フルライン・フルレイヤの総合力で売上1兆円へ——NECのNGN事業戦略 | RBB TODAY
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フルライン・フルレイヤの総合力で売上1兆円へ——NECのNGN事業戦略

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NEC我孫子事業場
  • NEC我孫子事業場
  • NEC執行役員専務の広崎膨太郎氏
  • NGNが新たなサービスを喚起する
  • キャリアネットワーク分野の市場予測
  • NGNで使われる機器をすべて自社製品でまかなえるNEC
  • NC5000の登場により、トランスポート側の準備が整った
 NECは千葉県我孫子市の我孫子事業場に報道関係者を招き、NECのキャリアネットワーク事業戦略について説明会とデモンストレーションを行った。NECの総合力と、キャリアネットワーク事業における国内外の実績、10年以上にわたる技術研究を結集し、2007年中期見込みで1兆円、うちNGN(次世代ネットワーク)市場で4000億円の売上を見込んでいる。

 この説明会はNECがトランスポート制御基盤ソフトウェア「NC5000シリーズ」を製品化し、本日から通信事業者やISP/ASP事業者に対して販売活動を開始したことに合わせて実施された。「NC5000」シリーズはNGNのトランスポート層に位置し、ユーザのアクセス認証や、ユーザの要求に基づいて帯域の確保や優先制御を行う。NECはすでにネットワークサービス基盤の「NC7000」シリーズとネットワーク制御基盤の「NC9000」シリーズを製品化している。今回、ネットワークアクセスの入り口とも言える「NC5000」シリーズを製品化したことで、NGN用ソリューションのすべてを網羅した世界唯一のメーカーとなった。

 説明会はプレゼンテーションとデモンストレーションの2部構成となっていた。プレゼンターはNEC執行役員専務の広崎膨太郎氏。広崎氏はNGNについて「オールデジタル・オールIP化による、業界の垣根を越えた新しい事業モデルの可能性を広げる」と期待を述べた。NGNは通信事業者、検索や動画などのポータルサイトサービス事業者、放送、コンテンツ事業者が新しいサービスを始めるために不可欠。そこでNECでは、国際標準化機関の定義よりも、もっと広い領域を対象としている。

 NGNは従来インターネット上に混在していたオンラインサービスとネットワークインフラに対して、高品質を保証し、管理の行き届いたネットワーク環境を実現する技術だ。インターネットはそれぞれの事業者が簡単に参入でき、エンドユーザが手軽に利用できる。しかし、その反面、ネットワーク帯域についてはベストエフォードが前提であり、サービス事業者からエンドユーザまでの通信品質を保証する管理者がいない。また、セキュリティに関してはユーザー側の責任に追うところが大きい。
 しかし、NGNはネットワークの管理機能を持ち、QoS(帯域保証)を完備し、SLAによる品質保証が行われる。これはネットワークの相互接続において、ネットワーク事業者の責任分担を明確化すること、シームレス・サービスを実施し、多様なサービスを効率的に導入できる。つまり、従来の雑多で混沌としたインターネットに付加価値を与えて、より高品質なネットワーク構築を目指す。

 NGNの特徴はトランスポート層とサービス層の2レイヤ構造となっている。トランスポート層の技術革新では、光IPネットワーク、光アクセス、ワイヤレスアクセスの技術によってユビキタス環境とコストパフォーマンスの高い高速通信を実現する。サービス層の技術革新では、認証、課金、映像管理などの新しいビジネスチャンスを生み出し、ITサービス事業領域を拡大していく。NECの強みはトランスポート層とサービス層のどちらにも技術や製品群が用意されていることである。

■総合力で世界トップに君臨

 続いて、NECのキャリアネットワーク事業の現状と今後について説明が行われた。キャリアネットワーク事業ではNGNのサービスプラットフォームのSDP(サービス提供基盤)、IMS/MMD(ネットワーク制御基盤)と、ネットワークインフラのトランスポート制御基盤、光IPトランスポート、アクセス関連分野を取り扱う。2006年度3月時点のネットワークシステムの売上規模は9929億円。このうちキャリアネットワーク向けの売上は約70%。そのキャリアネットワーク売上の国内と海外の比率は7対3となっている。この売上を生み出すためにNECで貢献する人員は約1万人。キャリアネットワーク事業の関連拠点は国内12社、海外27社となっている。

 キャリアネットワーク事業の市場規模は、国内の成長規模は約3%。日本国内ですでにインターネット向け市場が飽和しており、今後はNGNに向けだインフラの向上や新サービスの拡大を見込むことになる。海外市場は5%の市場成長を期待している。これは先進国市場の景気回復、エマージング市場の成長が反映された。

 NECのキャリアネットワーク事業の強みは、インフラからサービスアプリケーションまで、NEC製品がフルラインで対応できること。サービスプラットフォームにおける開発力と実績、NGNを先取りし、10年以上にわたってテクノロジー・イノベーションを続けてきたこと、海外市場での実績が積み上げたブランド力にある。特にNGN先進国の日本では、固定通信機器、WCDMA基地局数でトップシェアを持っている。また、ソフトウェア面でも全社横断的なソフト開発力を持っており、キャリアネットワーク事業開発全体のうち、ソフトウェア用人員は約7割となっている。国内キャリア向けのソフトスイッチシェアは55%だ。海外市場では、マイクロ波電送装置は世150か国のキャリアに実績があり、局用交換機では71か国、ワイヤレスアクセス装置パソリンクは123か国などの実績がある。

 NECではこれらの強固な基盤の上で中期事業ビジョンを策定した。その1つはグローバルメジャープレイヤーであり続けること。もう1つはソフトウェア事業モデルや製品開発プラットフォームの共通化を進め、ビジネスモデルの改革による強い事業体づくりだ。これが前述の売上1兆円、NGN売上4000億円の根拠となっている。NECはソフトウェアビジネスモデルの改革と共通プラットフォーム化の追求により、機器の普遍化や代替可能化に流されないビジネスモデルを構築していく。

 広崎氏は最後に「10年前にPCの分野で起こったダウンサイズ化が、いまネットワーク分野で起きている」と語り、ソフトウェアを軸とするビジネスモデルへ構造を変えることの重要性を説いた。また、モバイル分野で交換局と基地局を結ぶ標準化プラットフォームとして「パソリンク」が世界的にヒットしていることから「あと1年で世界シェアトップとなる」と強い自信をを見せた。

※人名に誤りがありました。読者の皆様、並びに関係者の皆様にはご迷惑をおかけしました。お詫びして訂正いたします。
《杉山淳一》
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