一方、経路検索や飲食店を検索するといったWeb検索を音声エージェントで行うケースでは、色々と工夫された音声エージェント系サービスがサードパーティから多数提供されている。しゃべってコンシェルももちろん優秀ではあるが、検索結果の候補が多い場合などの絞り込みで手間がかかることもある。こうした検索における絞り込みのロジックを工夫したアプリの事例としてiNAGO社の「mia」がある。miaもSiriやしゃべってコンシェルと同様な音声エージェントアプリであるが、検索結果が多かったり、逆に少なかった場合、miaはユーザーとの会話から文脈や状況を判断し、検索結果の絞り込みや範囲拡大を促す追加の質問をしてくることで、より的確にゴールとなる検索結果にたどり着ける(もちろん、必ずしもすべての検索で万全な結果を返してくれるというわけではないのだが)。 ユーザーの秘書代わりに活躍してくれるこうした音声エージェント系サービスはまだまだ発展途上である。ユーザーが求めていることをいかにアプリが吸い上げて行くか、あるいは検索結果をどのように判断して、ユーザーの求めるものにふさわしい結果を出せるかといったところが今後の進化における差別化のポイントになっていきそうだ。 先日ソフトバンクモバイルの夏モデル発表会では、SoftBank HealthCareという、リストバンド型活動量計とスマートフォンが連携するサービスがリリースされたが、ユーザーのバイタルデータの収集と活用は今後注目されていくことになるはずだ。こうしたバイタルデータを直ちに音声エージェント系サービスと結びつけるのは容易ではないが、たとえばユーザーの健康状態を踏まえてWeb検索結果の絞り込みまでしてくれるような、おせっかいな音声エージェントサービスが登場してもおかしくはない。たとえば、「近くのレストランを探して」と検索を頼んだ際に、「今日は消費カロリーが少ないようなので、ヘルシーなレストランを提案しますよ」といった問答が展開されるかもしれない。 また、MTIはiPhone向けに「ココロミルミル」という感情認識アプリを提供している。このアプリを起動して会話を拾うと、話している人の「喜怒哀楽」といった感情を画面に表示してくれる。これは株式会社AGIが開発した「音声から感情を分析できる技術」を応用したもので、話す音声から感情を抽出している。テキスト分析ではなく「音声」そのものからの分析であるので、言語の種類を超えて利用可能だ。たとえば、音声エージェントにこうした感情認識技術が取り入れられたとしたら、「何か音楽を聴きたいんだけど」というような発話の際に、そのユーザーが喜んでいるのか、悲しんでいるのか、怒っているのか、平静なのかを判断することで、より気分に合わせた楽曲の提案が可能になるはず。 以上、筆者の思いつきで語っている部分が多いが、改めて音声エージェント系サービスを色々と試すようになり、その精度が確実に向上していることを感じるし、またエージェントとして役立たせるための様々な要素技術が取り込まれてきたことも分かった。今後もますます進化を遂げて行くことになるだろう。そうしてスマートフォンは着実に、ユーザーの秘書代わりに活躍してくれるツールになっていくはずだ。
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