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『ETC 2.0』普及へ前進、経路別の料金優遇などサービス具体化へ

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28日、ETC2.0のサービス展開、取り組みが新たに示された。さらに、8月より経路情報を収集することが可能な「ETC2.0車載器」の販売が開始される(写真は首都高速道路の料金所)
  • 28日、ETC2.0のサービス展開、取り組みが新たに示された。さらに、8月より経路情報を収集することが可能な「ETC2.0車載器」の販売が開始される(写真は首都高速道路の料金所)
  • ETC2.0が取り組む4つの「賢い取組」
  • ビッグデータに基づく「賢い投資」。データをもとに事故多発エリアや渋滞箇所を見える化し、最適な対策をおこなう
  • 事故と渋滞を減らす「賢い料金」。混雑状況などに応じた動的な料金を導入する
  • ETCを基本とした料金所や、対距離料金体系の構築をめざす「賢い料金所」
  • トラック輸送の最適化を図る「賢い物流管理」
  • 首都圏の高速道路の車線あたりの実用量の分析
  • ETC 2.0では安全運転支援の情報を提供することもできる
ETCの次世代規格『ETC2.0』に対応するDSRC車載器の累計販売台数が6月末時点で67万台に達し、1年前の約2倍になった。初代規格の約5000万台に比べると大きく見劣りするが、車載器から得られるビッグデータは着実に積み上がり、新たなサービス導入に向け次のステップに進みつつある。

ETC2.0は従来の通行料金自動決済機能に加えて、ITSスポットと呼ばれる道路側に設置されたアンテナと高速・大容量・双方向で通信を行うことで、渋滞回避など運転を支援する情報提供サービスが受けられるもの。2009年から世界初の路車間通信サービスとして運用が始まっている。

7月28日、国土交通省にて道路分科会国土幹線道路部会がとりまとめた中間答申の中で、今後のETC2.0のサービス展開、取り組みが新たに示された。さらに、8月より経路情報を収集することが可能な「ETC2.0車載器」の販売が開始されることが明らかになった。これにより、今後は、リアルタイムに得られるビッグデータを活用し、「道路を賢く使う」ための様々な取り組みがより具体化。経路別の料金優遇など、より一般ユーザーにメリットが感じられるサービスが展開される。


◆双方向通信を活かしたETC2.0、4つの柱

ITSスポットはすでに高速道路の1600か所に設置済みで、2015年度からは国道でも同様のアンテナを順次設置していくという。

ETC2.0は双方向通信により利用者は運転支援情報を受けられる一方で、高速道路会社や国といった道理管理者は車両のプローブ情報を収集することができる。

ETC2.0で収集できる位置情報データをたどっていくことで車両の速度や発着の走行時間もとれるが、これとは別に挙動履歴、例えば急ハンドルや急ブレーキがあったポイントも車載器から取得できるようになっている。

このデータを生かした多角的な取り組みが本格化することになった。国土交通省の諮問機関である社会資本整備審議会の道路分科会国土幹線道路部会がとりまとめた中間答申には、「賢い投資」、「賢い料金」、「賢い料金所」、「賢い物流管理」の4つの柱からなるETC2.0を活用した新たな取り組みが示された。


◆通行料金でもメリットを

まず「賢い投資」は、ETC2.0から得られるビッグデータをもとに高速道路の渋滞個所や一般道での事故多発エリアを見える化した上で、その対策をピンポイントで実施し効率良くお金を使うというもの。

具体的には、高速道路の渋滞頻発区間の中でも最も交通量が低下する個所を割り出し、その部分だけ路肩を使って車線を増やすことで車の流れを良くすることなどを想定している。また一般道では急ブレーキ多発箇所を特定して、その原因がスピードの出やすい場所であれば段差を設けたり、植栽などで前方が見えにくくなっているのであれば剪定して見通しを良くしていくという。

中間答申では2020年の東京オリンピックまでに首都圏の高速道路で渋滞解消を目指すとしている。一般道に関しては、2016年度から5年間での取り組みを通じて死者数の半減を目標に掲げている。

「賢い料金」では、混雑状況に応じた高速道路料金の導入や、事故などで渋滞している個所を避けるためいったん高速道路から降りて、一般道で迂回した後、再び高速道路に戻った場合の料金を、そのまま高速を使ったのと同じ料金にする。

混雑状況に応じた高速道路料金の導入に関しては、例えば神奈川県の厚木インターから埼玉県の久喜インターに行くには圏央道のみのルートと、東名高速~首都高~東北道を使うルートがあるが、実は圏央道ルートの方が1.3km短いにも関わらず料金が590円高くなっている。そこで、2つのルートの料金をまず同一にした上で、混雑状況に応じて料金差をつけることで、渋滞緩和につなげるというもの。これは大都市圏でのシームレス料金の影響を検証した上で、順次導入されるという。

一方、事故や災害時については、高速道路から一般道へ一時退出する場合や、給油のためにいったん一般道に降りる際にも適用し、来年度から順次導入が始まる。


◆ETCからETC2.0へ

この「賢い料金」サービスを可能にするのが、8月から新規に販売されるETC2.0車載器。従来の車載器の場合、個別車両の経路情報はETCの料金所単位でのみ把握しているため、流入した料金所から流出した料金所までの間に複数のルートがある場合には、どこを通ったかわからないのが現状だった。

8月から新規に販売されるETC2.0車載器では、IDデータをETCの料金所だけでなく、高速道路や一般道に設置されたITSスポットにも送ることで、利用経路や利用時間、加減速データなどが1台毎に細かく把握できるようになる。

ただ個別の車両の動向を細かく把握、特定できるということは、個人情報を常に発信していることになり、その機密性が最も気になるところだが、国土交通省によると「ETC2.0に関する情報は、インターネットから隔離された独立した専用回線・サービスにより、暗号化された状態で安全に管理される」という。また、経路情報そのものについても、「道路管理者のみが取扱い、経路情報を活用したサービス意外には利用されない」。

従来のETCによる自動料金収受に関わる情報も「同様に管理されており、これまで情報漏えいなどの事故は起きていない」とのことだ。

中間答申では、ETCを基本とした高速道路への移行も盛り込まれた。それが「賢い料金所」で、例えば首都高の入口料金所の場合、有人料金所が中央でETC料金所が両脇にあり、ETCを利用するには迂回しなくてはならない構造になっているところが28か所あるが、今後2~3年かけてETCが中央、有人が両脇になるよう変えていくという。

またバーのないETC料金所の導入も提言され、今秋にも圏央道で導入実験が始まるという。さらに首都高などでの距離別料金の導入により、旧神奈川線と旧東京線の境にある平和島本線料金所や大井本線料金所など実質的に役目を終えた都市高速の内側の本線料金所の撤去を東京オリンピックまでに実施していく計画だ。


◆「経路情報」がサービスの鍵となる

ETC2.0から得られるビッグデータはトラック輸送の最適化にも大きく寄与する。それが「賢い物流管理」で、そのひとつがETC2.0を搭載した特殊車両へのインセンティブだ。特殊車両は橋など道路構造物の劣化に与える影響が極めて大きいことから、走行の際には経路ごとの事前申請や定期的な更新手続きが必要になっている。

ETC2.0搭載車両であれば、あらかじめ許可されたルートを実際に走行しているかは一目瞭然になる。このため、ETC2.0搭載車に対しては、国が指定した大型車誘導区間であれば複数の経路をまとめて申請できるよう簡素化し、経路も自由に選択できるようにする。また更新手続きも不要にする。いずれも今秋から始めるとしている。

さらにETC2.0で収集した経路情報を物流会社に提供するサービスも今秋から試験的に始まる。物流会社は所有する車両の運行状況の管理が義務付けられている。大手ならデジタルタコグラフの搭載や独自の運行管理システムを構築しているところもあるが、中小ではそうした余力がないのが現状。そこでETC2.0車載器を搭載することを条件に物流会社に経路情報を提供し、運行管理に活用してもらうというもの。具体的には所有車両の位置情報を始め、急ハンドル、急ブレーキなどのデータ提供を想定している。


こうした4つの柱からなる新たな取り組みは、8月以降に新規に販売されるETC2.0車載器が普及すればするほど効果が一段と増すことになる。また「賢い料金」サービスの本格導入、今後期待されるサービス拡大によりドライバーへの料金メリットが明確化されていくことで、普及促進につながる。これにより初代規格のETCとの価格差も縮まっていけば、次世代規格への乗り換えが進むことも期待できそうだ。
《小松哲也@レスポンス》
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