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【ニールセン博士のAlertbox】モバイルのコンテンツは2倍難しい

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要約:
iPhoneサイズの画面で読むと、ウェブの複雑なコンテンツに対する理解度は、デスクトップの画面によるスコアの48%だった。


 デスクトップコンピューターに比べると、携帯電話上でウェブを使うのは骨が折れるものだが、その理由はいろいろとある:

•ダウンロードに時間がかかる
•データ入力に物理的キーボードが使えない
•マウスで選択できない。つまり、コマンドを出したり、コンテクストメニューにアクセスするとき、マウスボタンが使えない(「HCIの原則を現実の課題にあてはめるには」というセミナーでさらに議論するが、伝えられるシグナルも実際に少ない。つまり、タッチスクリーンが伝えられるシグナルは「指でのタッチの有無」のみだが、マウスはボタンを押したり離したりする以外に、ホバリングの状態にもできる)
•画面が小さい(そのうえ、テキストがごく小さいことも多い)
•ウェブサイトがデスクトップからのアクセスに向けてデザインされており、モバイル向けのユーザビリティガイドラインに沿っていない
•一貫性に欠ける奇抜なアプリのUI

 University of AlbertaのR.I. Singhとその同僚による最新の研究からはさらにもう1つ理由が示されている。それは、のぞき穴を通して読んでいるとき、複雑な情報を理解するのはかなり難しいというものである。

 Singhと同僚は以下の人気ウェブサイト10個の個人情報保護方針についての穴埋めテストを実施した:eBay、Facebook、Google、Microsoft、Myspace、Orkut、Wikipedia、WindowsLive、Yahoo!、YouTube。

 私の行った簡単な分析によると、Facebookの個人情報保護方針についての特徴は:

•5,789語。すなわち、ユーザーがページを1回訪問する間に読む平均語数の35倍。
•13年生相当の読解レベル。したがって、大学に1年以上通った人しか、そのテキストを読みやすくは感じないだろう。
•ウェブで読みやすいように整えられたフォーマット。例えば、小見出しや箇条書きのリスト、キーワードの強調が有効に活用され、ウェブにふさわしいライティングのためのガイドラインに沿っている。(とはいえ、ハーバードの学生ではなく、幅広い層の消費者をオーディエンスとしてターゲットにするのなら、テキストは短くし、読解レベルは8年生(;日本の中学2年生)相当にするようにこのガイドラインも求めている)。

 (先週(;本コラムの公開は2011年2月28日)、Facebookは個人情報保護方針の修正案を掲載した。そのコンテンツは今回は11年生相当の読解レベルで書かれており、これは評価できる改善である。さらに良いことに、際限なくスクロールしなければならなかった文書が、複数のページに分割された。また、シンプルなページ内ナビゲーションシステムと明快な要約も付与され、ユーザーが情報を見渡せるようになった。悪夢のように長く、延々とつながっている文書を密度の高い情報空間にするために、構造とナビゲーションが追加され、我々が「ミニIA」と呼ぶものの一例となっている。お見事である)。

 いずれにしろ、個人情報保護方針が複雑なウェブコンテンツであるのは間違いない。

 Singhの研究では、50人のテスト参加者がデスクトップサイズの画面か、iPhoneサイズの画面上のいずれかで個人情報保護方針を読みながら、穴埋めテストを終えた。(調査では本物のiPhoneが使われたわけではない。しかし、ユーザーは読むこと、スクロールすること以外の、ナビゲーションやインタラクションは行わなかったので、理解力テストに特定の機器の影響が出るとは考えられない)。

結果:

•デスクトップ画面: 理解度のスコア39.18%
•モバイル画面: 理解度のスコア18.93%
あるテキストを容易に理解したと見なすには、テストのスコアは60%以上である必要がある。しかし、デスクトップの画面で読んでも、ユーザーの成績は目標とされる理解度の3分の2でしかなかった。

 この研究から明らかにわかる最初の結論は、大手のウェブサイトの個人情報保護方針のコンテンツはわかりにくすぎるということである。もちろん、個人情報保護方針が理解しにくいものであるというのは厳密には初めて聞く話ではない。ユーザーはこのことを知っているので、読まないのが普通になっている。

 以前行った我々の調査でわかったのは、ユーザーは「使用許諾契約書」やウェブサイト上にある類似のものを軽く扱っているということだった。そうした契約書関連のテキストに接すると、ユーザーは

•10%を読み
•17%を流し読みし
•73%をとばしている

 そのうえ、今回の結果はユーザビリティ調査中のユーザーの行動であり、彼らは自分たちがビデオで撮影されていることをわかっていた。自分の家にいたなら、彼らの読む量はもっと減るだろう。要するに、人々は自分が「承諾」しようとしているものが何であるかを読まないで、「私は承諾します」をクリックしているのである。

■モバイル機器で読むとなぜさらに難しいのか

 穴埋めテストでのユーザーの理解力のスコアは、iPhoneサイズの画面を利用すると、デスクトップサイズの48%だった。すなわち、小さな画面で読むと、複雑なコンテンツを理解するのはおよそ2倍難しくなる。

 理由はなぜか。今回の場合、人々が読んだのは情報の中の1ページだけであり、それは調査の一環として提示されたので、自分で探す必要はなかった。したがって、ナビゲーションの難易度等のインタフェース上の課題によって、難易度が増したわけではない。また、ユーザーはラボでテストを受けたので、電話を持って歩き回ることや、騒音等の環境事象による阻害から来る問題も全くない。(現実世界では、ユーザーエクスペリエンスを妨害し、悪化させるこうした事柄によって、モバイル機器の実際の使用時に人々が携帯電話用のコンテンツを理解する能力はさらに低下する)。

 モバイルのスコアがデスクトップより低い唯一の理由が画面サイズである。というのも、そのときの研究の条件における唯一の違いがそれだったからである。

 小さい画面は2つの理由から理解力を損なう:

•ユーザーが目にすることのできるものが常に少ない。したがって、ユーザーは見える範囲では説明が十分ではないものを理解しようとするとき、極めて当てにならない記憶に依存するしかない。
-コンテクストが少ない=理解度が低い

•ユーザーはテキストを単にチラッと見る代わりに、コンテンツの別の所を参照するためにスクロールを利用して、より多くそのページ内で動き回る必要がある。スクロールすることによって生じるのは、以下の3つの問題である:
-より時間がかるため、記憶が劣化する。
-当面の問題から、そのページの必要な部分を探すという二次的タスクに、注意が逸れる。
-ページ上で前にいた場所をまた見つけなければならないという新たな問題が起こる。

 今回の新たな研究は我々のモバイルウェブサイトのユーザビリティ調査の中心的結論を強力に支持するものである。つまり、ウェブサイト(およびイントラネット)は最適なユーザビリティのためにはモバイルバージョンを別途デザインする必要がある。具体的には、複雑なコンテンツは短く書き直すべきであり、あまり重要でない情報は補足的なページに任せるといいだろう。

※この記事はユーザビリティ研究者ヤコブ・ニールセン博士が運営するサイトuseit.comで連載中のコラム『Alertbox』の転載・翻訳記事です。
株式会社イードが運営する「U-site」では、博士からの正式な許可を得て同コラムの全編を日本語訳し公開しています。
《RBB TODAY》
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