【テクニカルレポート】携帯端末向けマルチメディア放送サービスと技術の概要……NTT技術ジャーナル | RBB TODAY

【テクニカルレポート】携帯端末向けマルチメディア放送サービスと技術の概要……NTT技術ジャーナル

ブロードバンド 回線・サービス

図1:マルチメディア放送の概念図とシステム構成図
  • 図1:マルチメディア放送の概念図とシステム構成図
  • 図2:委託放送事業者と受託放送事業者
  • 図3:セグメント利用
  • 図4:マルチメディア放送が実現するサービス
  • 表:対応する画像品質
  • 図5:マルチメディア放送のプロトコルスタック
  • 図6:蓄積コンテンツの補完技術
  • 図7:コンテンツ保護・アクセス制御の概念図
 2011年7月に予定されている地上アナログTV放送終了後の周波数帯を用い、2012年春からISDB-Tmm方式による携帯端末向けマルチメディア放送がサービス開始される予定です。本サービスのシステムの一部にはNTTのR&D技術も適用されています。本稿ではサービスとそれを支える技術の概要について解説します。

■マルチメディア放送とは

 2011年7月の地上アナログTV放送終了後の207.5MHz~222MHzの周波数帯を用い、2012年の春よりISDB-Tmm( Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial Mobile Multi-Media)方式を用いた携帯端末向けマルチメディア放送(マルチメディア放送)が開始される予定となっています。

 ISDB-Tmm方式は、地上デジタルTV放送(地デジ)で使用しているISDB-T(Terrestrial)方式に基づく放送方式であり、通信と放送という特徴の異なる2つの媒体の組み合わせでサービスを提供します。

 地デジの持つ優れた移動受信特性はそのままに、映像の高品質化、映像や音声をはじめとするさまざまな大容量ファイルの伝送、通信との連携強化などの拡張が行われた方式を使用することが大きな特徴です。また、システム構成は大きく「放送系システム」と「情報系システム」に分けられます。ここにNTTのR&D技術が適用される予定です(図1)。

―受託放送・委託放送と利用周波数

 総務省はマルチメディア放送の実現にあたり、受託放送・委託放送というハード・ソフト分離方式を採用し、2010年9月に株式会社マルチメディア放送(mmbi)を受託放送事業者として認定しました。mmbiはその後、 2011年1月に株式会社ジャパン・モバイルキャスティングを設立し、同年2月に受託放送事業者の免許を継承させました。

 委託放送事業者は番組制作・編成を行い、番組を提供する放送事業に加え、認証・課金・決済を行い、受託放送事業者は委託放送事業者から受け取った情報を全国に放送していきます。

 アナログ放送停波により空く周波数帯域(90MHz~222MHz)のうち全国向け放送帯域(207.5 MHz~222 MHz)において、ジャパン・モバイルキャスティングは受託放送で33セグメントの利用を予定しており、mmbiは委託放送での参入を計画しています(図3)。

■マルチメディア放送が実現するサービス

 マルチメディア放送が提供するサービスは、リアルタイム型方式で提供されるものと、蓄積型方式で提供されるものに大別されます(図4)。

―リアルタイム型放送

 リアルタイム型放送でのサービスの提供は、原則としてそのときに放送している番組をそのときに視聴する形態となります。つまり、地デジが携帯電話や携帯端末向けに提供しているワンセグメント放送(ワンセグ)とほぼ同等のサービスととらえることができますが、マルチメディア放送においては、次に挙げるような拡張が行われています。

(1) 高品質化
 マルチメディア放送における映像の品質は、ワンセグの規格に加え、より高品質な3つの方式が追加されています(表)。このため、動きの速い画像も鮮明に視聴できるようになるほか、従来の携帯電話よりも画面の大きいタブレット型のスマートフォンや、HDMI( High-Definition Multimedia Interface)等で外部のより画面の大きな表示装置に接続しての視聴に向けても、十分な品質の画像提供が可能となります。また、音声の品質に関しても、ワンセグ同様のMPEG-2 AAC(Advanced Audio Coding)のほかに、HE(High-Efficiency)-AAC、HE-AAC v2が追加され、高品質化しただけではなく、将来的にはMPEG Surroundも環境が整い次第利用可能となっています。

(2)他メディアとの連携性向上
 従前のワンセグ放送においても、TV放送を起点としたさまざまなメディアへの連携機能が準備されています。しかしながら、従前の方式の場合はTVを主眼としていたため、他メディアとの連携性は必ずしも積極的とはいえない状況でした。一方、マルチメディア放送においては、想定される受信機では、通信により提供される通信由来のコンテンツが比較的自由に扱えることや、マルチメディア放送自身にリアルタイム型と蓄積型というタイプの異なる放送方式が存在する等の要因により、ワンセグ、マルチメディア放送(リアルタイム型と蓄積型の双方)、通信由来のコンテンツ等の連携性が向上するよう方式が拡張されています。

 当初予定されているマルチメディア放送に対応する受信機は、携帯電話にその機能を具備することが想定されています。つまり、マルチメディア放送の受信機は通信機能の具備が標準としてとらえることができます。この特徴を最大限に活かすために、視聴者に対しては放送で提供されるコンテンツと通信由来のコンテンツを可能な限りシームレスに提供できるような方式が準備されています。

―蓄積型放送

 蓄積型放送でのサービス提供は、リアルタイム型放送とは異なり、放送をしている時刻や時間が、それを視聴または利用する時刻や時間と異なるサービスです。つまり、「蓄積」という言葉がそれを示すとおり、対応受信機は実際にそのコンテンツが視聴されたり利用されたりする前に、事前に放送を受信・蓄積しておくことを前提とするサービスです。

 このことにより、地下や建物の中心部といった、放送の電波が入りにくい場所でも、途切れることなく良好なコンテンツの視聴や利用が望めるほか、受信・蓄積されるコンテンツはPC等でもなじみの深い一般的なファイルであるため、映像や音声だけではなく、電子書籍やゲームなど、従来の放送にはなじまなかったさまざまなコンテンツの取り扱いが可能となっています。また、前述したとおり、受信機の通信機能の具備を前提とできるため、通信機能との連携も強く意識したサービスが予定されています。

(1) 伝送技術
 蓄積型放送においては、任意のファイルを放送で送達できることが大きな特徴です。この特徴を実現するために、図5で示すプロトコルスタックを用いたIP技術を応用した伝送技術を採用しています。また、この伝送方式はAL-FEC( Application Layer-Forward Error Correction)機能も具備することで、放送の物理層が具備するFEC機能では対処することが困難な長時間にわたる情報の欠落に対しても、強力な誤り訂正機能を発揮します。

(2) 蓄積コンテンツの補完技術
 マルチメディア放送は放送の受信状況の悪化に伴う受信データの誤りに対して、強力な誤り訂正機能を具備していますが、それでもその限界を超えた場合(ずっと放送のエリア外に受信機が所在していた場合など)には、誤り訂正を正常に行うことができません。しかしながら、マルチメディア放送の受信機は、通信機能の具備を想定しているため、放送が終了しているにもかかわらず、コンテンツの完全なかたちでの受信が完了していないコンテンツに対しては、そのコンテンツの欠損部分を通信機能により補うことが可能となっています(図6)。

(3) EPG/ECGメタデータ技術
 蓄積型放送は従前のTV放送とは異なり、チャンネルや時間という概念が存在しません。一方で、放送前、蓄積中、視聴(利用)可能などの従前のTV放送にはなかったコンテンツの状態管理が求められます。また、受信機が具備する蓄積装置の容量が許す限り、過去のコンテンツの管理を行いつつ、それらを利用者に分かりやすく提示する機能が求められます。これらの問題を解決するのがEPG/ECG(Electric Program Guide/Electric Content Guide)メタデータです。EPG/ECGメタデータは、番組やコンテンツごとにさまざまな付加情報をXML形式で記した情報で、受信機はこれらの情報を用いることで、利用者に対して分かりやすいコンテンツに対する情報提供が可能となるほか、利用者の過去のコンテンツの視聴(利用)実績に基づいたレコメンデーション等も可能となります。

(4)コンテンツ保護・アクセス制御
 技術マルチメディア放送は、従前のワンセグとは異なり、有料放送となることが想定されています。つまり、視聴に際して料金を支払った利用者に対しては、コンテンツの視聴(利用)ができるように許可をする一方で、料金を支払っていない利用者に対しては、コンテンツの視聴(利用)を抑制する必要があります。コンテンツ保護・アクセス制御技術は、この要となる技術です。マルチメディア放送におけるコンテンツ保護・アクセス制御技術は、図7で示すように、コンテンツは放送で、コンテンツを視聴(利用)するためのライセンスは通信で取得する仕組みになっていることが最大の特徴です。また、従前のデジタル放送に比べてより強度の強い暗号アルゴリズムを用いていることも特徴です。

■おわりに
 マルチメディア放送は、現在の地デジの優れた多くの特徴をそのまま活かしつつ、さらなるコンテンツの高品質化のほか、蓄積型放送の提供、通信との連携によるコンテンツの多彩化等を実現する放送サービスで、今後もさまざまな機能拡張が図られる予定です。

 本特集では、「携帯端末向けマルチメディア放送におけるメタデータ技術」「携帯端末向けマルチメディア放送におけるアクセス制御技術」、および「携帯端末向けマルチメディア放送における蓄積型放送技術」について紹介します。

■執筆者(敬省略)
・株式会社mmbi
大矢智之
石川昌行

・NTTサイバーソリューション研究所
鈴木英夫
岸上順一

・NTT研究企画部門
山田賢二
川添雄彦

※同記事はNTTグループの発行する「NTT技術ジャーナル」の転載記事である。
《RBB TODAY》

関連ニュース

特集

page top