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やっと時代が追いついた? 1994年にVRアトラクション「VR-1」を導入していたセガの歴史に迫る!

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【特集】VRで盛り上がるジョイポリス、だがセガは1994年にVRアトラクション「VR-1」を導入していた
  • 【特集】VRで盛り上がるジョイポリス、だがセガは1994年にVRアトラクション「VR-1」を導入していた
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常に時代の二歩くらい先を進み続けるセガが、テーマパーク「東京ジョイポリス」にオーストラリア大陸から強力な助っ人外国人を連れて来ました。それが先日体験レポートも行った『ZERO LATENCY VR』。世界初となるプレイヤーが歩きまわることが出来るフリーローム型で6人同時プレイというVRアトラクションです。

そんな“ここでしか体験できない”という部分が多くの来場者を魅了し、連日予約で満員。2016年は「VR元年」と言われているだけに、本作の登場には「ついに来たか」という声も上がっています。


ただし、セガの歴史を見ると「ついに来た」ではなく「ついに時代が追いついた」という方が正しいのかもしれません。なぜならば、今から遡ること1994年に、セガは「横浜ジョイポリス」で『VR-1 スペースミッション(以下、VR-1)』というVRアトラクションを稼働させているのです。


社内にも1冊しかないという貴重なパンフレット
今回はそんな新旧2つのVRアトラクションについて、ジョイポリスの運営を行うセガ・ライブクリエイション取締役の速水和彦氏と事業戦略チームの蓮見真太郎氏に話を伺ってまいりました。『VR-1』の貴重な当時の資料写真と共にお楽しみください。

企画・編集:栗本浩大(@koudai5511
文:傭兵ペンギン(@Sir_Motor
◆「VR-1」が生まれた1994年こそVR元年だ!

――『VR-1』の存在自体は我々も把握していたんですが、実際にその実態を調べてみると、ぜんぜん情報が集まりませんでした……。そもそも『VR-1』とはどんなアトラクションだったのでしょうか。

速水和彦氏(以下、速水):「メガ・ヴァイザー・ディスプレイ」というヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を着用して乗り込む8人乗りのライド(乗り物)でした。360度全方位を観られる映像と乗り物が連動して動くシューティング型のアトラクションですね。


蓮見真太郎氏(以下、蓮見):当時の開発チームに話を聞いたところ、20数年前はちょうどCGの技術が飛躍したタイミングで、顔の向きに連動して絵を出すということが可能となり、エンターテイメントの一つとしてVRが取り上げられていたそうです。


なので、当時「メガ・バイザー・ディスプレイ」の設計を担当した吉本昌男さんは「2016年は『VR元年』ではない」と語っていました。また使用されている“VRの仕組み”自体も現代のものと大差ないそうです。変わったのは主にハードスペックですね。

――『電脳戦機バーチャロン』のバーチャロイドにも意匠としても取り入れられたという「メガ・バイザー・ディスプレイ」のデザインは最新のHMDと比べても、かなりカッコいいですよね。



蓮見:吉本さんによると、セガのこだわりが詰まったHMDで、頭部に直接触れる部分は交換式にするなど、当時から衛生面にかなり気をつけて設計されていたようです。実際、衛生面は現在のVR用HMDの多くが苦労している所ですよね。また、当時他社が使っていたHMDに比べ半分くらいの重さであり、軽量だったようです。


――ここ最近はアミューズメント向けVRに触れる機会も増えてきましたが、今改めて「VR-1」を見ると、既にこの段階で大体の事をやっているのに驚きました。もともとセガさんは体感型ゲームを多く作られていましたが、それでも当時の最新技術を使うとなると、やはり苦労は多かったのでしょうか。

蓮見:そのようです。1枚数十万円するグラフィック用の基板を、HMDの片目につき1枚使ったので、8座席分で16枚、ライドは4台ありましたので合計64枚必要としたので、コスト面はもちろんのこと、それらを同期するのがかなり大変だったようです。

速水:そして当時は映像に合わせて乗り物を動かすというのも難しかったそうで、タイミングを合わせるのにかなり苦労もあったのだとか。また、HMDの脱着でオペレーションにも人手が必要なりもネックで、運用面での課題も様々見えてきていたようです。

蓮見:これらの運用ノウハウは現在の『ZERO LATENCY VR』に活かされています。



――衛生面やオペレーション面の課題は今まさにVRコンテンツが直面している問題ですが、20年前から既にそういうやりとりがあったとは……。ところで『VR-1』の後はどうなったのでしょうか。「VR-2」とかは出てませんよね。

蓮見:実はですね、「VR-1」を作ってみたものの、当時はハードのスペックが今ほど高くなかったので、HMDを使ったVRというものに手応えをあまり感じられなかったらしく……。この後、同系のアトラクションはHMD無しのものになるんです。

速水:しかし、当時の開発に携わった安丸信吾さんは、同じく画面に合わせて動くライド系のアトラクション「ワイルド」シリーズの設計を担当してまして、そこで『VR-1』で培った映像とライドの連動のノウハウを活かしたとも語っています。


「ワイルド」シリーズ
速水:『VR-1』と似たようなものですと、3Dホラーの「ザ・クリプト」というアトラクションが後に導入されました。こちらはHMDではなく3Dメガネを使い、360度の視界で楽しめるというものでした。「セガボックスシステム」という位置検知のシステムを作りまして、沢山のセンサーを使って、当初は剣を使って戦うこともできるというようなものでした。技術レベルは高いものの、15分で2人しか遊べないというところがネックとなるアトラクションで、運用側としては大変でしたね。

◆驚きに満ちたVRアトラクション『ZERO LATENCY VR』


―― ……もしかして『VR-1』と『ZERO LATENCY VR』導入って関係なかったりするんでしょうか。

速水:当社は自社開発にはこだわっておらず、魅力的なコンテンツであればどんどん導入してくという方針です。だから正直な所、導入するかどうかに関しては『VR-1』とは全然関係ありませんでした(笑)。

導入の経緯としては、我々は世界最新の技術を体験できるようにしようという視点で新しい物を常に探しています。また海外でも事業を展開しておりますので、様々なコンベンションに行くのですが、そこで偶々『ZERO LATENCY VR』を見かけ、ZERO LATENCY社さんにコンタクトを試みました。我々はその没入感と多人数でできるという点に驚かされ、また開発がかなり進んでいることを受けて、日本で展開することを決めました。

――海外で昨年『ZERO LATENCY VR』がニュースになった時、日本に来るのはもっと先かなと思ったのですが、いきなり今年稼働ということになって驚きました。

速水:ほとんど即決でしたね。そしてすぐにジョイポリスへの導入に向けての仕様を決めて動いていきました。正直、「VR元年」と言われている今年の夏休み前にやらなきゃ意味が無いと感じていました。ただ既存のコンテンツでは、時間や広さなどの面でいくつか問題があったので、「東京ジョイポリス」用のコンテンツを半年もかからずスピーディーに開発を進めてもらい、こちらも稼働に向けてかなり頑張りました。


――今回はVR-1のようなライド型ではなく、フリーロームというのも凄いですよね。

速水:フリーローム型は家庭用で出来ない体験であるというのが一番の強みだと思います。やはり最新の技術を体験していただくにはふさわしい形だと考えています。

――しかし、フリーローム型は人とぶつかってしまいそうで心配ですよね。

速水:安全面の心配はあると思います。なので、HMDと銃についているセンサーで、他プレイヤーに近づき過ぎると警告が出るようになっています。壁に関してもゲーム内で壁が出るようになっています。もちろんスタッフがしっかり見ていますので、危ない時には警告できる体制になっています。すでにβ版で運用していたZERO LATENCY社からノウハウをしっかり学んでおり、安全面の対策は万全な状態で運用しています。

――その他、どんなノウハウが活かされていますか?

速水:オーストラリアではもっと大人数の広いところで1回約1時間で運用しています。しかし、それでは日本のアミューズメントパークとして考えると回転が悪すぎるし、なにより結果として少ない人数の方にしか体験いただけないという状態になってしまいます。なので、ジョイポリスでは1回の体験時間を15分と設定しています。これは様々な検討を重ねた結果で、テンポよく十分満足していただけるボリュームとなっています。

蓮見:加えて、待ち時間も発生させないために予約システムを導入しスムーズに遊んでいただけるようにしています。

速水:我々はお客様の時間を無駄にしないのが大事だと考えています。早めに来て頂いても、予約した時間まで他のアトラクションなどで楽しんでいただけますからね。

――稼働後の反応はいかがですか?

速水:SNSなどの反応から大変好評いただいていることを実感しています。運用開始した月の7月は予約が100%埋まりました。

蓮見:SNSに沢山写真を上げていただいているという印象もありますね。


――確かにこのカッチョいい装備一式をつけて遊んだことはシェアしたくなりますね!

速水:そこは狙った部分です。なので、装備にも高いコストをかけていますし、こちら側でお客様が写真を撮る時間を設けています。

蓮見:またアンケート結果では、満足度が95%以上、リピートしたいかどうかも96%と好評価をいただいております。リピートに関して言えば、遠方からいらして一日に何度も遊ぶという楽しみ方をされている人もいらっしゃいます。あと、遊園地というと友達や家族、恋人などと来るというイメージがあるかと思いますが、2割弱の方が一人で楽しまれています。

速水:ジョイポリスは一人でも気軽に来ていただけるような雰囲気になっているのも一因だと思いますね。バラバラに来た6人がチームを組む回なんていうのも起こっています。また、『ZERO LATENCY VR』は13歳以上向けのアトラクションなのですが、年齢層としては20代~30代の方が中心です。女性の方も多くいらしていて、ハイスコアを出していかれる方もいますね。

蓮見:VRはどちらかというと金銭的に余裕のある30代以上の方が楽しまれているという印象を持っていたのですが、遊園地という性質上からか若いお客様も多く、予想よりも幅広い層に楽しんでいただけています。


――現在稼働している『ZOMBIE SURVIVAL』はマウスやコントローラーでAIMするのとは違いますし、普通のゲームと異なる能力が求められるゲームですよね。

速水:コツが違いますね。あと、銃の種類によってスコアが違ったりするので、そのへんの選択もハイスコアを狙う上で重要になっています。

蓮見:ちなみに、20万点代後半が現在のところトッププレイヤーです。ただ、社内に40万点を叩き出し「日本のトップ」を謳っている人もいますが……マニュアルを作ったりするために何度もやってるのでズルいですね(笑)。

◆今後の展開とジョイポリスが目指すVRの未来
――現状でも十分なクオリティですが、今後の展開をお伺いしてもよろしいでしょうか。

速水:リプレイ性を高めるために、やりこみ要素を実装したいと思っています。具体的にはスコアに応じた階級システムやチーム戦などを検討しています。

また『ZERO LATENCY VR』はいわゆるゲームソフトではなくハードであり、今後はソフトを変えて運用するという方法も検討しています。今は銃のコントローラーを使っていますが、銃でなければいけないという制約はないので、まったく別のタイプのゲームになる可能性もありますね。ただ、好評いただいている『ZOMBIE SURVIVAL』をやめてしまうのはもったいないのではないかと悩んでいるところで、クオリティを上げるためのブラッシュアップを続けていきたいという思いもあります。

多人数でフリーロームのVRというところと、家庭用では出来ないことを提供するということを軸に、いろいろな可能性を探っていきたいと考えています。まだ具体的にはなっておりませんが、自社・他社問わず有名作品のIPを使った展開も将来的にはありえるかもしれません。

蓮見:現在使用しているオリジナルのHMD(OSVR)も近日アップデート予定です。ファンが内蔵されより衛生的になる他、解像度も向上するなど全体的に性能がアップします。

――対戦要素などはいかがでしょうか。

速水:もちろんそれも検討中です。開発の方では既に、より多人数での対人プレイテストが行われていると伺っています。

――それでは最後に、ジョイポリスが今後何を目指していくかお聞かせください。

速水:常に最先端の技術を楽しんでいただけるようにしたい思いがあります。そこにゴールはありません。もちろんVRだけにこだわっているわけではありませんが、VRは今の最先端と捉えています。

私個人としては、VRは時間や場所にとらわれず、なりたい自分になれる自由さに魅力を感じています。将来的に技術が発展すれば、月面を歩いたり、歴史上の人物に会うなんていうことも体験できそうですよね。そういった魅力を今後も伝えていきたいです。

なので、ぜひこの機会に『ZERO LATENCY VR』を体験していただければと思います。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

VR路線の展開も含め、これからも時代を先取りするエッジなアトラクションが楽しめそうな東京ジョイポリス。ちなみに、取材時はVRホラーのアトラクション『VR生き人形の間』もかなりの大盛況で、来場者のVRというものへの関心の高さが伺えました。

東京ジョイポリス『ZERO LATENCY VR/ZOMBIE SURVIVAL』は現在好評稼働中。事前予約制で、プレイ料金は1,800円(税込、2016年9月現在)。所要時間は15分のブリーフィング、15分のゲームプレイで合計30分となっています。

また、東京ジョイポリスはVR情報発信用のTwitterアカウント(@Joypolis_VR)を運用中。『ZERO LATENCY VR』のアップデートなど最新情報が気になる方は、ぜひそちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。『ZERO LATENCY VR』のご予約はこちらから。

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《傭兵ペンギン@INSIDE》
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