【流通BMS Vol.1】広がる「流通BMS」! 最新動向を知る | RBB TODAY

【流通BMS Vol.1】広がる「流通BMS」! 最新動向を知る

エンタープライズ 企業

流通BMS標準仕様の体系
  • 流通BMS標準仕様の体系
  • 流通システム開発センター 流通システム標準普及推進協議会(流通BMS協議会)の坂本 尚登氏
  • 標準メッセージの種類
  • 老朽化した通信手順の置き換え
  • 業務プロセスとデータ書式の標準化
  • 導入状況
  • 流通BMS導入で何が変わるか
  • 導入手順例
 流通業界は、これまでのEDIに変わる次世代のEDIとして「流通BMS」と呼ばれる標準メッセージが普及していく大きな流れの中にある。業務効率化や経営の見える化など、商取引において大きなメリットとなるはずの流通BMSだが、こうした変化に現場の企業、特に中小や零細企業はついていけているのか、注目される。

 今回、そうした中小クライアントを多く抱え、自社でも流通BMSに対応したERPパッケージを開発・販売している大塚商会の「流通BMS最新動向セミナー」を取材した。同セミナーでは、流通BMS制定の背景や実際の効果、最新動向、導入企業の事例、対応ソリューションの説明など、流通BMSに対応するために知っておくべきことが様々な角度から語られた。その内容を2回に渡ってお届けしたい。

 第1回目の今回は、流通BMSの基本的な概要や制定の背景、最新の動向について、セミナーに登壇した流通システム開発センター 流通システム標準普及推進協議会(流通BMS協議会)の坂本 尚登氏のプレゼンテーションを基に紹介していく。

■流通BMSの概要・制定の背景

 流通BMSは「流通ビジネスメッセージ標準」の略称で、その名の通り、これまで小売ごとに異なっていたEDIメッセージを“標準化”し、全ての企業が共通で使えるようにするもの。流通BMS協議会では、この標準仕様の維持管理および普及推進を進めている。協議会は、各業界団体などの正会員と、流通BMSの標準仕様に準拠した製品やサービスの開発・提供を行うIT企業などの支援会員で構成されており、セミナーを主催した大塚商会も、この支援会員の一社である。

 坂本氏はまず、流通BMS制定のねらいとして、「老朽化した通信手順の置き換え」「業務プロセスとデータ書式の標準化」を挙げた。従来のEDIは、およそ30年前に日本チェーンストア協会が制定した「JCA手順」で運用されており、伝送時間が長い、専用モデムの供給中止など「致命的な欠陥」(坂本氏)を抱えていた。また、小売個別の業務プロセス、データ書式は卸・メーカーのEDI導入や、新たな取引を結ぶ上で大きな障壁となっていた。

 こうした状況で、新たなEDI手順の必要性が高まり、2005年には次世代EDI標準化WGがスタート。2006年には経産省の委託事業となり、参加業界が急増し、共同実証や普及活動が進んだ。2007年4月には「流通BMS」という名称が決まり、バージョン1.0が発表され、現在最新バージョンは1.3となっている。バージョン1.3は2009年10月に発表されたもので、これにより「グロサリー・アパレル・生鮮業界」のメッセージが統合された。坂本氏によると「過度なバージョンアップは逆に障壁になる」として、当面は1.3で普及を進めていくとのことだ。

■流通BMSのシステム

 流通BMSは、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の基本6業務をベースに、さらに実際の業務で必要となる詳細なメッセージを定義したもの。体系として、スーパー・ホームセンターなどと卸・メーカーなどの間のメッセージについて定義した「基本形メッセージ」と、預かり在庫型センター用の取引メッセージ、そして、特殊な取引形態の百貨店に特化した「百貨店版メッセージ」の3つを用意している。

 システム形態としては、大手取引先向けのサーバー対サーバー型、中小向けのクライアント対サーバー型、零細向けには補完としてWeb-EDIも用意。導入スケジュールは、仕様の理解や基本設計から運用本番まで約半年を想定しており、2社目以降は短縮されるだろうとしている。

■導入の状況と課題、考え方

 現在の導入状況は、流通BMS協議会がおこなったアンケートによると「導入済み及び導入予定」が合わせて31%、「導入したいが時期は未定」が42%、「導入するつもりはない」が17%という状況。導入の意思が無い企業や時期が未定の企業に理由を尋ねると、「投資対効果が見えない」(59%)や、「取引先から要請がない」(48%)が大きな理由であった。なお、導入済みの卸・メーカーは、同協議会の推定によると、すでに3900社を超えているという。

 導入に対して足踏みをしている企業に対して、坂本氏は「投資対効果だけでなく、様々な視点から検討することが必要」としている。では、流通BMS導入で実際に何が変わるのか。まずはっきりと変わってくるのは、通信インフラの変化による「業務の効率化」、標準化の進展による「経営の見える化」、EDI取引の進展による「サプライチェーン全体の情報連携」だ。ただ、そこで前述のように投資対効果が不透明だという意見が出てくることに対して、同氏はさらに、企業の社会的責任(CSR)や事業継続計画(BCP)に関しても考えるべきだと述べた。

 流通業界全体の円滑な商取引の実現を考えたとき、流通BMSを採用することはCSRにかかわってくる。また、先の大震災時には電話回線が不通となり、取引が停止するケースが多発したが、こういった時にインターネット回線であれば災害に強い。この観点で考えると企業のBCPにも直結する。こうした、多角的な視点で流通BMS導入を検討して欲しいとしている。実際、既に導入済みの企業の中には、(自社で)EDI化はほぼ完了していたため「投資対効果は期待していない」と言い切った上で、今述べたような観点から流通BMSを導入したところもあるという。

■製配販、サプライチェーン全体の連携が加速

 最後に、現在の最新動向として、流通機構を構成する生産者、卸売業者、小売業者を製配販三層と呼び、その連携による全体最適化の活動が始まっているという話もあった。この3者が連携し、流通全体の無駄を省く活動をおこなっているが、その活動を支える情報流通インフラの役目を、流通BMSが担っている。

 当初はスーパーやドラッグストア等の業界ではじまった流通BMS導入の動きだが、最近はセブン・イレブンやローソンなど、既に独自の流通システムを持っていたコンビニ産業にも拡大の動きが広がっており、業界を問わず移行の流れは確実に進んでいるのが現状のようだ。これまで導入に前向きでなかった企業も、投資対効果や取引先の要請だけでなく、再度様々な視点からこのシステムの導入について検討する必要があるだろう。なお、大塚商会では、同セミナーを5月16日に大阪、5月24日に九州でも開催するとのことだ。
  
《白石 雄太》

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