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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第68回「スマホは成熟市場に」…… 2014年のモバイル業界動向を振り返る

エンタープライズ モバイルBIZ
木暮祐一氏。青森公立大学 准教授/博士(工学)、モバイル研究家として活躍し、モバイル学会の副会長も務める。1000台を超える携帯コレクションを保有。
  • 木暮祐一氏。青森公立大学 准教授/博士(工学)、モバイル研究家として活躍し、モバイル学会の副会長も務める。1000台を超える携帯コレクションを保有。
  • (図)一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムが公表した「モバイルコンテンツ有料課金市場規模」調査結果。2013年時点でもう77%がスマートフォンからの利用となっている
  • 青森県のシニアを対象に、スマートフォンの便利な使い方を学んで頂く「スマートスクール@青森」は、スマートフォンに最も習熟している大学生が講師とサポーターとなり、大学生とシニアがスマホを通じて交流するきっかけともなり好評を博した
  • 福岡県飯塚市が主催した「e-ZUKAスマートフォンアプリコンテスト」も今年3回目を迎えた。飯塚市ではシリコンバレーのサニーベール市と姉妹都市協定を結び人材交流も始める予定だ。写真最前列は齊藤守史・飯塚市長と最優秀賞を受賞した筑波大学のチーム「TKS」の代表者、そして審査員長を務めた筆者
■モバイルキャリアから新料金プランの登場

 携帯電話の料金プランは、これまでいくつかの変遷を経て現在に至っている。自動車電話、ショルダーホン、携帯電話等が世の中に初めて登場した黎明期(1979~1993)は、免許制度の関係もあり、利用する場合は通信キャリアから無線機部分をレンタルし、レンタル料を含めた基本使用料を支払う必要があった。解約時は当然のことながら端末は返却しなくてはならなかった。その利用料金は月額14,000~20,000円程度もかかった。その上、契約時に施設設置負担金(いわゆる加入権、現在は廃止)や事務手数料、保証金(10~20万円、解約時に返却)、バッテリーや充電器等の付属品の購入費(2~5万円)が掛かるなど、一般庶民には縁遠い存在だった。

 これが規制緩和により、1994年より「お買い上げ制度」が導入され、レンタルではなく、自由に携帯電話端末を販売し、ユーザーもこれを購入できる仕組みが導入された。まさに現代に続く販売方法がこのときから始まった。レンタル料の負担がなくなる分、基本使用料が安価になっていった。契約時に必要な諸費用も年々引き下げられていった。この頃の料金プランは、基本使用料で月額約7,000円台のプランと、月額約4,000円の2プランが用意され、基本使用料が安価なほうは、その代わりに通話料が1.5倍程度高い設定となっており、通話が少ない人向けとして用意された。

 その後、通信キャリア各社が競争を繰り広げていく中で、料金プランもより複雑なものとなり、音声通話を使う頻度別に基本使用料と通話料金が段階的に設定されたものに変わって行った。さらにiモード等のモバイルインターネットサービスの普及でパケット通信料という通信キャリアにとっては新たな収益源が生み出され、そのパケット通信料自体も2000年代中盤から「定額制」へと移行していった。

 LTE方式のネットワークが登場し、データ通信の利用量が一段と増加していくと、パケット定額料金制ではネットワークの負荷が多くなる懸念や利用頻度の高いユーザー層とあまり利用しないユーザー間で料金の不均衡も生じるということで、パケット定額が順次従量課金(データ通信量の上限を設け、それを超えた場合はパケット通信料を新たに追加するか、通信速度の制限が入る)へ移行していった。

 このように携帯電話サービスの歴史を振り返ってみても、唯一「音声通話料」は一貫して従量課金というのが常識だった。ところが2014年4月にNTTドコモが発表した「新料金プラン」は衝撃的なものだった。基本使用料が従来よりも若干高め(ガラケーで2,200円、スマホで2,700円)になるとはいえ、音声通話料を含み、その通話時間は無制限というもの。さらにパケット通信料は使う量に応じて選択でき、さらに家族間でシェアできるというものになった。ドコモに続き、ソフトバンク、auも、同様の料金プランを採用。

 まさに、モバイル利用の中心が、音声通話をベースにしたものからデータ通信が主体としたものへの転換期を迎えたということが、新料金プランから伺い知れるのではなかろうか。また、将来3GからLTEネットワークへ完全移行していくためには、LTEネットワーク上で音声通話もパケットに乗せて送受信するVoLTE(IP電話のLTE網版)へ移行していく必要がある。そうなれば従来の音声通話(回線交換網経由)のように1対1のユーザーが回線を占有するということがなくなり、従量課金にする必要性がなくなってくることを見込んだ上で、先行して新料金プランを導入したものと考えている。

 とはいえ、基本使用料は780~980円程度まで引き下げられていた中で、音声通話料金を含めたことで基本使用料がベースアップしており、音声通話もデータ通信利用も少ないユーザーは新料金プランへの移行を躊躇しているケースも少なくない。そんな中で台頭してきたのがいわゆる“MVNOによる格安SIMカード”なのであろう。
《RBB TODAY》
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