愛知発! 究極の白醤油「足助仕込 三河しろたまり」を世界へ……日東醸造 | RBB TODAY

愛知発! 究極の白醤油「足助仕込 三河しろたまり」を世界へ……日東醸造

エンタープライズ 企業

蜷川洋一社長
  • 蜷川洋一社長
  • 三河しろたまり300ml 希望小売価格514円
  • 廃校を利用した足助仕込蔵
  • 廃校の中の仕込み桶
  • 手作りしろたまり教室
 「白醤油」をご存じだろうか? 小麦を主原料とした、愛知県特産の琥珀色の醤油のことだ。独特の甘みと風味があり、料理の隠し味として全国の料亭で重宝されている。大正初期創業の日東醸造株式会社(愛知県碧南市)も、この白醤油を製造する醸造家のひとつ。中でも、厳選した素材を天然醸造で仕込んだ白醤油「足助仕込 三河しろたまり」は、平成13年の販売開始以来、好調な売れ行きを見せている。同社の蜷川洋一社長に話を聞いた。

 まずは醤油についてだが、日本農林規格(JAS)が定義する醤油は全部で5種類。全生産量の8割以上を占める「濃口(こいくち)」、関西で生まれた色の淡い「淡口(うすくち)」、主に中部地方でつくられる、とろみと濃厚な旨みが特徴の「溜(たまり)」、山口県特産の「再仕込み」と愛知県特産の「白醤油」だ。

■全醤油生産量の0.7%に過ぎない白醤油
 白醤油の一番の特徴は、一見するとみりんのような琥珀色をしていること。その理由は材料と製法にあるという。一般的な醤油の原料は大豆と小麦が半々であるのに対し、白醤油はほとんどが小麦。加熱処理を行わずに製造することで、独特の淡い色をした醤油ができあがるのだ。

 江戸時代後期、愛知県三河地方で小麦と大豆を原料とした金山寺味噌を作る時に桶にたまった汁(たまり)を調味料として使ったのが、その始まりだと言われている。ほんのりとした甘みと豊かな香りが特徴で、茶碗蒸しやお吸い物といった色をつけず風味をつけたいという料理の調味料として最適。プロの料理人が好んで使用している。しょうゆ情報センターの統計によると平成25年度の白醤油の生産量は5619キロリットルで、醤油種類別の構成比はわずか0.7%。希少価値の高い醤油ともいえそうだ。



■三河で本物の白醤油を復活させる
 蜷川社長の祖父が日東醸造の前身、両口屋商店を興し、白醤油の製造を始めたのが、今から約90年前のこと。昭和40年代には機械化を進め、事業を拡大していた同社だが、平成5年頃、「碧南で生まれ育った本物の白醤油を復活させよう」と先代である社長の父が思い立った。

 当時、同社の白醤油づくりは、大量生産が可能になった半面、安価に購入できる輸入品の小麦や大豆、工場生産の塩などに頼っていた結果、創業時と比べ味が落ちていたという。

 本物の味の復活という先代の思いを引き継ぎ、試行錯誤の上に完成したのが「足助仕込 三河しろたまり」だ。原料は愛知県産の小麦と静岡県伊豆大島の伝統海塩「海の精」、愛知県豊田市足助町で湧き出るミネラル豊富な天然水のみ。昔ながらに、木の桶を使って丁寧に仕込んだ天然醸造の逸品だ。同社比で通常の白醤油の2倍の小麦麹を使って仕上げているのが特徴で、「溜醤油」のように濃厚な味わいがすることから、「しろたまり」と名付けた。「当社にしかつくれない『究極の白醤油』だと思っています」。蜷川社長は胸を張る。

■理想の水を求め、廃校を買い取り仕込み蔵に
 白醤油づくりを模索する中で蜷川社長が最もこだわったのが水だという。「白醤油づくりで一番使う原料は水です。水の質が違えば、製品の味が変わります。天然のおいしい水を求めてあちこち探して歩きました」。そして出会ったのが足助町の集落で飲用に使われていた湧き水だった。

 「ぜひこの水で白醤油を仕込みたい」。そう考えた蜷川社長は、何度となく足を運んでいるうちに、「自然豊かで、夏場も涼しい足助で仕込めば、より淡い色のより良い白醤油が仕込める」と思い至るように。ついには廃校になった小学校の校舎を買い取り、そのままそこを仕込み蔵にしてしまった。



 「はじめは『よそ者が何しに来る』と言われ、地域住民の理解を得るのは大変でしたが、いまでは交流も盛んになりました。水や空気のきれいな環境で、おいしい『しろたまり』ができています」。平成14年からは蔵の周辺で小麦の試験栽培もスタート。「自分たちの育てた小麦で、『しろたまり』をつくる」という理想の実現に向けて、さらなる試行錯誤の日々が続いている。

■ボランティア講座が家庭の主婦にも愛好家を広げる
 プロの料理人はもちろん、家庭の主婦の間にも白たまり愛好家が広がっているが、蜷川社長自身の評価はまだまだ。「世間的には広く知られているとは言えません。情報発信して、ひとりでも多くの人に良さを伝えていかなくてはならないと考えています」。

 そこでこの3年ほど取り組んでいるのが「手づくりしろたまり講座」だ。もともと日本発酵食文化協会の一講座として行ったものが評判を呼び、口コミで広がっていったものだという。家庭でもできる「しろたまり」の仕込み方を、主婦などを対象に教えている。

「梅酒を浸ける容器に麦麹、塩、水を入れて混ぜるだけ。後は自宅に持ち帰り3か月熟成させれば完成です。麹がうまく働かず失敗する場合もありますが、それも経験ととらえていただければ」と蜷川社長。

 今では全国各地のさまざまな企業、団体等からの依頼を受け、年間50回ほどの講座を開いているそうだ。

 「講師料や交通費はいただきません。参加者1人当たり1300円プラス材料費をいただくだけです」という蜷川社長。ボランティアに近い形で行っているのは「講座が『しろたまり』を知るきっかけになれば」と思っているから。



 それでも講座を始めてからは「しろたまり」の売り上げが10%近く上がっているという。「講座も、製品も大々的なPRはしていませんが、口コミなどで徐々に広がっているようです。“よいものをつくる”という地道な努力の積み重ねが、少しずつ結果となって表れているようです」。

■世界で白醤油がどう使われるかに期待
 蜷川社長が、これから力を入れていこうと考えているのが海外展開。県内で食品関連の会社を営む仲間と集まって「愛知県食品輸出研究会」を立ち上げ、海外に愛知県産の食品を売り込もうと活動をしている。ユネスコ世界遺産に和食が登録されたこともあって、海外各国で和食ブームが起きている今は「しろたまり」を売り込む絶好のチャンスだ。「ヘルシー、ビューティフル」と、外国人の受けはかなりいいという。「日本に入ってきた世界中の料理が、日本人の舌に合わせてアレンジされていったように、世界へ出た『しろたまり』が思いもよらないような料理になることを期待しています。どんな変化が見られるのか楽しみです」。今後も海外で開かれる食品関連の展示会には積極的に出店しようと考えている。

 このほか、国内外の観光客向けに、愛知県内にある酒蔵や味噌蔵を巡る「かもしツアー」を企画している。自社の仕込み蔵も行程に入っており、しっかりアピールしていく考えだ。「情報が氾濫している時代だからこそ、『しろたまり』を正しく認識してもらえるよう、工夫をして情報発信をしていきたい」と蜷川社長。夢は世界へ広がっている。

【地方発ヒット商品の裏側】究極の白醤油を世界へ――「足助仕込 三河しろたまり」日東醸造

《DAYS》

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