【地域WiMAX:機器ベンダーに聞く】各国製品との相互接続性試験を積極的に実施ー——日本無線 | RBB TODAY
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【地域WiMAX:機器ベンダーに聞く】各国製品との相互接続性試験を積極的に実施ー——日本無線

エンタープライズ モバイルBIZ
BWAプロジェクト長の村上文夫氏
  • BWAプロジェクト長の村上文夫氏
  • 日本無線の地域WiMAX基地局装置「NTF-302」(日本無線 提供)
  • NTF-302はASNの2つの構成(プロファイルBおよびC)に対応(日本無線 提供)
  • BWAプロジェクト システム企画チームリーダー 担当部長の小林保氏
  • インタビューに答える村上氏と小林氏
 日本無線(JRC)は、主に産業用および公共用の無線通信システムを製造販売している国内の通信機器メーカーだ。モバイルWiMAXシステムの開発は2004年に立ち上げており、今年3月には地域WiMAX用基地局装置「NTF-302」の受注を開始。また、各国の機器ベンダーらが相互接続性を検証する「モバイルWiMAX Plugfest」への参加を始めとして、オープンな地域WiMAXネットワークの構築に向けた取り組みも進めている。

 1915年の創立以来、無線通信の発展とともに歩んできたとも言える同社は、いよいよ動き出した日本の地域WiMAXにおいて、どのような製品・サービスを投入してくるのか。同社のBWAプロジェクト長の村上文夫氏、BWAプロジェクト システム企画チームリーダー 担当部長の小林保氏に話を聞いた。

——まず、これまでのモバイルWiMAXに関する取り組みについて教えてください。

村上氏:モバイルの技術は固定系のアプリケーションにも使えるという応用性があること(固定WiMAXをモバイルのアプリケーションに使うことはできない)、将来的にモバイル市場の拡大による機器の低価格化が見込まれること、この2点から当社は、WiMAXの中でもモバイルWiMAXに着目しました。2004年の開発当初より、OFDMA(直交周波数分割多元接続)技術をワイヤレスの世界に持ち込んだ先駆者として知られるRuncom Technologies社(イスラエル)と協力関係を結び、モバイルWiMAXシステムの開発を展開しています。

モバイルWiMAXは世界的にオープンな規格ですから、他社製品との相互接続性試験にも積極的に取り組んでいます。端末に関しては、「Mobile WiMAX Plugfest」に当社の基地局を持ち込んで、各国の端末ベンダーとの相互接続性試験(IOT)を継続的に行っており、次回2008年6月、スペイン・マラガで開催されるPlugfestにも参加します。またプライベートなIOTとしては、端末用ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を開発されている富士通マイクロエレクトロニクス様との接続試験を継続的に実施しています。また、沖電気様、NECアクセステクニカ様の端末装置とのIOTも実施しております。さらに、Starent Networks様をはじめとしてASN-GW(Access Service Network Gateway)装置とのIOTや、CSN(Connectivity Service Network)を含んだシステム動作検証も進めている状況です。

——地域WiMAX用基地局装置「NTF-302」の受注を3月から開始しましたね。

村上氏:はい。NTF-302は、コンパクトかつ屋外設置可能な筐体に、必要な全コンポーネントを収容していますので、NTF-302を1台設置していただけば基地局として機能します。また、日本国内のスペクトラムマスクに適合するためのバンドパスフィルタを内蔵していますので、隣接する全国バンドとの電波干渉を回避・低減できます。

NTF-302はASNのプロファイルBおよびCの2つの構成に対応しています。プロファイルBの場合は各基地局がASNに必要な機能を実装し、ASN-GW装置に接続する必要がないため、小規模なネットワークからスタートして初期投入コストを抑えたいといったニーズに応えることができます。プロファイルBを好まれる事業者様が多いと伺っています。もちろん、どちらのプロファイルも同じ装置で対応していますので、BからCへの拡張も、ソフトウェア交換のみで可能です。

また、スターターキット「CSN Lite」や管理ソフト「EMS」(Element Management System)など、地域WiMAXを導入・運用される事業者様を支援するツールもご用意させていただきます。

——端末も新たに開発されていますね。

小林氏:はい。屋外固定端末を現在開発中です。地域WiMAXが脚光を浴びてくるようになり、日本国内で地域WiMAXに使えて、比較的ロングスパンで通信可能な端末の必要性も出てきました。ニッチな分野ではありますが、逆に当社の存在感を示すことができると考えています。今年度内には出荷開始できる予定です。

村上氏:屋外固定端末は、端末を含めたエンドツーエンドのソリューションが要求される事業者様からもニーズがあると見込んでいます。カード型やUSBドングル型のモバイル端末は他社様がこれから出してこられると思いますが、固定端末は国内では他にありません。海外製の屋外固定端末はもう少し大きくてアンテナ利得が高いため、国内では過疎地、離島部、山村のような特殊な地域でしか免許が下りない高利得FWAに分類されます。しかし当社の屋外固定端末の場合は、アンテナ利得が2dBi以下で、モバイル端末と同じになっています。

——これからどのような地域WiMAX戦略を展開されるのでしょうか?

小林氏:当社の地域WiMAXビジネスのスキームは大別して2つあります。1つは、システムインテグレータ様や工事会社様を通じて、CATV事業者様や電力系の固定通信事業者様へ機器提供させていただくスキーム。もう1つは、当社が長年にわたり地域自治体向けに展開しているソリューション事業のスキームです。防災システムや地方情報基盤整備事業などのインフラの一部として、WiMAXを使っていこうという動きがありますので、無線LANシステムや、25GHz帯小電力通信装置など、当社の他の無線システムを組み合わせ、システムをご提供させていただきます。

今後のスケジュールとしましては、6月に免許が交付された場合に11月か12月には開局していただけるよう、基地局装置「NTF-302」の出荷は10月を予定しています。技術基準適合試験に関しても、8月頃をめどに受験予定ですので、事業者様の免許手続きを簡便化していただけます。

——日本の地域WiMAXに何を期待しますか? また、日本無線は何を目指しますか?

小林氏:法的にも技術的にも、自営のネットワークでモバイルサービスを展開できる環境が整ったことで、事業者様は次のビジネスへのブレイクスルーになるという期待を持たれていると、私どもは感じています。地域バンドも、UQコミュニケーションズ様が提供される全国バンドとまったく同じ仕組みですので、端末の共有化やサービス連携など、これまでのモバイル通信ビジネスでは成しえなかったことができるチャンスです。地域の事業者様の新しいビジネス展開を、装置のご提供を通じてお手伝いさせていただきたいと思います。

——ありがとうございました。

◆日本無線のWiMAX製品(2008年5月現在)
 WiMAX Forumの認証に関しては、開発協力会社であるRuncom Technologies社がWave1(2.3GHz帯)認証を最初に取得した4社のうちの1社。Wave2(2.5GHz帯)に関しては、JRCがNTF-302で年内に取得する予定という。

・基地局装置「NTF-302」(2008年10月出荷予定)
 ネットワークインタフェース部、IEEE802.16e-2005準拠のベースバンド処理部、MIMO(Matrix A/B)に対応する2系統の無線部、およびGPS発振器を実装したオールインワンタイプの地域WiMAX用の基地局装置。出力は0.5〜5W。カスケード接続することによるマルチセクタ構成も可能。

・屋外固定端末(2008年度中出荷予定)
 送信出力200mW、アンテナ利得 2dBi。アンテナ内蔵のためアンテナ工事不要、屋内ユニットからのイーサネット給電対応、防水構造(保護特性IP43)、端末認証ソフト(サプリカント機能)実装などの特徴をもつ。
《柏木由美子》
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