【富士通フォーラム2010(Vol.16)】変革する富士通を見てほしい――山本社長が基調講演 | RBB TODAY
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【富士通フォーラム2010(Vol.16)】変革する富士通を見てほしい――山本社長が基調講演

エンタープライズ 企業
富士通 執行役員社長 山本正已氏による基調講演
  • 富士通 執行役員社長 山本正已氏による基調講演
 5月13日と14日の両日、東京国際フォーラムにおいて富士通フォーラム2010が開催されている。これは毎年開催されている富士通のプライベートショウだ。豊かな未来社会の創造を目指す同社の取組みについて、全111カリキュラムのセミナーと約150種ほどの展示デモなどで紹介するもの。初日のオープニングでは、富士通 執行役員社長の山本正已氏が「夢をかたちに -shaping tomorrow with you-」と題し、基調講演を行った。

◆ICTの課題と、富士通が考えるクラウドのコンセプト

 まず山本社長は、現状分析として、いまユーザが抱えているICTの課題について指摘した。実は企業のICT関連に関わる運用コストは、コスト全体の60%にも上るという。そのため新しい分野へ戦略的な投資ができないのが実情だ。このようなコストの課題を解決するキーワードが「クラウド」である。クラウドはハードウェアやソフトウェアなどのリソースを、必要に応じてネットワーク経由で利用するというアイデアだ。

 現在さまざまな企業において、クラウド化の波が押し寄せているが、富士通ではクラウド・コンピューティング時代に向け、新しいネットワークサービスを提供している。人やモノを、いつでもシームレスにつなぐグローバルな展開を図っているところだ。そして、長年の事業で培ってきたノウハウを融合し、ユーザが安心して利用できる、セキュアで信頼性の高いクラウドサービス基盤として、「トラステッド・サービス・プラットフォーム」を提供していくという。

 これは、システムリソース、ネットワーク、セキュリティ、マネジメントサービスから構成される大規模仮想化プラットフォームだ。山本社長は「富士通の強みは、従来の構築・運用ノウハウと、プロダクトからネットワーク構築までをサポートできる一気通貫の総合力にある。我々はお客様の立場で、お客様の期待に応える最適なソーシングを実現できる唯一のベンダーだ」と胸を張る。

 直近の例として、山本社長は同社の企業向けネットワークサービス「FENICS II」とクラウドサービス基盤を連携し、機械同士を接続する「M2M」(Machine to Machine)通信によるリモート監視サービスについて説明した。これは、金属加工機メーカーのアマダと共同実験が実施されており、工作機械や車載機器に専用通信モジュールを付加することで、位置情報や稼働状況を収集し、機械の保守や物流支援に役立てるもの。

 さらに、このようなクラウドサービスをグローバル化するために、データセンターも増強中だ。現在90か所のデータセンターを海外に保有し、48拠点のサポートデスクを設置、26か国でサポート対応を行っているそうだ。「富士通は世界共通のサービスによって、お客様のビジネスをグローバルに支援していく」とし、さらに今年度中にアメリカ、イギリス、ドイツ、シンガポール、オーストリアの海外5拠点にも本プラットフォームを展開する方針だ。

 一方、国内には最高水準の次世代データセンターがあり、高信頼・高品質の新しいクラウドサービスを実現するために、企業内プライベートクラウドとパブリッククラウドを融合させ、ユーザビジネスそのものを変革させる役割を担っていく方向だ。山本社長は「お客様の新しいビジネスを、お客様とともに創造する“価値創造型のICT基盤”――これこそが富士通が考えるクラウドのコンセプトだ」と強調した。

◆クラウド化の先に見えるもの~「Human Centric Intelligent Society」

 さて現在のクラウド化が進展することによって、その先には一体どのようなものがあるのだろうか? 山本社長は「経営にとって最大の課題は、環境変化に対応した企業変革。一方、生活者としてのユーザ視点では、安全・安心・快適・便利な、実りある生活が課題。企業・生活者も両者いずれもイノベーションを求めている。クラウドがICTのインフラ基盤であり、器として機能するならば、その上に何を載せるのか? ということが大切だ」と説く。

 具体的にクラウド化の先に見えてくるものは、ユーザのビジネスそのものの変革であり、さらには医療、教育、エネルギー、交通など、さまざまなシステムに対する変革である。それは、単に企業システムだけにとどまらず、膨大なデータを収集して活用するセンシングや、高度なセキュリティや信頼性が求められる社会システムへも適用される「ハイブリッド・クラウド・インテグレーション」を喚起していくという。

 かつてICTといえば、省力化による生産性向上を目指す「コンピュータ・セントリック」なものであった。これは、人間がコンピュータにデータを入力する、いわばコンピュータに使われる存在を意味するものだ。その後、ビジネスプロセスの変革を図るために、データを効率的かつスムーズに使う「ネットワーク・セントリック」の世界が広がった。そして、いまやクラウド化の進展や、センサー、携帯、モバイルなどの技術によって、さまざまなサービスが生まれつつある。

 山本社長は「これからの時代は“ヒューマン・セントリック”の時代だ。クラウド化は、技術をブラックボックス化し、技術中心から人中心へ変えていく象徴的な事象。個人の生活や社会の中で飛び交う膨大なデータをセンサーやデバイスで蓄積し、それらを絞り取って価値のあるサービスへと変換していくことが“実践知”につながる。そして実践知が満ち、人々の暮らしを支える社会が、富士通のビジョンとなる“Human Centric Intelligent Society”だ」と述べた。

 さらに「この実践知を、ユーザの新しいビジネス領域として創出し、社会システムの変革に投影していきたい。今後10年間、富士通は総力を結集して、このHuman Centric Intelligent Societyを追求していく」と新ビジョン実現に向けた意気込みを表明した。そして、すでに開始されているインテリジェント技術の取組みについても、以下のような4つの分野を対象に具体的な事例を示した。

【エネルギー分野】
 家庭に配備された電気などの料金メーターをインテリジェント化。ネットワークで電力使用量を定期的に自動収集する(発電・配電の最適化)

【保守・監視分野】
 前述のアマダとの共同実験。工作機械などに通信モジュールを付けて位置情報や稼働状況を収集し、機械の保守に役立てる(問題を未然に防ぐ保守サービスの革新)

【物流分野】
 トラックに内蔵されたセンサー情報をデータセンターに送って、Web上で動態情報を把握する(配送状況を見える化し、還流負荷を低減)

【ヘルスケア・医療分野】
 バイタル情報を製薬会社、保険会社、自治体などで利用することで新しいビジネスを創造する(個人の健康情報を利用した健康社会の創造)

【環境分野】
 ユーザのネットワークを使って、さまざまな拠点の環境をセンシングしながら、管理・監視するクラウドサービス(大気・土壌・水質汚染などの監視)

【農業分野】
 土壌、作物、作業などの状態を刻々と集約し、農業のノウハウとして見える化するサービス(農業初心者へのベテランのノウハウ伝授)

 このほかにもHuman Centric Intelligent Societyを実現する要素技術も紹介された。これらは、センサー、ネットワーク、コンピュータサイエンス、情報分析アルゴリズムが鍵となるものだ。

【インテリジェントネットワーク技術】
 アドホック通信技術「WisReed」(ウィズリード)により、大規模ネットワークを自動構築。通信品質などの状態を監視しながら、個々のノードが隣接するノードに対し、最短経路を学習しながらセンターに情報を伝達する。

【ハイパフォーマンス・コンピューテイング技術】
 次世代スーパーコンピュータとグリッド技術によって、ライフサイエンス、ナノテク材料、社会基盤などに活用。精緻な心臓シミュレーションにも応用されている

【リスクマイニング技術】
 大量の定型情報と不定形情報を活用し、リスクの要因分析、評価、対策立案を支援する。手間暇を省き、新たな分析を行うことができる

【大規模複合シミュレーション技術】
 海洋モデルを作製し、地球全体の循環をシミュレーションすることで、気候変動の緩和や対策立案に大きく寄与する

 Intelligent Societyに必要なのは、このような要素技術だけでなく、実はビジネスモデルも重要になるという。山本社長は「これらデータの知識処理技術を、業界横断的に連携することで、新しいビジネスモデルが創出されるはず。業界ごとのサービスの連鎖、あるいは異業種との連携による水平・垂直の結び付きで、大きな価値が生まれるだろう」と述べた。

◆「先端技術が集結」~富士通フォーラム2010の見どころ紹介

 また、富士通フォーラム2010の具体的な見どころについての紹介もなされた。今回のイベントのテーマは、基調講演と同様に「夢をかたちに -shaping tomorrow with you-」だ。夢をかたちにする最先端の製品やサービスが登場している。

 山本社長は、東京証券取引所の取引システム「arrowhead」の稼働事例や、クラウドコンピューテイング向けサーバプラットフォーム「PRIMERGY CX1000」、大規模なシステム運用に応える性能・拡張性を備えた最新ブレードサーバ「PRIMERGY BX900」、スタイルフリーのセパレート携帯電話「PRIME SERIES F-04B」、リモート消去によってモバイルPCの紛失・盗難対策が可能なセキュリティソリューション「CLEARSURE」、計算化学統合プラットフォーム「SCIGRESS」などについて簡単に触れた。

 最後に山本社長は、富士通のICTを活用した社会的責任の活動の一環として、ウガンダでWiMAX端末に半導体技術を提供するなどの、同社のCRS活動への取組み姿勢を紹介し、今後も「お客様のお客様起点」「グローバル起点」「地球環境起点」という3つの経営方針を着実に進めていくとし、「ユーザとともにひらめきを共有していきたい。変革する富士通を見てほしい」と述べて、講演を終えた。
《井上猛雄》
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