マツダの赤は魂の色……広島工場で塗装体験 | RBB TODAY
※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

マツダの赤は魂の色……広島工場で塗装体験

エンタープライズ その他
マツダ・アクセラ。ソウルレッドと呼ばれる赤を身にまとう
  • マツダ・アクセラ。ソウルレッドと呼ばれる赤を身にまとう
  • マツダ・アクセラ
  • 上から従来のメタリックレッド、ソウルレッド、ソリッドレッド。明暗の発色の違いに注意
  • マツダ、ソウルレッド
  • 左がソウルレッド、右が従来のメタリック。透明度が違う
  • クリヤ層の膜厚によって発色が変わるので、ムラの無い塗装が必要。匠を育て、“匠の技”を機械に移植する
  • マツダ車の塗装工程
  • マツダ車の塗装工程
 車選びで重要な要素となるデザイン。そのなかでもカタチと色に命を吹き込む人たちがいる。マツダが採用している“魂の赤”『ソウルレッド』とは? マツダ車の開発と生産が行われる広島本社で探った。

 新型『アクセラ』の顧客の25%が選択する、高い人気を誇るボディカラーがソウルレッドだ。これまでの量産車では実現できなかった、モーターショーに登場するコンセプトカーのような艶やかで深みのある赤を再現したという。

●コンセプトカーと量産車の色の違い

 “コンセプトカーと量産車の塗装の違いはどこにあるのか?”。コンセプトカーの場合、耐久性を考慮しなくてよいので、塗料に関して、透明度が高く鮮やかな発色をする「染料」を用いている。これに対して量産車では、鮮やかさでは染料にやや劣るものの、耐久性に優れる「顔料」を使用しているという違いがある。

 そして自動車の塗装膜の構成は、通常下から順に「1ベース」、「2ベース」、「クリア」と3層がある。コンセプトカーの塗装は、「1ベース」の光を反射するシルバー(アルミ材)の層と、「2ベース」の赤く発色する半透明層、そして「クリア」とで構成されている例が多い。つまり、我々がコンセプトカーで見ている赤いボディカラーというのは、ステンドグラスのように半透明な赤色の層の下にアルミの反射材を当てた、透明感のあるクリアな赤色を見ているというわけ。

 “コンセプトカーと同じような塗装を量産車でも実現できないだろうか?”。マツダの開発陣は工学的な解析を行ない、コンセプトカーのイメージを活かした塗装を実現した。ソウルレッドでは、いちばん下の反射層である「1ベース」において、顔料とシルバーとのコンビネーションにより、赤い光を反射するようにした。さらに光線は赤い半透明の「2ベース」も通過する。実際に車のボディで見ると、光のあたるハイライト部分は「2ベース」の半透明層の赤色が輝き、陰となる部分では半透明層と下層「1ベース」の2つの赤が合わさって、深みのある発色になる。エモーショナルなボディラインを持つマツダ車を引き立てるカラーに仕上がった。

●ソウルレッドはどのように作られるのか? 塗装工場に潜入

 “実際にソウルレッドはどのように塗装されているのか?”。今回は特別に広島工場の塗装ラインを見学することができた。クルマのボディに塗られる厚さ0.1ミリという塗装膜は、「電着塗装」、「中塗り」、「1ベース」、「2ベース」、「クリア」といった層で構成されているのだが、1分間に1台というスピードで流れる製造ラインで仕上げていく。

 まずは、錆などからボディーを守る下地塗装を行う電着塗装工程を見学。湯煎で洗われた鉄板むき出しのボディが流れてくると、下地材でいっぱいとなったプールに浸かる。続いて、溶接の継ぎ目に発生する錆を防止するために人間の手作業でシーラーを充填、ロボットにより下回りを保護するアンダーコートが塗布されていく。

 仕上げの工程に向かって塗装の大敵“ホコリ”の除去が入念に繰り返されるが、印象的だったのは、最終的なチェックは人間によって確認されていたこと。自動化が進む製造現場ではあるが、仕上げの品質を決めているのは人間であった。

 下地が整ったらいよいよ「ソウルレッド」に塗られる瞬間がやってくる。半透明層があるため製造現場においても高度な塗装技術が要求される。塗装膜の膜厚を均一にしなければ色むらに見えてしまうからだ。製造ラインを覗くと巨大なロボットアームが車体全体をみるみる塗装していく。

●ソウルレッドを再現できるか? 記者が塗装にチャレンジ

 “ソウルレッドの塗装がどれほど難しいのか?”ということで、取材の最後に実際に塗装体験する機会を得た。

 コンセプトカーの塗装は、“匠”と呼ばれる職人が半透明層の部分を13層にも塗り重ねて鮮やかな赤を再現しているという。こうした匠の技術を伝えようと、マツダでは塗装技術者を社内で養成して技能五輪へ出場するなど、技術の伝承に務めているという。その技能五輪に出場経験のある山崎麗さん、坂本遥加さんの2人の指導のもと、記者が塗装にチャレンジしてみた。

 「1ベース」「2ベース」「クリア」と3層を、2人が塗装する様子を見よう見まねで塗装したところ、仕上げた段階ではツヤツヤに仕上がっていたものの、乾燥してからよく見てみると塗装面にはブツブツとしたものが残っていた。「三層の塗膜が均一でなく、塗り重ねた際の下層からの乾きムラが原因」とのご指摘。単純な平らな板を塗装するのにも、板とスプレー銃の距離、塗料を吹き付ける強さ、手を動かす速さなど、目と手と経験が必要ということが解り、複雑なボディ曲面を均一に塗装するのはさらに難しいことを知った。

 “なぜ手間のかかるソウルレッドが誕生できたのか?”。マツダでは、デザイン、研究開発、生産部門が開発の初期段階から領域を超えて集まり、理想を共有して議論ができるチームワークと、相談したい時にすぐに顔を合わせられる環境により、量産化を実現できたからと分析している。

 “なぜ赤にこだわるのか?”。ファミリア、RX-7、ロードスター、と各車のイメージカラーとして赤を採用することにマツダはこだわってきたようだ。もしかしたら広島の“魂”の色なのかもしれない。そう言えばプロ野球・広島東洋カープのユニフォームも赤だ……。
《編集部》
【注目の記事】[PR]
page top