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【IPv6 Summit 2006(Vol.2)】 IPv4アドレスの枯渇はあと6年? 事業者に早めの対応を呼びかけ

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 「IPv6 Summit 2006」では、今回、「IPv4アドレス枯渇を乗り越えるために」と題し、数年後にも訪れるといわれるIPv4アドレス枯渇についてのパネル討議が行われた。社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター理事の前村昌紀氏が司会を務め、NTTコミュニケーションズの友近剛史氏、KDDIの阿部健二氏、インターネットイニシアティブの松崎吉伸氏、ソフトバンクBBの印南鉄也氏がパネリストとして参加した。

 前村氏は「2008年頃には、IPv4はなくなるとの予測もあったが、まだ枯渇していない、との声がある」としたうえで、現状について「クラスA(の区分)でみると、ブロック単位で消費は増加傾向にあり、手付かずで残っている部分は計算上6年後にはなくなる」と指摘、「わりと現実感のある数値だと思うが、数字と体感にギャップがあることが大きな問題といえるのでは」と述べた。

 実際にIPv4がなくなってしまうと、それ以降のインターネットユーザーはIPv6しか利用できなくなり、情報やサービスが充実している現行のIPv4シングルスタックのインターネットを利用することができない。となると、これらの新たなインターネットユーザーは、利便性が享受できなくなる。

 あたらなISP側も同様に、IPv6インターネットしか利用できないため、多くのユーザーを抱えるIPv4シングルスタックのユーザに対しては、サービス提供ができなくなり、事実上、事業を展開することができなくなる。そこで、前村氏は「ネットワーク事業者は、IPv4シングルスタックとさほど変わらない価格で、IPv6とのデュアルスタックで提供する必要がある」と提言する。IPv4シングルスタックのサーバをデュアルスタック化する、あるいは、IPv4とIPv6との間のトランスレーターを介して接続するといった方法があるという。

 この後、各社が枯渇への対策を語った。NTTコミュニケーションズの友近氏は「この問題は業界全体で乗り切らなければならない。代替手段として、ISPがIPv4プライベートアドレスを配布し、多段NATを構成する方法があるが、普通のクライアント/サーバー型アプリケーションであれば良いが、P2P的なアプリケーションでは限界があり、IPv6の適用しかない。ISP側はIPv6設備を提供する責務がある」とした。

 KDDIの阿部氏は、課題としては、コストの発生、人材育成が必要であること、運用経験の蓄積の点を挙げ、今後は「トランスレーターの開発では、現状の小規模なネットワークに対応したものでなく、より性能を高くすべき。また、ユーザーが積極利用を望むような、アプリケーション、サービスの開発も必要」と話す。さらに、IPv6普及には、行政側からの働きかけや、企業などが導入する際の税制、融資など、一定の支援策に期待をかけている。

 インターネットイニシアティブの松崎氏は、既存のIPv4網を、IPv6/IPv4デュアルスタック網にするにあたって、プロトコル、メモリ制限などルーターに課題があることがあり、そのような場合にはトンネリングを採るが、ネットワークが複雑化し、トラブルシューティングなどに影響が出ることなどを指摘、「(IPv6)インターネットへのアクセス回線として使える『健康な』回線を整備することをキャリアに期待したい」と語る。

 ソフトバンクBBの印南氏によれば、同社が展開するYahoo!BBでは、IPv6への取り組みは最近からだが、数年前から、増設、置き換え用に調達する機器は、IPv6に対応できるものを優先して選定しており、基本的にすべてデュアルスタックにしていく方針だという。同社はサービス普及のため、街頭でモデムを配布したわけだが、「あのモデムもNAT対応なので、今後はIPv6スタックを搭載していかなければ」としている。

 前村氏は、IPv6化には、技術面でさまざまな課題があるわけだが、ビジネス上での問題も少なくない点を提起した。これについて、NTTコミュニケーションズの友近氏は「長期的には、IPv6しかなくなるのだが、短期的には、コストがかかるマイナスもある。しかし、(IPv4が枯渇するかもしれない)5年後に急に取り組みを始めては、かえってコストが高くなる。早くから着手した方が良い。また、IPv6に向けた新しいアプリケーションが出て、これまでにないビジネスチャンスが生まれる」とした。

 各社とも、事業の最前線では、IPv4枯渇の「Xデイ」を見据え、危機感ももち、対策への準備を考えているが、コストや利益などの点でさまざまな制約があり、IPv6対応に向けフル回転の態勢とは必ずしも言い切れない。国内では、個人情報保護法導入の際でもそうだったが、直前の時期にならないと、企業はなかなか動かない傾向もある。いずれにしても、インターネット大国となったいま、エンドユーザーにしわ寄せが行くようなことは回避されるべきだろう。
《RBB TODAY》
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