一撃必殺の沖縄空手を継承せよ!達人の技をVRで100年先へ | RBB TODAY

一撃必殺の沖縄空手を継承せよ!達人の技をVRで100年先へ

 VRが活躍する場面が、エンタメ以外にも広がりつつある。空手発祥の地 沖縄では6日、伝統の『型』をVRコンテンツに保存するユニークな取り組みが発表された。

IT・デジタル スマートフォン
VRコンテンツ内の新城先生
  • VRコンテンツ内の新城先生
  • 沖縄ではいま、沖縄空手の師範の型演舞をVRコンテンツにして保存するユニークな取り組みが進行中。写真は上地流の第一人者、範士九段の新城清秀先生
  • 沖縄県 文化観光スポーツ部空手振興課 課長の山川哲男氏
  • デモの様子
  • 沖縄セルラー 理事 営業本部 副本部長 ソリューション営業担当の甲斐田裕史氏(左)と、IMAGICAウェスト チーフプロデューサーの堀野洵氏(右)
 VRが活躍する場面が、エンタメ以外にも広がりつつある。空手発祥の地 沖縄では6日、伝統の『型』をVRコンテンツに保存するユニークな取り組みが発表された。沖縄空手の師範の演舞を、未来に継承するのが狙いだ。沖縄県、沖縄セルラー、IMAGICAウェストが共同で開催した説明会の内容、およびデモの模様をお伝えしよう。

沖縄ではいま、沖縄空手の師範の型演舞をVRコンテンツにして保存するユニークな取り組みが進行中。写真は上地流の第一人者、範士九段の新城清秀先生
沖縄空手の師範の型演舞をVRコンテンツにして保存するユニークな取り組みが進行中。写真は上地流の第一人者、範士九段の新城清秀先生


一撃必殺を体現できる、沖縄空手の第一人者がVRのモデルに


 今回の取り組みでVRのモデルになったのは沖縄県空手道連盟の理事長で、上地流の第一人者の新城清秀先生だ。そもそも沖縄空手には、どんな特徴があるのだろうか?競技スポーツの空手との違いはどこに?沖縄県 文化観光スポーツ部の山川哲男氏が詳しく解説した。

沖縄県 文化観光スポーツ部空手振興課 課長の山川哲男氏
沖縄県 文化観光スポーツ部空手振興課 課長の山川哲男氏


 山川氏は、はじめに「空手は、もともと護身のために生まれました。だから、基本的には自分から攻撃しにいくことはない。受けから始まります。相手への攻撃から始まる競技空手とは、身体の動かし方の概念が違うんです」と話した。

 その上で、上地流では型を身体に覚えこませるだけでなく、「部位鍛錬」が必須になると解説する。指先、手首、足先などを徹底的に鍛えるために、毎日、机のような硬いモノを突いて硬くしていく。これを何十年と続けていくことで、やがて指先や親指の付け根などで板を割れるようになる。すると対人では、鎖骨の間に走る動脈に衝撃を与えて、心臓を破壊するような一撃必殺の奥義も繰り出せるようになるという。今回これを体現できる人として、新城先生がモデルに適任だった。

 いま沖縄県内では、競技空手の登録選手数は2,200名弱いる。これに対して、伝統空手の愛好家は6,000~1万人ほどおり、また世界には1億3,000万人の愛好家がいると言われている。特に治安の悪い外国で、護身術としてのニーズが高いと同氏。こうした背景もあり「今回の取り組みを通じて、沖縄県民のみならず、世界中の人に沖縄空手の有する品位と武術性の素晴らしさが伝わっていけば」と期待感を口にする。

デモでは悲鳴をあげる記者も


 ここで、会場でおこなわれたデモの様子を紹介したい。視聴にはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)のHTC Viveを利用した。やはり最大のメリットは、新城先生の近くで演舞を体感できること。記者も試してみたが、突きの速さやその迫力に、思わず冷や汗をかいた。技を繰り出したところでストップすれば、腕の角度や指の開き具合など、これまで近くで見たくても見られなかった身体の動きを細部まで(しかも好きな角度から)見られる。このため、教育目的でも広く活用できそうだ。ちなみに、記者団には悲鳴をあげて尻もちをついた女性記者もいた。

デモの様子
デモの様子




達人の演舞が100年、200年先に残っていく


 取り組みをコーディネートした沖縄セルラーの甲斐田裕史氏は「素晴らしい開発の機会を与えていただいた。絶対に本物をつくるんだ、という決意で取り組んだ。IMAGICAウェストさまの協力で、指の動きに至るまで再現できたと自負している」とアピール。先生の演舞がデジタルコンテンツになり、今後100年も200年も残っていくのが嬉しい、と笑顔になった。

沖縄セルラー 理事 営業本部 副本部長 ソリューション営業担当の甲斐田裕史氏(左)と、IMAGICAチーフプロデューサーの堀野洵氏(右)
沖縄セルラー 理事 営業本部 副本部長 ソリューション営業担当の甲斐田裕史氏(左)と、IMAGICAウェスト チーフプロデューサーの堀野洵氏(右)


 IMAGICAウェスト チーフプロデューサーの堀野洵氏によれば、京都のD4Aスタジオにて100台のスチールカメラで撮影したのち、沖縄県内のCGCGスタジオでモーションキャプチャを撮影したという。「空手愛好家の方々に体験いただきたいのはもちろんのこと、沖縄を海外に発信するイベントにも活用して欲しい」と堀野氏。ちなみに今回はHTC Viveを利用したが、解像度の向上したHTC VIVE Proでも視聴できるよう、あらかじめ高解像度で撮影しているという。

VRコンテンツの配信予定は?


 完成度の高いVRコンテンツだけに、オンラインでの配信が期待されるところ。しかしIMAGICAウェストによれば、スマートフォンを使った「Galaxy Gear VR」などの家庭用のVRツールでは、再現は難しいとのこと。また権利の問題もあり、配信は「今後の課題」となっているようだ。

 今回の取り組みについて感想を聞かれた新城先生は「空手は先輩、後輩の厳しい世界。私のような若輩者が、と思ってお断りしていたが、最後には口説かれてお受けした。京都や沖縄のスタジオでは、まな板の上の鯉の心境だった」。1951年生まれの同氏だが、県内には70、80を超えた高齢の達人がまだまだ元気に活躍しており、自身のことを若輩者と謙遜する。また、出来については「どんな形になるのか想像がつかなかったけれど、完成したものを観て驚いた。まるでUSJで演舞をしているようですね」とにこやかに話していた。

VRコンテンツ内の新城先生
VRコンテンツ内の新城先生


 今後の展開について、山川氏は「成果を検証しつつ、他の流派の先生にもお願いしていければ」と意気込む。空手のVRコンテンツ、というと格闘ゲームを想像してしまいがちだが、これについては「伝統文化と娯楽には、明確な線引きをしなくてはいけない。伝統文化には品位がある」と説明。取得した師範の演舞を、娯楽用途などに転用することは一切ないと説明していた。


オーケストラの中心で、クラシック愛をさけぶ!東京交響楽団はなぜVRアプリを作ったのか?
《近藤謙太郎》

関連ニュース

特集

page top