【木暮祐一のモバイルウォッチ】第43回 視覚・聴覚障害者向けiPad活用の取り組み | RBB TODAY

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第43回 視覚・聴覚障害者向けiPad活用の取り組み

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講習会の講師を務めた高森三樹氏
  • 講習会の講師を務めた高森三樹氏
  • 講習会は全7回を2クール実施。男女とも幅広い年齢層の方々が参加した
  • 講習会では筆者の研究室の学生3名がボランティアで指導の補助に協力した
  • 視覚障害者にiPadのイメージを伝えるために手作りのiPad原寸マグネットボードを使用した
  • 講習会後半の3回は障害者に協力してもらい実際に「教える」実技を学んだ
  • iPadのVoiceOver設定画面。操作方法が大きく変わるが、設定画面内の「VoiceOverの練習操作」を見ると大体の扱い方が理解できる。
  • 聴覚障害者(回答者数246名)の今後使ってみたい機器(青森県「災害時における視覚・聴覚障害者のためのICT利活用アンケート調査報告書(2013年1月)」より)
  • 視覚障害者(回答者数182名)の今後使ってみたい機器(青森県「災害時における視覚・聴覚障害者のためのICT利活用アンケート調査報告書(2013年1月)」より)
 この講習会の講師を務めるのは、NPO法人あおもりIT活用サポートセンターで理事を務める高森三樹氏だ。高森氏は青森県を拠点に、Webサイトの企画・制作・運用などを手がける傍ら、Web技術を社会貢献に生かせる方法を模索する中でWebアクセシビリティについて考える個人プロジェクト『W3A』を立ち上げ、障害者向けのiPad活用の講師をボランティアで展開してきた。そうした活動の中で青森県企画政策部の大和田氏と出会う。大和田氏は部下の竹村彩氏と共に何度も障害者向けの講習会に足を運びながら、「障害者に対するマンツーマンでの指導では限界がある」ということを感じるようになった。そこで出てきた提案が「もっと教えられる人を増やす取り組みをしよう」ということだった。「健常者に対してスマートデバイスのアクセシビリティ機能をもっと知ってもらい、身近にいる障害者に指導できるようになればいい」。

 こうして、青森県の支援のもと「視覚・聴覚障害者向けiPad講習の人材育成講座」がスタートした。県が支援するといっても、現実には関係者の手弁当で準備が進められ、そこに大学生のボランティアも指導補助として協力することで実現していった。また企画段階では講習を受講される方には講習開催期間中にiPadを貸し出し操作に習熟していただきたいと考えた。しかしiPadが足りない。講師用や学生ボランティア用のiPadは手持ちで不要のものをかき集め、受講者に貸与するものは県庁の予算の範囲で7台をリースした。「本音を言えば、受講者用のiPad台数をもう少し確保できれば参加者をもっと増やすことができたはずで、悔やまれる」(高森氏)

 この講習会に関心を持って集まったのは20代から70代の男女と幅広い。平日の夜間に計7回の講習が続いた。iPadそのものに触れたことがなかった人も少なくなく、講習会ではiPadの基本操作から学んだ。その後、iOSのアクセシビリティ機能、特に「VoiceOver機能」の活用方法を身に付け、また障害者が活用するのに便利なアプリ等も知識を深めていった。後半3回は、実際の視覚障害者、聴覚障害者に参加していただき、指導の模擬実習も行った。

 初めてiPadに触れる視覚障害者に対し、ディスプレイ上に並ぶアプリのアイコンを連想してもらうために、手作りの教材も用意された。iPadと同サイズのホワイトボードに、アプリアイコンに見立てた磁石を並べ、ホームボタンの機能や、アプリの配置などを、まさに手を取りながら学んでいた。

 全7回、2期に渡る講習会は12月18日を最後に終了するが、この取り組みは地元の新聞等でも大きく報道されたことで、現在県の内外からも同様の講習会の展開を要望する声が上がっているという。地道な取り組みながらも、今後さらに発展した講習会が各地で横展開されることになれば、着実に情報アクセスに関する弱者の救済につながっていくはずだ。また、青森県では地域の通信事業者とも連携し、販売店の店長会議でこうした取り組みを紹介すると共に、今後は販売店店員向けの講習会も実施していく方向で調整が進められている。情報に対して誰もが平等にアクセスできる、そんな社会を目指した一歩が踏み出されたところだ。
《木暮祐一》

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