もっとも「手首の異物感」が所有している喜びを実感させることにも繋がるわけだが、F100ではこれが非常に洗練された表現になっていると言えばいいだろうか。「ケースが世界最薄だから」というだけでなく、そうした優れた数値スペックを、装着感の向上と洗練にフル活用するデザインにされているのだと理解できる。 文字板のデザインは黒基調のシックかつシンプルなもので、遠目には地味にも感じられるかもしれない。しかし、だからといって存在感がないというわけではない、というところがポイントだろう。実際に濃色のシャツと合わせてみたが、埋没した印象とはならず、しっかりとした存在感を主張して頼もしく思えた。 漆黒の文字板とソーラーパネルのダークグレーというツートーン、そしてその境界のわずかな段差で生み出される陰影が、存在感アップに貢献しているようだ。結果、出しゃばりすぎず埋没せずという、絶妙なバランスを保ったデザインとなっている。 高級感を表現するには文字板を華やかにするのが定番で、こうした目的でクロノグラフが採用されることも多い。クロノグラフにしなかった理由はシチズンによると「腕時計としての使いやすさを重視して検討したところ、シンプルな文字板がいいという結論に達しました」とのこと。華やかな文字板が欲しい人は、ATTESAを選べばいいというわけだ。◆「スピード」がすべての要素のキーワード デザインについてもう少し詳しく聞いてみよう。一体どんなコンセプトで開発がスタートしたんですか?と問うと、「じつは『スピード』という言葉から、商品企画やデザイン開発など、プロジェクトのすべてが動き出したんです」とのこと。 たしかに資料に目を通すと「スピードにこだわることで操作性などストレスフリーなユーザービリティーを実現し、スピード感のあるシャープで薄いデザインによって楽しさやワクワク感を創出する、新しい『サテライト ウエーブ』の目指す姿が決まりました 」とある。 なるほど機能や見た目、さらにはユーザーインターフェイスまでもが同じ価値観、同じ目標を共有して開発が進められたからこそ、ここまでスマートなデザインが実現できているというわけだ。ただいたずらに薄さやシャープさを強調したわけではないということも、洗練された印象に繋がっていることは間違いない。