世界的スターになっても、なおこんな扱いを受けるのか。
BTSをめぐる今回の騒動は、そんな違和感をあらためて浮かび上がらせた。
3月25日(現地時間)、米NBCの人気番組『ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン』の収録現場で、BTSに向けられた“冗談”が問題視され、謝罪に追い込まれた。
物議を醸したのは、ウォーミングアップ芸人セス・ハーゾグによる「このなかに北から来た人はいる?」という趣旨のジョークだ。現場の観客の一部が不快感を示し、その後、SNSでも批判が広がったという。
もちろん、こうした発言は一言でいえば無神経だ。だが、より重要なのは、BTSほどのスターに対してさえ、いまだに“北朝鮮ジョーク”のような雑な扱いが平然と出てくることだろう。
K-POPは歓迎され、BTSは番組に呼ばれる。だが、その一方で、韓国という国やアジア人に対する感覚は、そこまで更新されていない。今回の騒動が映したのは、そんなアメリカ側の古い感覚ではないだろうか。
BTSを通じて透けて見える“古い感覚”

しかも、これは単発の出来事ではない。BTSはこれまでも、海外でたびたび侮辱的な扱いを受けてきた。
今年2月には、メキシコの芸能ゴシップ番組で、BTSの公演チケットをめぐる話題の最中に、出演者が「どこの無名歌手のコンサートごときで泣いたり騒いだりするのか」と発言し、波紋が広がった。
画面にはBTSの映像が映っており、誰を指しているのかは明白だった。さらに別の出演者は、ファンについても「半分は小学校もろくに卒業していない」と言い放ち、BTSだけでなくファンダムまで見下す姿勢を見せた。
2021年には、アメリカのカード会社トップスがグラミー賞関連商品でBTSを滑稽かつ暴力的に描き、人種差別ではないかという批判を浴びた。メンバーたちは“モグラ叩き”のモグラのように表現され、顔には傷やあざまで描かれていた。他の歌手たちが普通に「歌手」として表現されていたのとは、あまりにも対照的だった。
さらに2019年には、ギリシャのテレビ司会者がBTSのJUNG KOOKやVについて「女みたいな顔」と侮辱し、「韓国人男性はみな不細工」「アジア人のような顔つき」といった発言まで飛び出した。結局は謝罪したものの、そこに表れていたのは、K-POPアイドルのビジュアルやメイク文化に対する無理解だけではない。アジア人男性像そのものを低く見るような偏見であった。

こうして並べてみると、BTSが受けてきた侮辱には共通点がある。単なる好き嫌いや音楽批評ではなく、「韓国」「アジア」「男性性」といったイメージが、古いステレオタイプのまま雑にぶつけられているということだ。
皮肉なのは、BTSがすでにアメリカのテレビや大衆文化にとって、欠かせない“コンテンツ”になっていることだ。番組はBTSを呼び、話題性を得て、視聴者の関心を集める。にもかかわらず、現場レベルではまだこうした冗談が“場を温めるネタ”として成立すると考えられている。歓迎しているようで、理解は追いついていない。そのズレが、今回の謝罪騒動にもはっきり表れていた。
BTSはいまや、K-POPを越えてアジアのポップカルチャー全体を代表する存在だ。だからこそ、彼らに向けられるこうした言葉は、単なる一組のアーティストへの失礼では終わらない。BTSを通して、アジア人に対する無意識の偏見が、いまなお西側メディアのどこかに残っていることを示してしまうからだ。
実際、BTS自身もこうした問題を他人事として見てきたわけではない。

2021年3月、アメリカや欧州でアジア系住民に対するヘイトクライムが社会問題となるなかで、BTSは公式X(当時ツイッター)を通じて人種差別根絶を訴えた。
そこでメンバーたちは、「私たちがアジア人として差別に直面した瞬間を思い出します。分別のない罵声に耐え、見た目を嘲笑されました。なぜアジア人が英語を話すのかと聞かれたことさえありました」と、自らも差別を経験してきたことを明かしている。そして「私たちは人種差別に立ち向かいます。私たちは暴力を非難します。あなた、私、そして私たち全員に、尊重される権利があります。ともに立ち上がりましょう」と呼びかけた。
謝罪はした。だが問題は、なぜそんな冗談がそもそも出てきたのかだ。今回の騒動は、K-POPが世界の主流に入った後にも消えずに残る、古い感覚のしぶとさをむしろ証明してしまったのかもしれない。



