【流通BMS Vol.2】中小企業は「流通BMS」にどのような戦略で臨むべきか | RBB TODAY
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【流通BMS Vol.2】中小企業は「流通BMS」にどのような戦略で臨むべきか

エンタープライズ 企業
従来のEDIから流通BMSへの移行(イオンの取り組み)
  • 従来のEDIから流通BMSへの移行(イオンの取り組み)
  • イオンの流通BMS移行方針では2013年にはJCAのシステムを停止する
  • イオンが進める流通BMS導入プラン
  • 大塚商会 マーケティング本部 システムプロモーション部 部長 石井ふみ子氏
  • MEDIAのデータ変換機能。取引先によって異なる伝票フォーマットの項目を自社のデータベース項目にマッピングできる
  • 伝票データの集計やピッキング処理も可能なMEDIA
  • 流通BMSに変換したデータをバックエンドの基幹システムと連携させるSMILE
  • 豊富なテンプレートにより、SMILEをあらゆる業種に適用することができる
 商取引のためのメッセージを、企業間で電子的に交換する仕組みであるEDI。これまで小売ごとに異なっていたEDIのメッセージ形式を標準化し、全ての企業が共通で使えるようにするものが「流通BMS(ビジネスメッセージ標準)」だ。

 前回の記事では、「流通BMS最新動向セミナー」での取材をもとに、流通業界において「流通BMS」対応の動きが広がっていること、その概要や背景、最新の動向について触れた。第2回目となる今回は、引き続き同セミナーの取材から、小売・メーカーそれぞれの立場での「流通BMS」対応について、さらに、システムのリプレースを迫られる中小企業には、どんなソリューションがあるのか、という点について触れていきたい。

■流通側の取り組み

 大手流通企業グループのイオングループでは、2012年末までに流通BMSへの移行を完了させ、2013年にはJCA手順のような旧世代のEDIシステムを停止させるという具体的な移行方針を掲げ、グループ10社が一丸となって導入に取り組んでいる。

 同グループが流通BMSへの移行を進める背景のひとつに、通信時間の短縮がある。前述の協議会による共同の実証実験によれば、流通BMSを導入することで取引データの通信時間を94%削減できるという。これは、JCA手順が公衆回線のVANを利用しているのに対して、流通BMSではインターネット回線を利用しているためで、このことは同時に通信費用の削減にもつながっている。また、旧世代EDIが利用するVAN用のモデムは、現在入手やメンテナンスが困難になってきているほか、これらのEDIシステムはメインフレームや旧世代のオフコンなどで構築されていることが多く、モデム同様に維持コストの問題も深刻になっている。

 インターネットとXMLによるメッセージ交換をベースとする流通BMSに移行すれば、これら問題点の改善や効率化が期待でき、業務の最適化につながり、リプレースのための投資に見合うというのが、イオングループの考え方だ。

■メーカーの取り組み

 小売店や卸だけでなく、メーカーも、古いシステムの維持コストや効率面で共通の問題を抱えている。乳酸菌飲料で有名なヤクルトも、流通BMSの導入を進める企業のひとつだ。

 ヤクルトグループは、お馴染みのヤクルトレディーによる訪問販売・宅配の他、自動販売機、スーパーやコンビニへの卸、学校給食や校内販売など、同社が「直販」と呼ぶ販売チャネルをもっている。同社が流通BMS化を進めている領域がこの直販チャネルである。同社では、直販システムのうち、まず量販店システムを流通BMSに対応させたところ、サーバーやストレージなどのハードウェアを大幅に削減、大容量化することが実現できたそうだ。流通BMSでは、サーバー構成を大がかりなものにする必要はなく、また、仮想化技術も取り込むことによって、5台のサーバーを2台に減らすことができたという。流通BMSはオープンな標準規格のため、取引先の拡大が容易になり、それぞれのサプライチェーンへの柔軟な対応も可能になった。

 同社は従来、Linuxサーバーを多用していたが、流通BMS対応を機にWindowsサーバーに移行したことで、メンテナンスやパッケージソフトの選択に幅が生まれたこともコストダウン+機能アップにつながったという。ただし、すべての取引を流通BMSに移行したわけではないので、従来からのJCAデータにも対応する必要が残っている。そのため、EDIシステムのソリューションパッケージの選定には、レガシーEDI(JCA手順、全銀手順)へのデータ交換機能がはずせなかったそうだ。多くの企業にとって、当面、これも選定ポイントのひとつとなるだろう。

■中小企業向けのソリューションは

 スーパーや百貨店と取引のある企業は、今後、規模の大小にかかわらず流通BMSを避けて通ることができなくなると思ってよいわけだが、中小企業向けのソリューションにはどのようなものがあるのだろうか。この問題について、同セミナーで大塚商会がおこなったプレゼンテーションをベースに整理してみよう。

 流通BMS対応でまず考えるべきことは、受注処理や請求処理などのフロント業務である。大塚商会では、フロント業務を流通BMS化するために「MEDIA」というソリューションを用意している。このソリューションは、JCA、WebEDI、流通BMSといった通信手順に対応し、取引業務フローを電子データ化してくれる。登壇した、大塚商会 マーケティング本部 システムプロモーション部 部長 石井ふみ子氏によると、MEDIAには、1)受信変換処理、2)受信状況の問い合わせ、3)ピッキングリスト、4)数量訂正機能、5)販売管理連携といった5つの特徴があるという。

 受信変換処理は、受信した受注データの明細項目を、自社システムの内部コードや項目、科目などに変換する処理のことで、この機能によって、複数の取引先のデータを内部的には一元的に扱うことが可能になる。データと項目のマッピングはツールによって設定可能だ。また、問い合わせやピッキングの機能によって、受信した取引データの処理状況やさまざまな集計表の作成が可能になる。集計表は、日付、取引先、商品、取引額など任意のキーや条件で作成できる。

 販売管理連携は、在庫管理や顧客管理などバックエンドのITシステムやERPなどとのデータ交換を行う機能。受発注処理や請求処理だけが取引先の流通BMSに対応しても、そのデータを社内のITシステムにそのまま利用できなければ意味がない。そこに、オペレータによる手入力などが必要になると、取引先の都合で追加のプロセスとシステムが必要となるだけで、導入側のコスト負担ばかり大きくなってしまう。

 石井氏は、バックエンドのシステムとの連携機能が重要であるとし、流通BMS対応のひとつのポイントであると述べる。MEDIAは、大塚商会が提供する販売管理ソリューションに対応するのは当然として、他社のシステムやソリューションとも連携可能となっている。その、流通BMSとバックエンドのシステムの連携機能について、同社のソリューションであるSMILEを例にして解説を行った。

 SMILEシリーズは、同社の販売管理システムとしてオフコン版から30年以上の歴史があり、その特徴は8,500以上の業種別テンプレート、同社のグループウェア「eValue NS」やBIツールとの連携機能、簡易的なツール(Custom AP Builder)による機能のカスタマイズ、そしてモバイルソリューション対応などが挙げられる。さらに、SMILEシリーズは、販売管理、在庫管理だけでなく、会計システム、生産管理システムとの連携も可能であり、基幹業務全般をサポートすることができるようになっている。

 BIツール(QlikView)やCRMシステムと連携させることで、経営分析や見込み客の管理も支援する。これらの機能は、製造業、出版業、アパレル業、食品卸業、医療機器卸業、ビルメンテナンス業向けなどのテンプレートによって、さまざまな業種で活用することができる。また、グループウェアとの連携ではSFAのような使い方も可能になるそうだ。

 こうした、広範囲の業種・業態をカバーする「SMILE」シリーズの販売管理は、システムの要件に応じて必要な機能だけを取捨選択でき、流通BMSの注文を取りかわす「MEDIA」と組み合わせることで、企業規模に応じた最低限のコストと、低い労力で流通BMS対応が可能になってくる。業界、企業規模を問わず、流通BMS以降の流れが確実に進んでいる中で、ソリューションを工夫すれば、企業規模や環境に合った無理のない導入ができる。それを知ることで、中小企業も、自社のビジネスチャンス拡大や作業効率改善、業界全体の最適化など、流通BMS導入によるポジティブな部分に目を向けて、前向きに取り組むことが可能になるだろう。
《中尾真二》
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