではありません(従業員などが故意にマイナンバーを漏えいした場合における監督責任の両罰規定はある)。もちろん従業員の退職時などに最低限やるべきことはありますから、再度になりますがそういった書類の洗い出しをしてから、提出をするレベルで大丈夫です。あとは窓口となるマイナンバー担当者を決めるというところまで行きついていれば問題はありません。

 もちろん、社会基盤として足並みがそろっていれば、企業に対しても個人に対してもベネフィットはあります。それは前回までの2つのインタビューからもご理解いただけると思います。マイナンバーがなかなか普及しなくても、定率減税などの話も含めて、マイナンバーを受け入れた側がそれなりのベネフィットを享受できるというストーリーには変わりはありません。

――マイナンバーカードをつくるかどうかは任意ですし、強制されるものではありませんが、カードを持っていれば何がしかのメリットも出てくるという話ですね。

林:マイナンバーカードを持とうが持つまいが、2015年10月の段階で、すでに国民全員にマイナンバー自体は割り振られているわけです。いずれにせよ、今後はマイナンバーを前提とした社会を目指すことになっている以上、マイナンバーカードがあったほうが便利である可能性は高いでしょう。

 福祉についても、子供が生まれればマイナンバーが自動的に発行されますし、向井さんのお話を振り返れば、これから戸籍にも使われるようになってきます。若い世代は、自動的にマイナンバーに切り替わっていくわけですね。マイナンバーをよいものとして捉えると、先進国の事例をしっかりと反映して、社会基盤として成立させていけばよいのだと思っています。

■マイナンバー制度は、目に見えない社会基盤の重要な刷新である

――とはいえ、今回のマイナンバー制度はいろいろと混乱が生じている状態ですが、その原因はどういうところにありますか?

林:それは、マイナンバー自体が日本で初めての制度であり、一足飛びに国民全員に適用することになっているからでしょう。ある時点で生まれた子供達から、マイナンバーを徐々に付与していくのであれば、コストもかからずに自然な形でスムーズに導入できるのかもしれませんが、政府としてはお金を掛けてでも新しい社会基盤の一括整備が必要だという判断で政策を進めているわけです。

 マイナンバー制度は、社会基盤の重要な刷新であり、目に見えないインフラ整備だと捉えると少しわかりやすいかと思います。日本全体に突然、道路や水道管のようなものができるというような話なので、ある程度は混乱があっても仕方ないと思います。

 そういう社会基盤にもし自分がいっさいタッチしないで生きていくというのであれば、正直なところかなり覚悟がいることになるのかもしれません。プライバシーインパクトの問題からマイナンバーカードを受け取らないという考えの方もいらっしゃるかもしれません。それはある意味許されている選択で、いろいろな検証をした結果、もし何か問題が出てくれば、その都度考えていけばよい話だと思います。

――マイナンバーカード制度は“走りながら考える”という感じなのかもしれませんね。

林:そうですね。ただ政府の広報もうまくできていなかったのも事実です。通知カードの件も含めて、やるべきことが予定通りにいっていませんから、不信感を抱く人がいることも理解はできます。とはいえ、やはり無理をしてでも年内にやらないとできなかったというのも事実だと思います。マイナンバー制度を後倒しにしたらうまくできたかというと難しかったでしょう……。(つづく)

【本音で訊く! マイナンバーの深層&真相&新相(5)】マイナンバーは目に見えない新しい社会インフラ

《井上猛雄》
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