【インタビュー】最新規格「11ac」が生み出す価値……企業無線LAN構築のポイントとは? | RBB TODAY
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【インタビュー】最新規格「11ac」が生み出す価値……企業無線LAN構築のポイントとは?

エンタープライズ ハードウェア
アルバネットワークス シニアテクニカルコンサルタント 池田豊氏
  • アルバネットワークス シニアテクニカルコンサルタント 池田豊氏
  • アルバの11ac対応アクセスポイント。右が屋外用の270シリーズ
  • MicroSoft Lyncとの親和性を示すデモ。アプリケーションごとにトラフィックを最適に調整し、輻輳状態でも利用可能に(右のPC)。制御していない左のPCではコマ落ちなどが頻発
  • 60台のクライアントを収納した場合の比較。安定した接続に自信をみせる
  • アプリケーションを識別し、細かい制御が可能
  • Microsoft Lyncとの親和性が高く、UC環境構築に強み
 無線通信のトレンドというと、先ごろ、電気・電子技術の標準化団体「IEEE(アイ・トリプル・イー)」において正式承認された無線LAN規格「IEEE802.11ac」が挙げられる。11ac規格は理論値で最大約7Gbpsの高速通信が可能とされる現時点で最速の無線通信規格であり、2013年途中にはドラフト版に対応したアクセスポイントや公衆無線LANスポット、スマートフォンが登場していた。これまでは主にコンシューマー市場で採用が広がってきていたが、いよいよ2014年の1月に正式承認され、今後は法人向けの無線LAN市場でも利用拡大が予想されている。

 そんな11ac規格は、企業ユーザーにどんなメリットを与えてくれるのか。今回は、グローバルでの事業を展開している無線通信機器ベンダー アルバネットワークスのシニアテクニカルコンサルタント 池田豊氏に話を聞いた。同社は昨年から11ac対応(ドラフト版)のアクセスポイント製品を発表し、またこの度世界初となる11ac対応の屋外用アクセスポイントを発表するなど、積極的に新規格を採用した製品展開をみせている。 

――IEEE802.11ac規格がトレンドと言われていますが、実際のところどの程度の必要性があるのでしょうか

池田氏:アルバネットワークスでは、11acについて早い段階から取り組みをおこなってきました。対応製品(ドラフト)も昨年の下期から販売開始しています。その中でよくお客様から言われるのが、(11ac対応製品の)「買い時はいつ頃なのか?」ということです。11ac規格にはフェーズ1と2があり、マルチユーザーMIMOをサポートして最大約6.9Gbpsのスループットが実現できるのはフェーズ2からになります。なのでフェーズ2のタイミングまで待つというお客様もいらっしゃいますが、我々としては、11acが正式に承認された今年が買い時であると考えています。スマートフォンやタブレットなどのスペックがどんどん高くなり、法人利用の台数も増えている中、数年先までずっと11n製品でやり過ごすのはパフォーマンスを考えるとかなり厳しいと考えているからです。また、現行の11ac製品(Aruba 220シリーズ)でも、理論値で最大約1.3Gbpsのスループット性能を持っており、11n製品からすれば3倍近い数値を出すことができます。

――11acクライアントと11nクライアントが混在していても、11acアクセスポイント導入のメリットは得られるのでしょうか

 スループットの高速化だけではなく、端末の収容台数を増やせるということも大きなポイントです。一般的な11n対応アクセスポイントが1台あたり20台ほどのクライアントを収容できる設計なのに対して、Aruba 220シリーズであれば50~60台の収容が可能になってきます。クライアントが11acに非対応でも収容コストを下げることができますし、今後、BYODの採用などによって利用端末が増えることも見越して、インフラ整備の意味でも11ac製品導入がオススメです。現在11ac製品を採用いただいているお客様のニーズとしては、キャパシティを上げたいという部分が非常に大きくなっています。1台の端末で1Gbpsを出したいのではなく、多数の端末で安定したパフォーマンスを出したいということです。その場合、今さら11n製品を継ぎ足してキャパシティを補うのではなく、11ac製品をいれていただけば、対応クライアントだけでなく既存のクライアントのパフォーマンスも改善できるとお伝えしています。

――アルバネットワークスのアクセスポイントの強みを教えてください

 アルバの一番のアドバンテージは、“タフな環境でも強い”ということです。例えば、11ac対応アクセスポイントに、同じく11ac対応のクライアントをつなぐ場合、クライアント1台に対しては高い値が出るのに、複数台を収容した時にスループット値が大きく偏ることがあります。仮に収納台数ぎりぎりの60台を接続したときに、他社製品ではクライアントによっては1Mbpsを切ってしまうこともあるのに対して、アルバの製品であれば多少のバラつきは出ても、60台すべてで2Mbps以上をキープするといった安定した運用が可能になります。このあたりは単にスペックシートだけでは分からない部分なので、エンドユーザーさまには実際に何十台のクライアントを繋げた時にそれぞれの環境でしっかりパフォーマンスが出るのか、といったあたりを導入時に検討していただきたいと思っています。

――タフな環境に強い要因はどんなところにあるのでしょうか

 まずはソフトウェアの違いが大きいと思います。各クライアントに対してなるべく均等に通信時間を割り当ててパフォーマンスをコントロールする機能や、独自のDPI(Deep Packet Inspection)機能を使ったアプリケーション識別及び可視化、「ClientMatch(クライアントマッチ)」というアルバが特許を取得している技術などを用いることで、最適なパフォーマンスを引き出せています。

 昨年末にリリースしたClientMatchは、クライアントの接続とローミングをアクセスポイント側で制御するRF管理テクノロジーです。通常、ハンドオーバーが起こる際はクライアント側がその要求を出しますが、ClientMatch技術ではそれをアクセスポイント側が制御します。それにより、システムレベルのネットワーク・ビューを利用してクライアントをモニターし、適切なアクセスポイントの適切なラジオに自動でマッチングさせることが可能になりました。これまでにあった問題のひとつに、サポートレートぎりぎりまで接続を維持してしまい、効果的にハンドオーバーすることができないというものがあります。例えば、出社してまずエントランス付近のアクセスポイントを掴んでしまった場合、自分の座席や会議室などに移動して、その近くにもっとコンディションが良いアクセスポイントがあってもハンドオーバーが起きなかった。そういった場合でもClientMatchではアクセスポイント側から自動的にマッチングを行いますので、SNRに顕著な差が表れることになります。また、5GHz帯と2.4GHz帯のデュアルバンドに対応したクライアントであれば、できるだけ5GHz帯をつかませるように調整するBand Steering機能も同時に適用することが可能です。

 その他、CPUやメモリといったハードウェアスペックの性能差も大きく影響してきます。現実的に1台のアクセスポイントに50台60台といったクライアントをつなげるべきかというと、決して理想的な環境ではないと思いますが、大学の講義での利用など、そういったタフな環境で使いたいというニーズは存在します。
《白石 雄太》
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