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【ニールセン博士のAlertbox】ワークフローの期待:適切なタイミングで手順を示す

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要約:
アプリケーションの、ある手順でのアクションはその後の手順に影響を及ぼす。ユーザーがこの関係性を理解しないとき、ユーザビリティは損なわれることになる。


 アプリケーションデザインについての2日間セミナーをデザインしたとき、我々はテーマをワークフローと画面コンポーネントの2つのパートに分けた。

 2番目のテーマはわかりやすい。それが扱う範囲は、ラジオボタンやチェックボックスのような個別制御から、フォームデザインのようなウィジェットのより複雑なコンポジット、あるいはこうしたコントロール類のレイアウトまでのすべてである。どれもが非常に具体的だ。

 ワークフローはそれよりもはるかに抽象的である。しかし、実際にはアプリケーションの最終的な成功にとってはより重要といえる。したがって、これ以降は画面上の目に見える要素についてではなく、様々な機能間でのユーザーの移動について論じていく。ワークフロー理論の領域は段階的開示のようなシンプルな概念から、機能的インタフェース vs. 演繹的インタフェースのような難しい問題に至るまで、多岐にわたる。

 ワークフローデザインの重要性を説明するため、様々な分野で最近行ったユーザーテストから具体的な例をいくつか挙げることにする。そこでの例が示すように、効果的なワークフローデザインは次のシンプルな1つの原則の上に成立している。もとからあった期待によるものであろうと、期待すべきものが何であるかを明白に伝えた結果によるものであろうと、物事はユーザーが期待しているときに起こすようにしよう。(前者のほうが優れているのは明らかである。ユーザーの注意をメインのタスクからそらしてしまうことによって、説明はユーザーエクスペリエンスを自動的に低下させるからである)。

●早すぎるリクエスト: ユーザーの準備が整う前に依頼する

 このところ、iPadアプリのユーザビリティテストを最初から最後までたくさん見ている。新しいアプリをインストールした後、ユーザーが最初に目にする典型的なものが、ダイアログボックスの次のメッセージである: [このアプリ]はプッシュ通知を送信します。このメッセージの後には次の2つのボタンが続いている: 許可しないと OKだ。

 一様にユーザーは 許可しない を押す。

 既に人々はジャンク情報を十分なほど受け取っている。長年、ウェブを利用してきた結果、企業から「厳選されたお得情報」の入ったくだらない情報が送りつけられてくることに人々はとてつもなくうんざりしているのである。

 iPadアプリの利用を思い出すことで顧客のロイヤルティを劇的に高めさせる以外にも、プッシュ通知はユーザーがありがたく感じるかもしれない役立つ情報を提供していることが多い。ではなぜ、タブレットを持っていることの価値を高める可能性のある良質な情報を彼らは拒否するのだろうか。

 それはワークフローのオプトインプロンプトが誤った段階で現れるからである。あまりにも早すぎたのだ。

 そのプロンプトはユーザーが新しくインストールしたアプリを開けると現れる。つまり、当然ながら、彼らがそのアプリケーションを実際に体験し、その価値を理解する前にそれは現れるのである。こうした初期の段階では、ユーザーのそのアプリに対するコミットメントのレベルは非常に低い。したがって、彼らに多くのことを求めるのは不可能だ。なぜならば、彼らのあなた方に対する評価はまだそれほど高いものではないからである。

 モバイルアプリを対象にしたユーザー調査で、そうしたアプリは断続的に利用されるアプリである場合が多いということが明らかになっている。人々は実際の利用回数がどうであれ、利用する以上に大量のアプリをダウンロードする。そのうえ、ユーザーはこのことを自覚している。つまり、経験的に判断して、それが実際には利用しないたくさんのアプリの中の1つになる可能性が高いとわかれば、そのアプリが永遠に自分たちの負担になることを許すつもりはないのである。

 (そう、後からプッシュ通知を止めることは可能である。しかし、たいていのユーザーはシステム設定の変更方法を知らないか、そういうことにわずらわされたくないものである)。

 したがって、それよりもずっと有益なアプローチは、有用なサービスを提供することでユーザーとまず信頼という資産を築くことである。ユーザーがあなた方のことを本当に気に入って、最新情報には実際にメリットがあるということがわかるようになれば、プッシュ通知を選択するように依頼することは可能である。

 似たような例が他にもある。長年にわたって、eコマースの精算のためのガイドラインの重要なものの1つとして、顧客にそのサイトの登録ユーザーになることを要求するのではなく、「ゲスト」として買い物をさせよう、というのがある。初めて購入しようとしているときには、登録という煩わしさを受け入れるほど、人々は十分に企業にコミットしていないからである。(後になって、何回か購入してからなら、そのための適切な働きかけがあれば、たぶん彼らは登録するだろう)。

 最後の例は、B2Bサイトのテストをしているときのものである。ビジネスパーソンは販売プロセスの早すぎる段階、つまり、(見込み)客である自分がその業者を最終候補として認める前にサイトが先行情報を集めようとすると、ひどく嫌がることが多いのだ。早すぎる要求というのはまるできっかけにはならない。ユーザーはもっと歓迎してくれるサイトに行ってしまうからである。

●後でしか意味をなさない質問

 ソーシャルメディアの機能のテストをしていると、どのように利用されるのかの説明なく新規のユーザーに個人情報を尋ねるサイトをよく見かける。例えば、登録時に人々はスクリーンネームを作成するように依頼される。ユーザーの中には彼らのこの後の全ての投稿の横にこの名前が表示されることになるのを完全にはわかっていない人もいる。しかも、ユーザーのそのサイトへのアクセス方法に変更があると、後ではスクリーンネームを編集することが不可能になるサイトは多い。

 その名前がいろいろな機会に表示され、ログイン時の認証としてだけ利用されるわけではないということを知っていれば、専門家向けのサイトでSuperStud(:色男)のような残念な名前をつけて、困ってしまうのを防ぐことができるだろう。

 かなり簡単な解決方法がここにある。ユーザーにそれぞれの情報がどのように利用されることになるのかを、単に説明すればよいのだ。例えば、プロフィールや投稿がどのような見た目になるかのサンプルをユーザーに示して、実際の登録前に入力内容の編集ができるようにするのもいいだろう(もちろん、そうした説明の文章は簡潔で、十分にテストされたものであるべきである。ユーザーが説明に対して最小限の注意しか払わないのは周知のことだからである)。

 ウェブベースのアプリケーションの多くは刹那的なアプリケーションである。つまり、ユーザーはそれらを縁の薄い一過性の出会い、過去に一度も会ったことがなく今後二度と会うこともないだろう何かにさっと行ってさっと離れるもの、と見なしているのである。

 こうした環境で、しばしば目撃したのが、アプリケーションのワークフローについてのユーザーの不十分なメンタルモデルに起因するユーザビリティ上の問題である。人々はこの後、何が来るかをわかっていない。そのうえ、そのアプリケーションの目的すら理解してないということもよくある。したがって、彼らが初期段階の質問に正確に答えるというのは難しいことであるし、苦労してセットアップ機能に取り組まなければならない動機も彼らにはほとんどない。

 こうした問題への明白な解決策の1つは、セットアップの負荷を減らし、利用の初期段階でのユーザビリティを強化することである。入口の傾斜はなだらかにすることを考え、ユーザーがよじ登る必要のある壁にするのはやめよう。

 たとえ最高のデザインであろうと、だれもが何の努力もせずに何もかもを理解できるような完璧なユーザビリティを作り出すことはできない。目標はユーザーのペースを落とすことなく、彼らがワークフローを理解できる段階を準備することである。このことがオンラインコミュニケーションにおける最も難しい課題の1つであるのは明らかだろう。

●より良いワークフロー = 利用の増加

 今回の例が示すように、ユーザーエクスペリンスは、画面上に常時表示されるものだけでなく、現在の画面が今後の状態とどのように関わり合っているかにも強く影響される。また、現在の画面が過去の画面にどのように関わり合っているかにも影響を受ける。よって、こちらでの一般的なガイドラインは、当てにならない記憶にユーザーが頼らなければならない必要性を減らすことになる。

 このように、ワークフローを重視する理由の1つは、単純に言って、画面単体だけではなく、ユーザーエクスペリンス全体を考えるときに、ユーザビリティが強化されるためである。

 しかし、ワークフローのユーザビリティの向上には、よりビジネス向けの理由もある。ユーザーがユーザビリティ上の単独の問題を克服できることは多いが、彼らにとって、壊れたワークフローを直すということは非常に難しい。ひどいワークフローデザインがもたらす典型的な結末は以下のようなものとなる。

•未知のエラー。これはユーザーがAという画面で起きたことを(ずっと後の)Bという画面に関連づけて考えないときに発生する。
•放棄。ユーザーはわからないものに対しては単に見切りをつける。
•フラストレーション。これは不便なプロセスのせいで、そうあるべきと考えられるよりはるかに時間がかかるときに生じる(個々のデザイン要素がユーザーの作業を遅らせてしまうこともある。しかし、貧弱なワークフローはタスクの完了までにかかる時間を大幅に長引かせるものである)。

 3つが合わさると結果はどうなるかって? 人々はあなた方のアプリケーションを利用するのをやめてしまうだろう。逆に言えば、プロセスのフローがスムーズで、全ての手順を通して思いのままになっているとユーザーが感じれば、彼らがあなた方のところに戻ってくる可能性はより高くなるだろう。


※この記事はユーザビリティ研究者ヤコブ・ニールセン博士が運営するサイトuseit.comで連載中のコラム『Alertbox』の転載・翻訳記事です。
株式会社イードが運営する「U-site」では、博士からの正式な許可を得て同コラムの全編を日本語訳し公開しています。
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