“ただの面白いユーチューバー”だと思って見ていたら、実はアイドルだった。
ガールズグループRESCENE(リセンヌ)で、そんな逆転現象が起きている。
【画像】バズったRESCENEの“ギャル化”グループを知ってからメンバーを知るのではなく、ウォニという個人を先に知り、あとからRESCENEにたどり着く人が増えているのだ。
その流れを象徴するように、ウォニの個人YouTubeチャンネル「アンニョンハセヨウォニですよろしくお願いします」(原題)は、RESCENE公式YouTubeチャンネルの登録者数まで上回った。
5月28日13時現在、ウォニの個人チャンネルの登録者数は44.6万人。一方、RESCENE公式チャンネルは40万人となっている。
もちろん、登録者数は日々変動するものだが、メンバー個人のチャンネルがグループ公式を追い抜くというのは、なかなか珍しい。

しかもウォニのチャンネルは、長年運営されてきた大規模チャンネルではない。
韓国メディアによると、ウォニの個人チャンネルは開設から約3カ月で登録者40万人を突破した。投稿された公式動画はショートを除けば10本余りにすぎないが、YouTubeアルゴリズムに乗り、登録者数が急増。10万人突破記念Q&A動画が公開されてから、わずか2週間ほどで約30万人増えたという。
一般的にK-POPアイドルは、先にグループを知ってからメンバーを知るという順番だ。しかしRESCENEの場合、逆の現象が起きている。
まずウォニを知り、あとから「この人、アイドルだったのか」「RESCENEのメンバーだったのか」と気づく人が増えているのだ。
「巨済ヤッホー」が起こした逆転現象
ウォニのチャンネルが大きく伸びるきっかけになったのは、「巨済(コジェ)ヤッホー」というミームだった。
ウォニは慶尚南道・巨済出身。チャンネルでは、彼女の地元感や方言、飾らない話し方が大きな魅力になっている。そこに加わったのが、同じRESCENEの日本人メンバー、ミナミだ。
ミナミは、ウォニのチャンネルで“ギャル”コンセプトのキャラクターとして登場。巨済出身のウォニと、ギャル化したミナミの組み合わせから生まれた「巨済ヤッホー」というフレーズが、SNSやショートフォームを中心に拡散された。

言葉だけ見れば、ただの内輪ノリに見えるかもしれない。しかし、実際に刺さったのは、その力の抜けた空気感と、アイドルらしい完璧な演出ではなく、どこか友達同士でふざけているような距離感だった。
この組み合わせが、K-POPファンだけでなく、ショート動画を流し見している一般層にも届いた。
韓国メディア『イルガン・スポーツ』も、ウォニのチャンネルについて「ファンダムの枠を超えて大衆に選ばれるチャンネルになった」と分析している。アイドルの公式コンテンツというより、“なんだか面白い女の子たちの動画”として広がったということだ。
この現象の面白さは、RESCENEというグループの名前より先に、ウォニという個人キャラクターが広がった点にある。
K-POPでは通常、グループ公式チャンネル、ミュージックビデオ、音楽番組、ファンカムなどを通じて、まずグループ名が認知される。その後、メンバーごとの個性が知られていく。だがウォニの場合は順番が違う。
彼女の個人チャンネルが先にバズり、そこから「ウォニって誰?」「RESCENEってどんなグループ?」と逆流している。

韓国のSNS上でも、一般層のなかにはウォニをアイドルだと知らず、ただの面白いユーチューバーのように見ていた人もいたという反応がある。
これは、RESCENEにとって非常に大きい。大手事務所の大型新人であれば、デビュー時から広告、音楽番組、メディア露出、ショーケースで一気に認知を取れる。しかし、いわゆる中小事務所のガールズグループにとって、最初に名前を覚えてもらうことは簡単ではない。
どれほど良い曲があっても、まず聴かれなければ始まらない。その壁を、ウォニの個人チャンネルは別ルートで突破した。音楽ではなく人柄、ステージではなく方言、公式MVではなくYouTubeのゆるい会話で。
そうした“素のキャラクター”が、RESCENEというグループへの入口になっているのだ。
中小ガールズグループの新しい突破口
ウォニのYouTubeチャンネルの成功は、単なる個人人気では終わらない。
韓国メディアは、この現象を「中小ドルの奇跡」とも表現している。大手事務所のアイドルがカムバックを重ね、音楽番組の出演枠を取ることさえ難しい状況で、RESCENEはメンバー個人のYouTubeを通じて新しい突破口を作ったからだ。
実際、ウォニのチャンネルはRESCENEのメンバーを順番に引き出す場にもなっている。

ミナミはギャルキャラクターと「巨済ヤッホー」で注目され、ゼナは方言コンテンツでウォニと掛け合い、慶尚道ならではのローカル感を見せた。他のメンバーも、今後どんなキャラクターで登場するのか期待されている。
これは、従来のアイドル自社コンテンツとも少し違う。よくある自社コンテンツは、グループのファンに向けて、メンバーの関係性や舞台裏を見せるものだった。もちろん、それも重要だ。
しかしウォニのチャンネルは、ファンだけに向けられたものではない。むしろ、ファンではない人が偶然見ても笑えるという、“入口の低さ”が強い。
アイドルを知らない人が、アイドルを知る前に笑う。これこそ、今のショートフォーム時代に合った売れ方なのかもしれない。
さらにウォニのチャンネルがすごいのは、ネット上のバズだけで終わらなかったことだ。
「巨済ヤッホー」はSNSやショート動画で広がり、ついにはRESCENEが巨済市の広報大使に委嘱される流れまで生んだ。
SBSによると、巨済市はRESCENEを市の広報大使に任命し、若く躍動的な都市イメージを発信していく方針を示した。委嘱に関するコンテンツも、従来の形式的なイベントではなく、ショートフォームを活用したデジタルコンテンツ型で制作されたという。
つまりYouTube内のネタが、自治体の広報案件にまでつながったわけだ。

かつてアイドルの地域広報といえば、すでに知名度のあるスターが地域の顔として起用されるものだった。しかし今回の場合、巨済出身のウォニが自分の地元をキャラクター化し、それがミームになり、結果としてグループ全体が巨済市の広報大使になるという流れができた。
地元ネタが、ショートフォームで拡散され、現実の仕事を呼び込む。ウォニのYouTubeは、メンバー個人の面白さを見せるだけでなく、RESCENEに新しい活動の場まで作ったことになる。
公式より個人が強い、リスクも?
ただし、個人チャンネルが公式チャンネルを上回ることは、良いことばかりではない。
ウォニを知っている人が増えることは間違いなくチャンスだが、その人たちがRESCENEの音楽までたどり着くかどうかは、また別の問題になる。
「ウォニは知っているけど、RESCENEの曲は知らない」「巨済ヤッホーは見たけど、公式MVは見ていない」といった状態が長く続けば、個人のミームだけが先に消費され、グループ本体が置き去りになる可能性もある。
RESCENE公式よりウォニ個人チャンネルが強いという現象は、チームにとって大きな追い風であると同時に、課題でもある。
個人チャンネルで入ってきた視聴者を、どうやってRESCENEの音楽や公式活動へつなげるのか。そこが、これからの勝負になる。

ウォニのYouTubeチャンネルがRESCENE公式を超えたことは、いまのK-POPで何が入口になるのかを端的に示しているといえるかもしれない。
完成されたステージや美しいミュージックビデオも重要だが、ショートフォーム時代には、メンバーの方言、地元感、予想外のキャラクター、友達同士のような空気が、グループを知る最初のきっかけになり得るということだ。
個人から始まった注目を、RESCENEがどうチームの力に変えていくのか。
ウォニのYouTubeが示したのは、中小ガールズグループの新しい可能性であり、同時に次の課題でもある。
◇RESCENE プロフィール
韓国人メンバーのウォニ、リヴ、メイ、ゼナ、日本人メンバーのミナミで構成された5人組ガールズグループ。グループ名は「香りで再び(RE)場面(SCENE)を思い起こす」という意味で、大衆の心に長く残る音楽の香りを届けたいというチームの抱負が込められている。メンバー5人全員がビジュアル担当と評されることも。2024年3月に1stシングル『Re:Scene』を通じて正式デビュー。同年12月には東京タワーで日本初イベントを開催した。
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