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【OGC 2010】ベクターの梶並社長が語るゲームメーカーへの転身

エンタープライズ モバイルBIZ
ベクター梶並伸博社長
  • ベクター梶並伸博社長
  • ダウンロード販売が定価してきた
  • ゲームが圧倒的に伸びてきた
  • 事業全体に占める割合も増加
  • 従来型オンラインゲームの収益構造
  • 今後の狙いはブラウザ、モバイル、ワールド、ソーシャル
 オンラインソフトのダウンロードサイトとして国内ナンバーワンの地位にある「ベクター」。しかし近年は、その事業に占める割合は低下し、代わってオンラインゲームメーカーとしての顔が急成長を遂げています。OGC 2010のビジネス&トレンドトラックにて同社の梶並伸博社長が登壇し、その転身についてリアルな数字を用いながら赤裸々に語りました。

 第一声として飛び出したのは「ソフトウェアのダウンロードビジネスが厳しくなってきた」との言葉です。ベクターは元々、インターネット黎明期に多く見られたオンラインソフトを付録にした雑誌の制作を目的として1994年に設立されました。その後、インターネットのオンラインソフトダウンロードサイト「ベクター」の運営を開始。2000年頃から急成長を遂げました。しかしながら、ブロードバンド環境が整備される中で、ソフトウェアをPC上で使う機会は減り、代わってSaaSやクラウドという言葉に代表されるような、インターネット上のサービスが存在感を増していきます。その結果、ダウンロード販売や広告の売上は2006年頃から如実に右肩下がりになっていきます。

 そのような中で新規事業としてオンラインゲームが浮上してきます。なぜなら、ベクターには課金やネットワーク回線などのノウハウが既にあり、それを最も活かせるのが当時普及してきたオンラインゲームだったからです。オンラインゲームは嗜好性が強く、沢山の種類が存在し得ます。後発でも参入余地があります。

 2006年7月にオンラインゲーム事業を開始し、『MicMac Online』を投入します。しかしながらサービスを開始した途端に開発元が倒産。日本でのサービスも上手く行きません。規模の拡大を目指して翌年には2 件のM&A(GameSpace24と11UP)を行いますが、自社と買収した2社の「仲が悪くてずっとゴタゴタしていた」そうです。そこで昨年に入って全てベクターに統合し、4月から『ドラゴンクルセイド』『三国ヒーローズ』を運営開始。前者は国内初の本格ブラウザゲームで、高い評価を受け成功。従来型のオンラインゲームも新作効果で黒字転換を果たしました。今では全体の売上高に占める割合もオンラインゲーム事業が過半数を占めるようになっているそうです。

 ここで梶並氏は従来型のオンラインゲーム(クライアントサーバー型)とブラウザゲームを比較しながら紹介します。梶並氏は「クライアントサーバー型の利点はほとんど無い」と指摘。唯一、表現力が高い点を利点としましたが、OS依存がない、動作環境を選ばない、インストールの手間がない、などブラウザゲームは多くの利点があると述べました。

●ブラウザゲームは収益性が圧倒的に高い

 収益性の違いはより顕著です。梶並氏は「一般論」と断りながら、オンラインゲームの一人のユーザーあたりの収益構造を紹介します。この例では、一人の無料登録ユーザーは、きちんとクライアントをダウンロードして起動する確率は70%です。そして最初の月に離脱しない確率は40%になります。そこから毎月、残存率はどんどん下がっていき、一方で課金に至る確率は徐々に増加します。課金した場合のARPUを8000円とすると、このモデルの12カ月間の期待収益は1691.6円になります。コストとしてはライセンス元に払うロイヤリティと決済手数料があり、それぞれ25%、8%ととすると粗利は1133.4円。無料ユーザーの獲得コストを700円とすると残りは433.4円。そこからサーバー費用や人件費などを除くと……。ほぼ利益を出すのは不可能という構図です。

 これがブラウザゲームとなると、初回の残存率は95%程度になるそうです。敷居が低いので離脱していく割合も緩やかなものになります。さらにmixiアプリなどではユーザーの獲得コストはゼロに近づきます。こう考えると収益性は従来のオンラインゲームとは比較になりません。この数字だけでもブラウザゲームが今後急速に伸びて行く状況が予測できます。

●今後の戦略はBMW-S

 梶並氏は今後の戦略をBMW-S(Browser Mobile World Social)と掲げます。

 ブラウザが意識されるのはMacの普及が進んでいる(ほぼ全ての従来型オンラインゲームはWindows専用)だけではありません。爆発的に広がるネットブックはスペックが低く、InstantOnと呼ばれるLinuxベースの起動画面が用意され、ウェブや音楽やチャットなど軽い作業はWindowsを起動することなくLinuxのみで完結できるようになっているものが多いそうです。Linuxで動くオンラインゲームはまず無いですから、ユーザーの多くを逸失してしまうことになります。このようなInstantOnはDELL、ソニー、AUS、Lenovoなどかなりのメーカーが採用を始めているそうです。

 モバイルは今後が期待できるプラットフォームです。日本は世界で3G携帯が最も普及し、モバイルゲームも普及しています。しかし世界の大多数の地域ではそうではありません。日本から世界へのタイムマシン経営が可能な分野と言えそうです。ここでもブラウザゲームであれば携帯キャリアや端末メーカーの壁を超えることができます。

 ソーシャルの重要性は言うまでもありません。ベクターでもmixiアプリモバイルで提供している『恋する私の王子様』は150万人のユーザーを獲得しています。これはほとんどプロモーションされていません。招待や友達のアクティビティフィードといったバイラル効果のみでここまでの数字を叩き出しています。オンラインゲームでは考えられない数字です。

 梶並氏はモバイルやソーシャル分野では、これまでのゲーム業界のプレイヤーでなかった人たちが成功していると指摘。「新しいマーケットで新しい人たちがチャンスを掴んでいます。ベクターもその人になりたいと考えています」(インサイド Mr.Cube)
《RBB TODAY》
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