【テクニカルレポート】高画質な3D 表示を実現したCELLレグザ 55X2……東芝レビュー | RBB TODAY
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【テクニカルレポート】高画質な3D 表示を実現したCELLレグザ 55X2……東芝レビュー

IT・デジタル テレビ
図1.CELLレグザ 55X2 ̶ モニタ部とチューナ部で構成される。
  • 図1.CELLレグザ 55X2 ̶ モニタ部とチューナ部で構成される。
  • 図2.フレームシーケンシャル方式̶ 液晶パネルから交互に時分割で出力した映像を、シャッタグラスの左右のレンズを交互に開閉することで、映像を左右の目に分離し,立体視を実現する。
  • 図3.3D 表示時のバックライト制御技術の概要̶ 3D 表示時に,左目用映像,右目用映像のそれぞれに対して,バックライトを局所的に輝度制御する。
  • 図4.3D 表示時のバックライト制御イメージ̶ 液晶の表示タイミングに同期してバックライトのオン/オフを繰り返すことにより,クロストークを効果的に抑える。
  • 図5.自己合同性型超解像と再構成型超解像の仕組み̶ これら二つの超解像による復元で,精細感を向上させている。
  • 図6.超解像の効果̶ サイド バイ サイド方式の3D 映像を高画質に復元する。
  • 図7.おまかせドンピシャ高画質3D ̶ 視聴環境と映像信号をリアルタイムに検知し,3D 映像に対して最適な画質に自動調整する。
  • 図8.2D3D 変換の処理の流れ̶ 映像の動き,構図,人の顔を解析して奥行きを推定し,視差画像生成により左,右それぞれの画像を生成する。
 東芝は、2010年10月に、高性能プロセッサ Cell Broadband Engineを搭載したフルHD(高精細)液晶テレビ(TV) CELLレグザの新製品として、従来機種の機能と性能の改善に加え、新たに“高画質な3D(3次元)表示”と“独自の2D3D 変換機能”を実現した55X2を商品化した。

 55X2での高画質3D表示は、新たに開発した高輝度で4倍速のメガLEDパネル(LED:発光ダイオード)において、3D表現に最適なバックライトコントロールを行い、かつ従来から当社製TVの特長としてきた“超解像技術”を3Dコンテンツにも応用することで実現している。また、当社独自の2D3D 変換はCell Broadband Engineの膨大な演算処理能力を活用し、ベースライン、モーション、フェイスの3 種類の変換モード機能を組み合わせ、同時に駆使することによって、自然で臨場感のある3D映像への変換を実現した。

1.まえがき

 東芝は、2009年12月に、高性能プロセッサ Cell Broadband EngineをTVとして初めて採用し、それまでのTVの概念を変える高画質と高音質、多彩な録画機能、及び充実のネットワーク機能を実現したCELLレグザ 55X1を商品化し、市場で大きな反響を得た。その後、2010年春ごろから映画、放送、パッケージなどの3Dコンテンツが市場で広がりを見せるなかで、これらの3Dコンテンツを視聴できるCELLレグザ 55X2(図1)を2010年10月に商品化した。

 55X2は、従来の55X1に対し、新たに開発したピーク輝度1,000 cd/m2で4倍速のメガLEDパネルによる高画質化や、8チャンネル同時録画可能なタイムシフトマシンTM の機能拡大など、性能の改善を行っている。更に、新たに搭載した3D 機能として、4倍速のメガLEDパネルとCell Broadband Engineの特長を生かし、かつ従来から当社製TVで採用してきた超解像技術を駆使することで、他社にはない高画質な3D 表示と独自の2D3D 変換機能を実現している。

 ここでは、新たに追加したこれらの3D 機能と技術を中心に、CELLレグザ 55X2の概要について述べる。

2.高画質3D表示機能

 現在、TVにおける3D機能の主流はシャッタグラス(シャッタ機能の付いた眼鏡)を利用して3D 映像を視聴するもので、液晶パネルのフレーム周波数の向上により、片目60fps(フレーム/s)、フルHD(高精細)解像度で立体視できるフレームシーケンシャル方式が実現可能になった。この方式は、左目用と右目用の映像を交互に時分割で出力し、シャッタグラスの左右のレンズを交互に開閉することで映像を左右の目に分離し、立体視を実現する(図2)。

 55X2もこの方式を採用するとともに、その画質向上のため様々な工夫を行っている。以下に、その高画質3D 表示機能と技術の特長について述べる。

2.1.3DメガLEDバックライト コントロールシステム

 55X2 では、ピーク輝度 1,000cd/m2、ダイナミックコントラスト比900万:1を実現する4倍速のメガLEDパネルを使用している。このパネルに最適な3DメガLEDバックライト コントロールシステムを使い、3D出力時には、フレームシーケンシャルに出力される右目用と左目用の映像それぞれに対して、バックライトを局所的に輝度制御する(ローカルディミング)。その概要を図3に示す。これにより、3D 表示において、右目用と左目用の映像のコントラストを上げ、引き締まった映像を再現して細かい凹凸が見えるようになるため、左右の目に入った像を一つの像にまとめている脳の機能の融像が促進し、リアルな3D映像を再現する。

 また、液晶の表示タイミングに同期してバックライトのオン/オフを繰り返すこと(スキャン)により、3D表示時に発生するクロストークを効果的に抑える(図4)。

 立体視におけるクロストークとは、片方の目の映像に反対側の映像が混ざって二重に見える現象である。左目用映像から右目用映像に切り替わるときにバックライトをオフにし、切替わり完了のタイミングでバックライトをオンにするようにスキャンを繰り返すことで、片方の目の映像に反対側の映像が重なりにくくし、クロストークの発生を抑えることができる。

2.2.3D超解像技術

 多くの3D放送では、左目用映像と右目用映像の水平画素数を半分にして横に並べ、1枚の映像として伝送を行うサイド バイ サイド方式が採用されている。サイド バイ サイド方式をTVで3D表示するときには、水平画素数を2倍に戻す必要がある。55X2では、このときに“自己合同性型超解像”と“再構成型超解像”(図5)を適用して拡大することで精細感を向上させた。これにより、融像が促進し、リアルな3D 映像が再現できる(図6)。
2.3.おまかせドンピシャ高画質3D

 視聴環境と映像信号を常に検知し、3D映像に対して最適な画質に自動調整する。シャッタグラス越しで変化する明るさや色味に対して、バックライト及びホワイトバランスの調整と、256階調の16ビットガンマテーブルと3Dカラーマネジメントによる色再現を行うことで、3D化による映像の明るさや色味の変化に対応し、適切な画質調整を行っている(図7)。

3.CELLレグザの2D3D 変換機能

 将来的には3Dコンテンツの更なる普及が期待されるが、現状では、放送やDVDをはじめとして2D映像が圧倒的に多い。そこで、2D 映像を自動的に3D 映像に変換する2D3D 変換機能を搭載した。Cell Broadband Engineの膨大な演算処理能力を駆使し、映像の動き、構図、人の顔などを解析し、映像のシーンに応じて最適な奥行き推定を組み合わせて用いる。これにより、従来の単純な構図当てはめによる2D3D 変換に比べ、自然で臨場感のある3D 映像への変換を実現した。

 2D3D変換の処理の流れを図8に示す。まず、入力された2D 映像を解析し、3D 映像の奥行きに相当するデータを求める奥行き推定を行う。次に、奥行きデータから3Dステレオ映像の左、右それぞれの映像を生成する視差画像生成を行う。ここでは、特に特徴的な技術である奥行き推定について述べる。

3.1.ベースライン3D

 映像の色やエッジなどの特徴量から、画面全体の大まかな構図を推定する。画面の四隅の色のヒストグラムを算出し、あらかじめ学習された特徴量とのマッチングをとることで、その映像にもっとも適した構図を選び出す(図9)。

3.2.モーション3D

 ステレオ映像における、手前の物体ほど左右視差間の動きが大きい、という基本原理を応用して奥行き推定を行う。このような原理は古くから知られていたが、画面内で動きの方向や大きさが異なる領域ごとに正確に動きを求めることが難しいうえ、演算量が膨大になるという問題があった。ここでは、リアルタイム処理が可能な演算量で正確に動き推定を行う新たなアルゴリズムを開発し、複雑な動きのある映像でも、奥行き感のある3D映像を生成することに成功した(図10)。

3.3.フェイス3D

 映像の中でも人物はもっとも注目される部位であり、これを3Dに変換できれば、より臨場感のある3D映像を作り出すことができる。本格的な人物検出に基づく2D3D変換の実用例はこれまでにないが、当社は、高精度な顔検出処理の導入によりこれを実現した。まず、入力映像に対して顔検出を行い、次に、検出された顔の位置と大きさに応じて人物形状テンプレートを当てはめ、奥行きデータを生成することで、独自の2D3D変換を実現している(図11)。

4.あとがき

 CELLレグザ 55X2の高画質3D 表示機能と独自の2D3D変換機能、及びそれらを実現した技術について述べた。ここで述べた技術の一部は、Cell Broadband Engineを搭載していない当社の3D対応TVにも既に応用を始めている。

 今後は更に、3D画質の改善や演算処理の軽減化を進めることで、3D対応TVのラインアップを充実していく予定である。


■執筆者(敬省略)
・岩井 啓助 IWAI Keisuke
ビジュアルプロダクツ社 デジタルプロダクツ第二事業部 第二設計部長。テレビのハードウェア設計・開発に従事。
Digital Products Div. 2

・菊池 義浩 KIKUCHI Yoshihiro
ビジュアルプロダクツ社 コアテクノロジーセンター エンベディッドシステム技術開発部グループ長。映像・音響処理技術の開発に従事。
Core Technology Center

・河原 邦彦 KAWAHARA Kunihiko
ビジュアルプロダクツ社 コアテクノロジーセンター AV技術開発部主務。高画質化技術の開発に従事。
Core Technology Center

※同記事は株式会社東芝の発行する「東芝レビュー」の転載記事である。
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