【ワイヤレスジャパン2007 Vol.3】KDDIがFMBCを実現する——KDDI会長・小野寺正氏の基調講演 | RBB TODAY
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【ワイヤレスジャパン2007 Vol.3】KDDIがFMBCを実現する——KDDI会長・小野寺正氏の基調講演

エンタープライズ モバイルBIZ
KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏
  • KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏
  • 通信事業の競争環境。非通信分野からの新規参入が相次いでいる
  • KDDIの事業別売上高
  • コンシューマ向けにFMBCを展開することを重視
  • ビジネス向けにはICTプロバイダを目指すことを重視
  • Google導入により、公式サイトへの誘導数が公式メニュー経由に上乗せされる形で増加
  • EZ GREE、DUOGATEなどCGMが今後のアップリング増に結び付く
  • IPv6によるコアネットワークを、携帯・ワイヤレス・ブロードバンド・デジタル放送が取り囲むのがKDDIのウルトラ3G構想
 7月18日〜20日に東京ビッグサイトにて開催の「ワイヤレスジャパン2007」。その初日18日の基調講演にNTTドコモ代表取締役社長・中村維夫氏に続いて、KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏が登壇し、「FMC時代のマーケットリーダーへ!ユビキタスソリューション事業の全貌」と題した講演を行った。

 まず小野寺氏は、「通信市場の競争環境」というマトリクスを表示させたうえで、電話・ブロードバンド・放送映像配信といったサービスにおいて、J:COM、USEN、GyaOなど非通信分野からの新規参入が見られる状況を踏まえ、携帯においても同種の状況が起きると予測する。

 KDDIにおいては、移動通信事業が連結売り上げの4分の3をすでに占めており、「いずれ人口によって行き詰まってくるのは間違いない」とし、自社のコンシューマ向けソリューションを「お客様向けの事業に変えていこう」という、基本に立ち返ったものに立脚する方針を示した。

 そしてその具体的な施策が、「Fixed」「Broadcast」「Mobile」の3軸からなる「FMC/FMBC展開」(Fixed Mobile Convergence / Fixed Mobile and Broadcast Convergence)であるとした。FMC/FMBC自体は、携帯電話・ワイヤレス機器・ブロードバンドなどをそれぞれシームレスに使えるような、機器を選ばないサービスだ。小野寺氏はこれを、「お客様が利用デバイスを区別することなく、多様なコンテンツをいつでもどこでも利用できる」と表現。“集約”による一環サービスを提供することをKDDIは目指す、とした。

 またビジネス向けソリューションとしては「ICTプロバイダ化」を掲げ、宅内を含めたソリューション提供、SaaS(Software as a Service)によるアプリケーション提供、FMC強化などによるオールラウンドプレイヤーを目指す。コンシューマ、ビジネスいずれにしても、核となる概念はFMBCであり、目指すは“集約”によるシームレス化だ。

 まずコンシューマ分野のサービスを説明するとして、小野寺氏は「LISMO」を例にあげ、PC←→携帯間での連携など「iPod、iPhoneの先を行っていると自負している」「映像の世界にも進んでいきたい」と、KDDI/auの先進性を強調した。

 Googleとの連携については、PCサイトビューアではオープン化(無料サービスなど)が進み、EZwebではダウンロード系有料のコンテンツが中心になるという、2極化が進んでいくことを指摘する。実際、携帯サイトへのアクセスについては、公式サイトへの誘導数が公式メニュー経由に上乗せされる形で増加した事実を明らかにした。検索以外のWeb2.0潮流として、CGMへの積極的な取り組みについても「各サービスに個人が参加する要素を追加したい」とし、その結果としてアップリンク増の需要が今後出てくるだろう、と予測した。

 独自展開中のMediaFLOについては、「ワンセグがあるのに(MediaFLOを)やるのは、携帯端末向けに特化したサービスだからだ。次世代のマルチメディア放送サービスを自ら手がけて、統合サービスを携帯1台で提供したい」と、ここにも“集約”というキーが顔を覗かせる。

 続くビジネス分野のサービスについては「まったく違う要望がある」とし、「ワンストップ化」と「シームレス化」の2点を挙げた。ワンストップ化については、WANとLANの運用とサポートが別になっている点などを指摘、固定とモバイルのシームレス化については音声とデータの分離や、デバイスの分離を指摘し、対策としてSaaSにより一体型の運用・監視のICTソリューションを提供していくとした。小野寺氏は、「そうするとそこで重要になるのが“法人端末戦略”」と、“バッテリーの持続時間”と“高セキュリティ”という、コンシューマとはまた異なる法人のニーズについて解説した。

 そして、「FMBCの実現が最重要」であるとし、ユビキタスソリューションを支える技術開発としての“ウルトラ3G”を目指しているとした。「携帯を使った認証は容易であり、それを情報家電と連携させるなどが重要」であり、新しい無線方式・固定を含む多様なアクセスを相互連携させ総合サービスを提供できる3Gネットワークを発展させるというものだ。

 そしてその具体的な技術体系として、DLNAの広域利用、コグニティブ無線、UMB、認証セキュリティ技術などをあげ順次解説する。特に、コグニティブ無線技術の解説では、今週発生したばかりの中越地震について触れ、こういった災害時の「迅速な自立ネットワークの構築に有効である」とし、総務省の委託研究としても進めている状況に言及した。通信放送連携サービスでは、「ネットに放送を載せるのではなく、逆に、地上波のデジタル放送にネットを載せてしまおうという発想」で「大きな技術の進展になるのではないか」と自社技術に期待を寄せる。そのほかにもID連携(ポータル連携)による事業ドメインをまたがる端末間の利用、情報家電の相互接続についても積極的に取り組んでいる姿勢を明らかにした。

 今後の事業展開については、現在、移動体関連産業が11.6兆円市場(通話通信料のみなら6.9兆円)になっていることから「われわれが通話料のことだけを考えていてはまずい」と、波及するさまざまな市場に対しても責任を持つ立場であるという認識を示し、MVNOにおいても「現在の携帯ではなくMVNOのほうが強みを発揮する市場が必ず存在する」として肯定的だ。

 そして最後に、海外マーケットを視野に入れたメーカーとオペレータの役割分担について、術開発、標準化、知財戦略はメーカーのものであるとしつつ、自作PCを例にとり、「デルのように完成品を売るのか、それとも組み立てのためのコンポーネントを売るのか、日本の国際競争力といった話の場合は、そういった観点で十分に検討する必要がある」とし、オペレータ=KDDIの立場から、ICT産業全体への国際競争力強化を強く呼びかけた。

 携帯電話のキャリアに留まるのではなく、広く市場と世界を見据えた、KDDIらしい基調講演であった。
《冨岡晶》
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