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ネット利用にも親の格差か——ペアレンタルコントロールが重要

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小渕優子内閣府特命担当大臣
  • 小渕優子内閣府特命担当大臣
  • 群馬大学特任教授で警察庁少年インターネット利用問題研究会座長やNPO青少年メディア研究協会理事長も務める下田博次氏
  • ペアレンタルコントロールのプログラム
  • 子どものインターネットケータイの問題
  • お茶の水女子大学教授の坂元章氏
  • 研究会の目的など
  • 研究会構成員
  • ネットスター常務取締役の中山明氏
 子どもたちのインターネット利用について考える研究会と社団法人全国高等学校PTA連合会は30日、ホテルニューオータニにて「子どもたちのインターネット利用について考えるシンポジウム」を開催した。

 開催に先立ち、来賓の小渕優子内閣府特命担当大臣が、「子どもたちを健やかに育てていくことが大人の重大な責務であり、子どもたちがインターネットを安全に安心して利用できる環境を整える必要があると考えています」と挨拶した。

 シンポジウムでは、群馬大学特任教授で警察庁少年インターネット利用問題研究会座長やNPO青少年メディア研究協会理事長も務める下田博次氏による基調講演「ペアレンタルコントロールの重要性」のほか、子どもたちのインターネット利用について考える研究会の座長を務めるお茶の水女子大学教授の坂元章氏による「研究会活動総括と双方向利用型サイトの利用リスク評価モデル」、ネットスター常務取締役の中山明氏による「インターネット利用リスク教育教材の概要」の報告が行われた。また休憩をはさみ、民主党の玄葉光一郎衆議院議員、自由民主党の葉梨康弘衆議院議員、全国高等学校PTA連合会会長の高橋正夫氏、品川女子学院校長の漆紫穂子氏、ヤフーCCO兼法務本部長の別所直哉氏、マイクロソフト最高技術責任者補佐の楠正憲氏が加わり、パネルディスカッションが行われた。

 基調講演「ペアレンタルコントロールの重要性」では、携帯電話によるインターネット利用を例に、下田氏が“ペアレンタルコントロール”という概念の重要性を説明。テレビ以上に子どもへの影響力が大きく危険性の高いパーソナルメディアである携帯電話を与える以上は、保護者や学校がメディア特性を理解し、注意・約束(ルール作り)をし、ネット利用を見守り、必要に応じて指導を行うことが必要不可欠であると解いた。

 携帯インターネットの問題点からは「誹謗中傷により子どもらが傷つけ合うネットのいじめ」のほか「有害な情報にダイレクトにアクセスでき、援助交際などの関係性を簡単にとることができる構造」を紹介。氏が1年にわたり番組制作に協力したFM群馬「Teens Express」からは、15歳、16歳の少女に対する援助交際に関する衝撃的なインタビューが紹介された。いずれも「援助交際の経験あり」と回答したうえで、その理由を「お金がなかったから」「携帯代が払えなかったから」などと説明し、アクセスの手軽さと同様に、気軽に援助交際へと向かう一部の少女たちの実態が明かされた。

 下田氏は、現状、問題の責任は業界にあるものの、家庭と学校のコラボレーションにより、はじめてペアレンタルコントロールの効果が発揮できると説明する。フィルタリングなどのシステムや社会の新しい制度(法規制)以上に、子育てや教育に最終的に責任をもつ保護者や教員の関わりが必要であるという。さらに、インターネット利用においても、親の能力や意識、さらには躾の格差が問題となっている実情を指摘した。意識の高い保護者のペアレンタルコントロール能力を高めるとともに、意識の低い保護者をいかに導き、社会全体の意識を向上していくことが今後の大きな課題と言えそうだ。

 お茶の水女子大学教授の坂元章氏による「研究会活動総括と双方向利用型サイトの利用リスク評価モデル」では、「子どもたちのインターネット利用をより豊かで安心なものにするために、関連課題の調査・研究を行う」「研究成果を広く世の中に公開することで社会に貢献する」といった、同研究会の目的を紹介したうえで、2008年5月から10月までの第一期の中間報告が行われた。

 第一期では「双方向利用型サイトの運営実態と課題」をテーマに、サイト運営者の工夫や知見の実例の収集、安全なサイト運営に必要な要素を抽出し安全度を軸とした整理、広告出稿者などのための利用リスク評価モデルの提案などの取り組みを行ったという。評価モデルでは、利便性を低下させるような不要な制約を行わないために、発達や習熟水準を考慮し、段階性のある設定を行ったという。また評価には、保護者を含む使用者の視点を重視したと説明した。

 同会では、全国高等学校PTA連合会との共同事業により、中高生のインターネット利用のリスクと対処法を記した保護者向けの教材を開発し、30日開設の研究会Webサイトにて無償提供を開始した。

 ネットスター常務取締役の中山明氏は、すでに多くの教材やカリキュラムが存在するなかで、抜け落ちていた高校生の保護者をメインターゲットにポイントの絞込みを重視して作成したという同教材の概要を説明。フラッシュコンテンツでダウンロード利用可能な約50ページの教材は、「中高生のネット利用実態—男女別の典型的なトラブルなど」「利用リスクのポイント—特に双方向型サイトのもつ意味」「保護者が最低限知ること—インターネットの特徴とフィルタリングの仕組み」「保護者に求まられること—親子がインターネット利用について対話するためのヒント」などから成る。

 研究会とネットスターおよびヤフーは、同教材を無償開放するほか、普及促進を目的に全国高等学校PTA連合会と共催して全国9か所で保護者向けのモデル講演を実施する。なお、同教材の制作にはネットスター、ヤフー、全国高等学校PTA連合会のほか、マイクロソフト、ミクシィ、NTTレゾナントが協力している。

 子どもたちには、利便性を失うことなく安全にインターネットが利用できる環境、すなわち同会が目的として掲げる「インターネット利用をより豊かで安心なものにする」ことが必要だ。そのためには、現実的な法整備やコンテンツ提供側である業界の協力が不可欠だが、システムを過信することなく、まずは保護者や教員といった身近な大人が子どもたちを愛情もって見守ることが必要だ。そのためにも、上記の教材などを利用して、大人たちが携帯電話やインターネットの特性を十分に理解したうえで、子どもに関わることが求められる。今やインターネット利用も躾の一部ということができそうだ。

◆子どもたちのインターネット利用について考える研究会とは 

 インターネットの適切利用につながる調査・検討を幅広く行い、保護者やサイト運営者などに情報を提供するために2008年4月に発足した研究会。座長はお茶の水女子大学教授の坂元章氏、委員は群馬大学特任教授の下田博次氏、全国高等学校PTA連合会会長の高橋正夫氏、国立精神・神経センター自殺予防総合対策センター長の竹島正氏、品川女子学院校長の漆紫穂子氏、浜松大学講師の七海陽氏。事務局はヤフーおよびネットスター。
《編集部》
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