かつて大谷翔平への“故意死球”発言騒動で物議を醸した韓国人投手コ・ウソクが、マイナーリーグで戦力外となった。
コ・ウソクは6月18日(日本時間)、マイアミ・マーリンズ傘下マイナーAAAのジャクソンビル・ジャンボシュリンプから放出された。これで“自由の身”となり、すべてのメジャー球団と交渉が可能となった。
もっとも、コ・ウソクにはアピールできる“実績”がない。メジャーで登板した経験が一度もないからだ。
マイナーでも厳しい結果に終わっただけに、アメリカで挑戦を続けるのは厳しいように見える。仮に韓国球界に復帰する場合は、ポスティング制度を利用して海外移籍したため、古巣のLGツインズに戻る必要がある。
メジャー挑戦も悪夢の連続
コ・ウソクは昨年1月、サンディエゴ・パドレスと2+1年の最大940万ドル(日本円=約14億7600万円)で契約した。同年3月には母国で開催された「MLBワールドツアー・ソウルシリーズ」にパドレスの一員として参加したが、開幕ロースターに入れず、5月にマーリンズへトレードされた。
マーリンズでもコールアップはなく、渡米1年目はマイナーで計44試合に登板し4勝3敗4ホールド3セーブ、防御率6.54の成績を残した。
今季はマーリンズの春季キャンプに“招待選手”として参加し、再起を試みた。しかし、今年2月にウェイトルームでのタオルを用いたシャドーピッチングで右手人差し指を骨折。結局、3月にマイナーキャンプ降格となると5月まで実戦復帰できず、今月6日よりようやくAAAでプレーしていた。
復帰後の登板内容は悪くなかった。AAAでは5試合5.2回を投げて防御率1.59で、16日のロチェスター・レッドウィングス(ワシントン・ナショナルズ傘下)戦では先発として2回無失点を記録した。
だが、それまで多くの試合で登板できなかったためか、球団は彼を「戦力外」と判断した。マイナーでの通算成績は2シーズンで56試合登板、4勝4敗5ホールド3セーブ、防御率5.99だった。
1年で韓国出戻り?「復帰は本人次第」
そんなコ・ウソクには、自然と韓国プロ野球復帰の可能性が取り沙汰されている。
古巣のLGも復帰を望んでいるという。コ・ウソクが在籍していた2023年、LGリリーフ陣の防御率は3.43でリーグ1位だった。強固な投手陣を軸に29年ぶりの総合優勝を果たしたが、そのときの絶対的守護神がコ・ウソクだった。
ただ、コ・ウソクが渡米以降、LGの投手陣は不安定さが目立つ。昨季のリリーフ陣防御率は5.21でリーグ6位、今季も3.70台でリーグ4位にとどまっている。
現在のLGでクローザーを担うユ・ヨンチャンは昨季に26セーブを挙げたが、今季は負傷の影響で開幕に出遅れた。6月に戦列復帰を果たしたが、まだコンディションは万全ではない。
コ・ウソクはLG時代に5年連続で二桁セーブを達成。2022年には42セーブを記録するなど、不動の守護神として活躍した。LGとしては是が非でも復帰してほしい選手であることは間違いないだろう。
LGのチャ・ミョンソクGMも本紙『スポーツソウル』の電話取材に対し、「コ・ウソクの復帰は本人次第」としつつ、「本人がメジャーに残りたいのであれば仕方ないが、もしLGに戻る意思があるなら会うつもりだ」と話している。

そんなコ・ウソクは昨年3月、WBCの開幕前にとある韓国メディアのインタビューに応じた際、大谷翔平(30、ロサンゼルス・ドジャース)との対戦可能性を問われ、「真ん中に投げて(大谷が)ホームランを打つのかという考えが先に浮かんだ。本当にいざマウンドに上がったとき、投げるところがなければ、痛くないところに当てなければならない。(塁に)出して、次の打者と勝負する」と発言。
これが大谷に対する“故意死球”を示唆すると捉えらえ、日韓で大きく批判が広がったことがあった。
ただ、コ・ウソク自身はその後、別の韓国メディアとのインタビューで「(最初は)“真ん中に強く投げたい”と話したら、(当時の記者から)“もう少し面白く話してほしい”と伝えられた。誤解の余地がある発言をしたことは自分の過ちだったが、ただの一度も“誰かにわざと当てろ”と野球を習ったことはない。それが一番悔しい」と、当時の発言に誤解があったことを告白していた。
◇コ・ウソク プロフィール
1998年8月6日生まれ。韓国・仁川出身。身長180cm。韓国のプロ野球選手。マイアミ・マーリンズ傘下マイナーAAペンサコーラ・ブルーワフーズ所属。高校卒業後の2017年にLGツインズでプロデビュー。2019年に韓国プロ野球史上最年少30セーブ(21歳1カ月7日)達成、2022年に42セーブでセーブ王に輝き、韓国プロ野球史上19人目の通算100セーブ到達。2024年1月にサンディエゴ・パドレスと契約するも、開幕直前にロースターを外れ、メジャー昇格なく同年5月にトレードでマイアミ・マーリンズに移籍も、同月31日にDFA。韓国代表では2019年プレミア12、2021年東京五輪、2023年WBC、杭州アジア大会に出場。2023年1月、元中日ドラゴンズのイ・ジョンボム(李鍾範)の娘で、イ・ジョンフ(サンフランシスコ・ジャイアンツ)の妹イ・ガヒョンと結婚した。