Watsonが料理を創る……IBMが見るコンピューターの未来とは? | RBB TODAY

Watsonが料理を創る……IBMが見るコンピューターの未来とは?

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レフェルヴェソンスの特徴「蕪」とWatsonのコラボレーション
  • レフェルヴェソンスの特徴「蕪」とWatsonのコラボレーション
  • 日本IBM 取締役 副社長執行役員 ポール与那嶺氏
  • 日本IBM 成長戦略 ワトソン担当 理事 元木剛氏
  • シェフ・ワトソンとは
  • コグニティブ・コンピューティングによる複雑性の限界へのチャレンジ
  • コグニティブ・コンピューティングによるアシスト
  • コグニティブ・コンピューティングによる理解
  • コグニティブ・コンピューティングによる意思決定
 日本IBMは4日、都内のレストランでメディア向けイベントを開催、人工知能「IBM Watson」を料理に利用する「コグニティブ・クッキング」の取り組みとWatsonの今後の可能性について紹介した。

 今回IBMとイベントを開催した「レフェルヴェソンス」は、ミシュランガイド2015で2つ星を獲得したフランス料理レストラン。エグゼクティブシェフの生江史伸氏と、9000種類のレシピを学習させた「IBM Watson」が想像したレシピとのコラボレーション料理が提供された。

 同社の取締役 副社長執行役員のポール与那嶺氏は「コンピューターは50年ぐらいのサイクルで進化している。最初の50年は計算機、IBMのメインフレームやパソコンだった。これからの50年はまさにWatsonのコグニティブ・コンピューティング、学習する人工知能的なコンピューターの時代になっていくのではないか」と挨拶した。

 IBM Watsonがアメリカのクイズ番組「ジョパディ!」で2人のクイズ王を破ったのは2011年。そこから4年、さまざまな取り組みがあったが今回の「シェフ・ワトソン」もその一つ。人々の生活に対していろいろな支援をしたり、ビジネスを変えていくことを望んでいるが、そのデモンストレーションとして開発したもの。9000種類のレシピを学習、そのレシピを構成している材料、成分を化合物のレベルまで落として分析し、美味しいと感じるパターンなどを学んでいく。その上で条件を入力すると元のレシピにはなかった組み合わせのレシピを提案するという。

 エグゼクティブシェフの生江史伸氏は、実際にWatsonを使ってレシピを編み出した過程について説明した。「Watsonには食材と調理法、そしてオケージョンや気分といった人間の日常に密接したワードの3つを入力する。私が考えるレシピとは違うものが出てきたり、これまで使ったことのない素材を提案してきたりして、Watsonが考えもつかなかったアイデアを出してくる。これによっていろいろなバリエーションが広がっていく、自分の価値観を崩してくれるようないい経験になった」と感想を語った。

 クイズ番組「ジョパディ!」で優勝したWatsonと「シェフ・ワトソン」はかなり違うものに聞こえるかもしれないが、根底にあるものは同一で、人間から学ぶということだという。クイズの場合は過去の問題集を学ばせ、シェフ・ワトソンは専門家が作ったレシピを学んだものだ。また、医療の領域で使われるようなWatsonでは、専門医からどうやって正しい治療法を見つけて行ったらいいのかということを学んでいくのだという。

 専門家の知識、手法を習うように学んでいくとWatsonが知識を拡張したり、補完したりできるようになる。一人の専門家が膨大なデータの処理をすることは困難だが、Watsonはそうした膨大なデータを処理して新しい知見を想像する。同社ではこうした全く新しいコンピューターの使い方をコグニティブ・コンピューティングと呼んでいる。

 成長戦略 ワトソン担当 理事の元木剛氏は、コグニティブ・コンピューティングの考え方について、「人間が創りだしたツールは、何らかの形で人間の能力の限界を超えるようなものだと考えると、車が物理的な限界を超えるとか、コンピューターは生産性の限界を超える、電話がコミュニケーションの限界を超えるものだと言える。この考えで行くとWatsonやコグニティブ・コンピューティングは、人間の認知能力の限界を超えるものだと言えるのではないか」と述べた。

 元木氏は、Watsonの機能として、その複雑性の度合いとより高度な認知能力への要求として「Assistance(百科事典的な知識を活用する)」「Understanding(現象や人物のモデルを作り推論する)」「Decision(エビデンスにもとづき専門的な判断をする)」「Discovery(新しい知見の発見し価値を創造する)」の4つを挙げた。

 Watsonがアメリカで実際に使われている事例として、アメリカ軍を退役した人が市民生活に戻る際に出てくる質問や相談に答えるシステムや金融商品を活用するアドバイザー、治験の際に医者と患者をマッチングするサービスなどを挙げた。すでにWatsonに意思決定をさせるという専門性が必要な高度な使い方もできるという。

 必ずしも正解のない世界で提案していくという最も高度な使い方「Discovery」。今回のシェフ・ワトソンもこの領域にあたるものだが、通常の研究者では読みきれない何万件という研究論文をWatsonに読み込ませ、がん細胞を抑制する遺伝子を作る酵素をWatsonを使って見つけ出した研究成果を紹介した。

 Watsonの可能性に触れたところで、同席した記者からは「Watsonがこれだけの仕事をしたら私たちの仕事がなくなってしまうのではないか」といった声も聞かれたぐらいだ。同社ではWatsonが提示した情報を元に最終決定を下してビジネスを進めていくのはあくまでも人間で、Watsonによって人間の仕事はさらにクリエイティブに向かっていくとしている。同社のウェブサイトでは、Watsonが日常生活の一部になったときの生活の予測として「コグニティブ・コンピューティングと拓く未来」という動画が公開されており、Watsonの可能性を感じることができる。また、11月にはみずほ銀行と三井住友銀行がIBM Watsonを活用した取り組みを始めることを発表しており、日本においてもWatsonの活躍を感じられる日も近いだろう。
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