【浅羽としやのICT徒然】第16回 フェイスブックの心理実験からメディアを考える 2ページ目 | RBB TODAY
※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

【浅羽としやのICT徒然】第16回 フェイスブックの心理実験からメディアを考える

エンタープライズ ソフトウェア・サービス
ザッカーバーグ (c) Getty Images
  • ザッカーバーグ (c) Getty Images
 メディアと、政治やインテリジェンスとの関わりに関しては、メディア論の研究者として著名な有馬哲夫先生の著書「原発・正力・CIA 機密文書で読む昭和裏面史」に記されている内容が非常に興味深いです。米国は50年経つと機密文書であってもきちんと公開するようで、本書は公開されたCIAの機密文書を緻密に調査した上で書かれたドキュメンタリーです。当時の日本は、保守連合による55年体制確立を巡る、吉田茂、鳩山一郎、岸信介などの政治家の覇権争いが繰り広げられていた時期で、そこに日本やアジアの通信と放送の利権を一手に握ることを目論む読売新聞社主の正力松太郎氏の野望と、筋金入りの反共産主義者であった正力氏の構想をうまく後押ししながら、日本やアジア各国の共産主義化の動きを監視し、阻止しようと目論むCIAとの間の駆け引きの様子が鮮やかに描かれ、よくストーリーを練られた小説でも読んでいるような気分にさせられます。なかでも印象的なのは、正力氏が、通信と放送の両方の利権を手にするために、必要な政治権力を得るための実績作りのために、たまたま米国が当時進めようとしていた原子力の平和利用と原発の推進に目を付けた点です。つまり日本に現在これだけの原発が導入されている状況のそもそもの発端が、メディア企業が覇権を確保するための方策に過ぎなかったということです。これは著者の書きぶり次第ではありますが、本書を読む限り、正力氏は原子力発電自体に対する夢や理想を持っていたようには思えません。正力氏は、自身の通信利権獲得の野望のために原子力委員会の初代委員長に就任し、また所有する新聞とテレビという2大メディアを駆使して大掛かりなキャンペーンを実施し原発が安全であるという世論を形成していきます。またそのキャンペーン活動の流れで、正力氏は、ディズニーが米政府の働きかけで制作したプロパガンダ映画(実際はテレビ番組のようですが)「我が友原子力」を日本で放映するためのお膳立てに成功し、その時に作ったコネクションで、後に東京ディズニーランド誘致も成功させることになるのですが、その辺りの下りを読んでいると、何とも複雑な気分にさせられます。結果、大流行の「アナ雪」でさえ、わざわざ見に行く気にはどうしてもなれないでいます。

 華やかなメディアの裏側の利権と、大国のインテリジェンスが強力に結びつく様子、そして、プロパガンダにより世論が操作された結果が今日の日本の原子力依存を作り上げて来たという裏の歴史について、これ以上の詳細は原書にゆずりますが、これからますます発展を続けるインターネットの巨大ソーシャルメディアと、われわれ市民がどう向き合って行くべきかに付いても、深く考えさせられます。今回のフェイスブックの一件は、そんなことを思い起こさせられ、考えさせられるできごとでした。
《浅羽としや》
【注目の記事】[PR]

関連ニュース

特集

page top