右脳・左脳を統合するハイブリッドクラウド――トレンドマイクロ、エバ・チェン社長 | RBB TODAY

右脳・左脳を統合するハイブリッドクラウド――トレンドマイクロ、エバ・チェン社長

 7日、トレンドマイクロ主催による「Direction2010」が開催され、基調講演として同社代表取締役社長 兼 CEO エバ・チェン氏によるプレゼンテーションが行われた。

エンタープライズ セキュリティ
TrendMicro Directions2010
  • TrendMicro Directions2010
  • トレンドマイクロ 代表取締役社長 兼 CEO エバ・チェン氏
  • GDPに対するIT投資の比率。数字は高くないが、機能や重要度を表しているわけではない
  • 右脳と左脳の働き
  • ここで簡単なゲーム。スライドに表示された文字の色を答えるのだが、左脳で文字を読んでしまうと、スラスラとは答えられない
  • 脳の働きとコンピュータアーキテクチャの対比。左脳はシーケンシャルな処理、かつクライアントサーバモデルに、右脳は並列処理やクラウドコンピューティングに相当すると考えることができる
  • クラウド時代に考えるべきセキュリティ
  • ハイブリッドクラウド環境でのセキュリティ対策のイメージ
 トレンドマイクロ主催による「Direction 2010」が7日開催され、基調講演として同社代表取締役社長 兼 CEOのエバ・チェン氏によるプレゼンテーションが行われた。チェン氏は、コンピューティングスタイルを右脳・左脳の働きになぞらえ、それらを統合するクラウドコンピューティングへの提案と、同社のセキュリティソリューションとの関係を示した。

 冒頭チェン氏は、簡単に同社の事業規模やドメインについて紹介した。トレンドマイクロは1988年に米国で創業されたが、現在本社は東京で、社員数はグローバルで4,434名、2009年度の売上高が963億4,600万円という。事業セグメントはコンシューマー30%、エンタープライズ70%で、主にセキュリティ製品やソリューションを展開しているそうだ。

 セッションの本題ではまず、フォレスト・リサーチの調査データを示し、GDPに対するIT投資の比率について、30年前は1%だったものがPCの出現により3%程度まで上昇し、PCがインターネットにつながるようになって4%に達したと説明した。そして、今後10年では、この比率は7%まで達するだろうという予測値を示した。

 さらに人間の脳には右脳と左脳があるように、コンピューティングスタイルも機能面で2つにわけることができるという。一般に右脳は創造や芸術などの機能を司るものとして、直感的、総合的、無作為的といった活動に関係が深いとされている。対して、左脳は、言語、論理思考などを司り、論理的、部分的、規則的といった活動に関わっているとされている。チェン氏は、右脳について並列処理やクラウドコンピューティングの機能との類似性を指摘し、左脳については、従来からのシーケンシャルなコンピューティング、クライアント・サーバアーキテクチャになぞらえた。

 人間の脳が、右脳と左脳が協調して機能するように、現在のIT環境もクラウドアーキテクチャも従来のアーキテクチャも混在し、協調する必要があるという。どちらか一方で成立することはなく、実際にはプライベートクラウド+パブリッククラウド、クラウド+クライアント、仮想環境+物理環境といったものが協調するハイブリッドクラウドの世界になっているということだ。トレンドマイクロのいうハイブリッドクラウドの世界では、両者の境界は必ずしも明確ではなく、統合的に管理されることが重要となる。

 たとえば、飛行機の発明というイノベーションは、単体技術のイノベーションだけでは不十分で、空港システム、運行管理システム、航空会社というシステムとそこが提供するサービスなどのシステムイノベーションがあってこそ、航空産業というエコシステムが成立する。これと同様にIT業界にはクライアント・サーバアーキテクチャや各種のクラウドアーキテクチャを全体としてとらえる考え方を示した。

 続けてチャン氏は、このようなハイブリッドクラウドの世界では、システムリソース(ハード、ソフト)やデータは、クラウド環境やオンプレミス環境に固定されずに分散管理されるようになるため、新しいルールが必要となってくるとした。そして、このルールがセキュリティであるとし、クラウドという個別のイノベーションに対してセキュリティにもイノベーションが必要になってくるとした。

 トレンドマイクロでは、2008年に「Smart Protection Network」という構想を発表しているが、これは、クラウド環境において重視されるべきクライアントセキュリティを強化するものだそうだ。クラウド時代によって仮想デスクトップ環境が普及してくると、クライアントごとにアンチウイルスソフトをインストールするというソリューションが使えなくなってきている。また、1.5秒ごとに発生する新しい脅威もパターンファイルによる防御の限界を示しているという。Smart Protection Networkはクラウド管理されるパターンファイルや、パターンに頼らない行動分析やレピュテーション情報(データベース情報)との多重防衛を実現している。

 パブリッククラウドでのデータ保護については、IDベースの暗号化技術を提供することで、クラウドサービスプロバイダの環境やシステム構成に依存せず、自分の秘密鍵によって暗号化されたデータを保存できるようになる。

 また、従来のセキュリティは、インターネットとLANの間にファイアウォールやDMZを設けることが基本だったが、ハイブリッドクラウド環境では、このアプローチが有効でなくなってくるという。以前は外からの脅威や攻撃を防ぐことに重点を置いた「アウトサイド・イン」のアプローチだったが、これからは、内部のデータを外に出ないように保護したり、保護された状態で外に出せるようにすることを考える「インサイド・アウト」のアプローチに切り替わっていくとのことだ。同社のDeep Securityは、企業のアプリケーションやデータを「インサイド・アウト」の考え方で保護するものだそうだ。

 企業システムのクラウド化では、外に出せるもの、出せないもの、といった視点でシステムを分離して考えることもあるが、トレンドマイクロでは、クラウドとオンプレミスが共存する前提で、それらをシームレスにプロテクトできるならば、右脳と左脳の協調動作のようにITシステム全体を統合管理できるということなのだろう。対処療法的にセキュリティを考えるのではなく、ハイブリッドクラウドシステムを活かすツール、ソリューションのひとつとして考えるということで、興味深い提案のセッションだったといえるだろう。
《中尾真二》

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