【「エンジニア生活」・技術人 Vol.5】使いやすい仕事仲間のようなプリンタを目指す——OKIデータ・山本勉氏 | RBB TODAY

【「エンジニア生活」・技術人 Vol.5】使いやすい仕事仲間のようなプリンタを目指す——OKIデータ・山本勉氏

エンタープライズ その他

OKIデータNIP事業本部カラーSFP事業部次世代戦略商品開発担当プロジェクトリーダ(部長)・山本勉氏
  • OKIデータNIP事業本部カラーSFP事業部次世代戦略商品開発担当プロジェクトリーダ(部長)・山本勉氏
  • オフィスの文書出力でお馴染みのページプリンタ。その中で、独自技術を使ったLEDプリンタの開発を手がけるOKIデータのエンジニア、山本勉氏に同製品のビジョンを聞いた。
  • オフィスの文書出力でお馴染みのページプリンタ。その中で、独自技術を使ったLEDプリンタの開発を手がけるOKIデータのエンジニア、山本勉氏に同製品のビジョンを聞いた。
  • カラーLEDプリンタC3400
  • C3400のフロントカバーを開けるとその裏にLEDヘッドが並ぶ
 「プリンタはオフィスでの仕事仲間。だから、みんなが使いやすいものにしていきたい」と話すのは、OKIデータNIP事業本部カラーSFP事業部で次世代戦略商品開発を担当するプロジェクトリーダ(部長)の山本勉氏だ。

 昨年12月10日、カラー毎分30枚でクラス最小のA3カラーLEDプリンタがOKIデータから発表された。LEDプリンタとは同社のかんばん製品で、それの開発に長年携わってきたのが山本氏。OKIデータは、1994年にOKI(沖電気工業)の100%出資で設立されたメーカーで、主に中小規模事業者向けページプリンタやインパクトプリンタの開発・製造および販売を行っている。売り上げの約8割は海外で、とくに欧米での販売力が強い。だが、同社が開発・製造するLEDプリンタは他メーカーのページプリンタとは大きくちがう。普通、オフィス向けのページプリンタと言えばレーザープリンタが主流だが、同社製品は感光ドラムに光を照射する、いわゆる光源部にLEDを採用したLEDプリンタなのだ。81年に世界初となるLEDプリンタを世に送り出して以来、現在まで同プリンタの開発にこだわり続けている。レーザー方式に比べ、プリンタエンジンがコンパクトで高速・高画質な印字なのが最大の特徴。

 ページプリンタは感光ドラムにトナーを付着させ、それを熱と圧力で紙に転写してプリントする。これをエンジンと呼び、光源部と感光ドラムによってできている。レーザー方式の場合、レーザービームをポリゴンミラー(回転多面鏡)で感光ドラムに照射する仕組みで、どうしても光源部と感光ドラムの距離が最低数十cmは必要。一方、LED方式は感光ドラムに直接照射するというシンプルな構造で、光源との距離は僅か1cmで済む。LEDプリンタはテレビに例えると液晶、プラズマテレビでレーザープリンタはブラウン管テレビだ。つまり、ブラウン管テレビは大画面化しようとすると奥行きが広がってしまうが、液晶・プラズマテレビは薄型のままで大画面化できる。エンジンがコンパクトなので、本体自体も小さくなる。限られたオフィススペースを有効に使うことができるわけだ。また、LED方式はB0版など大きな用紙への印刷にも対応できる。レーザー方式は大きな用紙に印刷するにはエンジンの幅だけでなく奥行きまでもが大きくなりすぎてしまい、製品化は現実的に不可能。だが、LED方式は幅が広がるだけなので、大判印刷は比較的容易だ。

 その他、印字がシャープ、プリントスピードが速い、光源部の耐久性の良さなどが挙げられる。こうした特徴のあるLEDプリンタの開発に長年携わってきたのが山本氏であり、同プリンタの次世代機の開発に現在取り組んでいるところなのだ。

■世界最小/最速のプリンタをつくる

 山本氏は1985年に入社。同社前身のOKI情報処理事業本部に配属。最初はLEDプリンタではなく、インパクトプリンタ開発だった。93年に、初めてLEDプリンタの開発に従事する。

 当時、プリンタはコンパクト、高速化の必要に迫られていた。それはインクジェットプリンタの普及の影響が大きかったのだ。カラーレーザープリンタは大きすぎて、スペースの限られたオフィスには向いていなかった。そこへ、導入コストが安くコンパクトで高画質なカラープリントができるインクジェットプリンタが登場した。「これに対抗するため、LEDプリンタを進化させたのです。今もこの戦いは続いています」。PCの普及が進むに連れてオフィス向けのカラープリント需要は年々増加。そうした中、LEDプリンタはめざましい進化を遂げていたのだ。

 そして、95年に当時、世界最小のA4モノクロLEDプリンタ「マイクロライン4w」を開発する。LED方式はコンパクトなプリンタがつくりやすい。だからといって、簡単にマイクロライン4wができたわけではないという。「まず、用紙のプリンタへの通し方を工夫しました。横からではなく縦に近い状態で入れて、中で360度回転させて印字することで、スペースを節約したのです。また、モーターを2個から1個に減らして、駆動部を小さくしました。こうした取り組みを積み重ねてコンパクトにしていったわけです」と説明。さらに97年には毎分21枚の世界最速のA3カラーページプリンタを生み出す。「このときは、プリントスピードを高速化するよりも、別のことで苦労しました。用紙にトナーを定着させるオイルヒーターという消耗部品があり、これを何とか省くことで、お客様にとって面倒な交換の手間を減らすという命題に取り組んでいたのです。これがとても難しかった」とのこと。

■プリンタ開発を離れて見えてきたもの

 エンジニアのキャリアをここまで積み上げてきた山本氏だったが、2000年に開発部から離れることになる。全社の事業戦略を立案する経営戦略室への異動を命じられたのだ。さらに、2003年にはサプライ事業部で用紙やトナーなど消耗品の事業企画を担当する。「このときはさすがに開発には2度と戻れないと観念しました(笑)」。

 だが、山本氏は腐らなかった。サプライ事業部では、直接ユーザーのニーズや営業サイドの声が聞けたので、それがエンジニアとしての開発アイディアにも将来生きると前向きに考えたからだ。「ユーザーニーズを無視した製品の開発はあり得ない。ただ高性能であればいいというわけではないということを肌で感じました」。

 2006年にエンジニアに再び返り咲く。しかも、同社の主力中の主力であるカラーLEDプリンタの次世代機の開発責任者として。

■使いやすく、デザイン重視のプリンタ

 次世代カラー機の開発プロジェクトのリーダーに指名された山本氏。これからのプリンタの開発ポイントは「使いやすさ、そして、オフィス環境に馴染む製品」ということにたどり着いた。事業部での経験で、ユーザーのニーズは従来のスピードやコンパクトだけではないと学んだからだ。

 「当社の主力販売先である中堅・中小規模事業者では、プリントスピードや画質以上に誰でも簡単に設定・操作できること、これが肝心です。『プリンタは設定がむずかしい』というユーザーの声が少なくない。また、消耗品の交換方法もよくわからないというユーザーもいるからです。まだまだメーカーの我々の努力が足りないということですよ」と説明。

 その他、「消耗品交換の手間を減らして欲しい」「プリンタの駆動音がうるさくて、仕事の邪魔になる」など、プリンタへの課題は意外に多い。これらをひとつずつクリアーしていくこと。そして、「オフィスにあって違和感のない存在であるためにはデザインも重要です」という。オフィスにあるプリンタといえば、形は長方形でカラーはベージュをイメージする。が、これからのプリンタはそうではいけないというのだ。「この前開かれた役員会でプリンタのデザインの案件が議論になりました。そこで、オフィスと調和するプリンタのデザインは従来の長方形でベージュ一辺倒ではいけない。これからは斬新なデザインが求められるという内容でした」。詳細は明らかになっていないが、いくつかの新しいデザインモデルが検討中だそうである。

 オフィス向けページプリンタは、さらに時代の変化に適合して進化していく。「現在はSFP(単機能プリンタ)が主流ですが、近い将来、MFP(多機能プリンタ)に移行していくでしょう」。MFPはプリンタ、スキャナ、コピー、ファックスといった機能を1台に集約した製品で、事務機器をいくつも設置するスペースのない小規模オフィスにとって重宝なのだ。すでに、同社ではMFPのラインナップ化を急いでいる。また、いつでもMFPのエンジンとして搭載可能なSFPを準備しているという。
 「オフィスの電子文書化によるペーパーレスの時代と言われて久しいが、逆に、カラーを中心にプリントは増え続けている。まだまだプリンタの役割は大きいし、改良の余地はある。これからもLEDプリンタのエンジニアとして、ユーザーの期待に応えられる製品をどんどんつくっていきます」と抱負を語る。

 山本氏のエンジニアとしてのキャリアは、プリンタの進化とともにさらに、積み上がっていくだろう。
《羽石竜示》

特集

page top