大震災と事業継続管理 第7回「BCMの新しい視点」 | RBB TODAY

大震災と事業継続管理 第7回「BCMの新しい視点」

ブロードバンド セキュリティ

広がるBCMの範囲
  • 広がるBCMの範囲
  • 企業活動を支える3要素
  • ソーシャルガバナンス
事故や災害に備える事業継続管理(BCM)が十数年前から議論され、国際標準化に向けた作業も進められています。日本でも都市圏の直下型地震の発生が懸念される中、ガイドラインが制定され、企業や行政機関において事業継続計画(BCP)を立案するところも増えてきたところです。

そんな中、未曾有の大地震である東日本大地震が発生しました。今回の地震は、関東から東北にかけた極めて広い地域で被災してしまったことが、想定外の状況だったと言えます。 コラムでは、何回かに渡って災害発生時における事業の継続性に焦点を当てて報告しています。今回の連載最終回では、BCMの新しい視点について報告します。

●BCMの新しい視点~BCMの企業における今日的位置づけ

震災以前からBCMの実現を企業価値向上の一つとして、BCMをより能動的に捉え、いち早く整備して優位化を図ろうとする先進的な企業が出始めています。

(1)無形的な資産価値を持つBCM
BCMは、ステークホルダー(株主/顧客/取引先/従業員)を保護するために、コンプライアンス(法令順守)やCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を果たすものと位置づけられるようになってきました。特に今回の大震災の経験は、大企業に限らず全ての企業や行政府、組織がBCMの整備を強く求めたものになりました。

(2)企業活動を支える3要素
企業活動を支える3つの要素として、「業務オペレーション」「従業員」「IT」を挙げることができるでしょう。9.11のテロでもITは回復したもののスキルのある人が失われ、オペレーションを回復できなかった例が多く指摘されています。事業継続には、「拠点間の相互バックアップ」のように、「経営回復力」「柔軟な復元力」を有するレジリエンシー(企業が事業継続を確保するために、障害発生時でも事業活動を維持し、かつ元の状態に復旧するための体制や仕組みを有する回復力を意味します)の考え方が求められます。今日ITの面で盛んに導入が進められているクラウドサービスも有効なソリューションの一つです。事業継続とクラウドについては次回以降に報告する予定です。

●広がるBCMの範囲

BCMで検討しなければならない対象領域が単体組織から複数組織間、コミュニティへと拡大しています。中越地震では、部品供給企業の操業停止により自動車製造がストップするなど、既にサプライチェーンの確保がBCMの重要なポイントになっています。さらに、今回の東日本大地震では、多くの従業員の被災やインフラの長期にわたる機能停止が続いたため、たとえ自社の機能が回復しても事業としては回復できない例が多く見受けられました。早期の従業員の復帰には、まずは地域のコミュニティを通じた日常生活の確保が求められます。このように自社から企業グループ、サプライチェーン、地域コミュニティなど、早期の事業回復に必要な対象は広がっています。

●BCMとガバナンス
もともとBCMは、確立された企業の内部統制(コーポレートガバナンス)の下に計画され、実行されるものです。2000年代に入り、リスク管理と一体となった内部統制について、米国を中心に盛んに議論されました。テロや災害といったリスクに対するBCMについても重要なリスクの一つとして、ガバナンスの一環として捉えることが求められているということです。

BCMは、企業に留まらない広がりをもってきたことから、コーポレートガバナンスからソーシャル、あるいはコミュニティを含めたガバナンスに進展するものと考えています。SOX法等をトリガとして、広くガバナンスが注目されていますが、企業のガバナンスのみならず社会の基盤的サービスを担う組織(行政府、企業等)全体のガバナンスが求められる時代になってきていると言えるでしょう。

(林 誠一郎)
《編集部@ScanNetSecurity》

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