京都の飲食店で「外国人だけ高いメニューを出されたのではないか」という疑惑が浮上し、韓国で大きな波紋を広げている。
発端となったのは、韓国のYouTubeチャンネル「channel CKOONY」が7月12日に公開した動画だ。
登録者数66万人の同チャンネルは、中国人の知人とともに京都の飲食店を訪れた際、英語メニューと日本語メニューの価格に差があったとして、その様子を動画で伝えた。
この動画を紹介した韓国語のX投稿は、1000万回以上表示されるほど拡散。さらに韓国メディアも相次いで取り上げ、「外国人ぼったくり」「二重価格」疑惑として報じている。
「露骨な二重価格制と差別」
動画内で問題視されたのは、店側から渡された英語メニューの価格だ。
韓国メディアによると、動画主らは京都のある料理店を訪れ、英語メニューを見て「一番安いものが寿司3個で2万ウォン(約2000円)」と驚いた。

実際、映像に映った英語メニューには、マグロ寿司3貫が1800円、税込1980円と表示されていた。
その後、動画主らは店員に日本語メニューを求めた。すると、動画主らは日本語メニューにはより安いメニューがあるとして、「日本語メニューのほうがはるかに安い」と疑問を呈した。
韓国メディアもこの騒動に反応している。
『文化日報』は「英語メニューがより高い、京都食堂の外国人ぼったくり」と報じ、『マネートゥデイ』も「寿司3個で2万ウォン」と題して、現地人用と外国人観光客用のメニューに価格差があると伝えた。
また『ソウル新聞』も「日本の京都の飲食店で、日本語メニューと英語メニューの価格差が大きいと伝えられた。外国人観光客により負担を負わせる構造だ」と報じている。
ただし、この騒動をそのまま「京都の店が外国人を差別した」と断定するのは、少し急ぎすぎかもしれない。
まず、問題の動画を投稿した「channel CKOONY」は、日本関連の歴史認識問題や対日感情を批判的に扱うコンテンツも少なくないチャンネルだ。

今回の動画タイトルにも「二重価格」「日本人の反応」といった表現が使われ、概要欄でも「外国人という理由で門前払い」「露骨な二重価格制と差別」といった強い言葉が並んでいる。
もちろん、動画主の傾向だけで主張そのものを退けることはできない。しかし、映像が最初から日本の飲食店対応への問題提起として構成されている可能性は踏まえる必要がある。
公式サイトを確認すると…?
実際、SNS上では反論も出ている。
あるユーザーは、英語メニューは外国人が選びやすいようにコースや代表的なメニューを中心に整理されており、日本語メニューは単品料理が細かく並んでいるのではないかと指摘した。
単品の価格については日本語メニューと英語メニューで同じものもあり、「単純に外国人だけ高くしているとは言えない」という見方だ。
また、動画主が日本語メニューを十分に読み取れていないまま、「スキャム」「怪しい」と判断しているのではないかという指摘もある。店員側からすれば、入店直後に日本語で会話していない客から日本語メニューを求められ、さらに疑いの目を向けられれば、戸惑うのも無理はないという反応も見られた。
一方で、「では完全な誤解なのか」といえば、そうとも言い切れない。
議論となっている店の公式サイトを確認すると、同じ写真に見える鍋料理が、日本語メニューでは税込2145円、英語メニューでは税込3278円で掲載されている部分がある。


ただ、写真だけを見ると同じ料理のようにも見えるが、日本語メニューでは「豚肉と九条ねぎと白葱の葱ざんまい鍋」、英語メニューでは「黒毛和牛と豚肉のねぎ鍋」と説明されている。
つまり、英語メニュー側には「黒毛和牛」が含まれているため、完全に同じ料理だとは断定できない。材料が違うなら、価格が違うのも不自然ではない。
それでも、写真や見た目が非常に似ている料理について、説明や価格が異なっていれば、外国人観光客が「なぜ値段が違うのか」と疑問を持つ余地はある。
まして日本語が読めない客にとっては、安い単品メニューがどこまで選べるのか、英語メニューに載っている料理が日本語メニューのどれに対応するのかがわかりにくい。そこで不信感が生まれるのは自然といえるかもしれない。
小さな違和感が生む疑念
今回の問題の本質は、単純な「外国人ぼったくり」という話だけではないだろう。
むしろ、外国人向けメニューと日本語メニューの構成の違いが、観光客に“価格差”や“不透明さ”として受け止められたことにある。
日本の観光地では、インバウンドの急増により、飲食店側の負担も大きくなっている。外国語対応には時間も手間もかかる。料理の素材や調理法を細かく説明するのが難しければ、英語メニューをコース中心にしたり、外国人が選びやすい代表メニューに絞ったりする店が出てくるのも理解できる。
一方で、外国人観光客から見れば、事情は違う。日本語メニューには安い選択肢があるのに、英語メニューでは高い料理ばかりが目立つ。あるいは、同じように見える料理の価格が違う。そう感じた瞬間、「外国人だけ高いのではないか」という疑念につながる。
近年、日本ではオーバーツーリズム対策として、観光客と地元住民で料金を分ける「二重価格」をめぐる議論が広がっている。京都でも市バス運賃を住民と観光客で分ける案が取り沙汰されるなど、観光客負担のあり方は現実的なテーマになりつつある。
だからこそ、飲食店のメニュー価格をめぐる小さな違和感も、海外では「日本の二重価格」「外国人差別」と結びつきやすい。
今回の件を、単純な「外国人ぼったくり」と断定するのは早いが、外国人観光客が疑問を持ちうるメニュー構成であったことも否定しにくい。店側に意図がなかったとしても、説明が不十分であれば、国境を越えて炎上する時代になったからだ。
見せ方ひとつで「外国人だけ高いのでは?」と受け止められてしまう昨今。京都の飲食店をめぐる今回の騒動は、インバウンド時代の日本観光にとって、他人事ではない問題を映している。
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